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第18話

最後の模擬戦、前編


陵司は足首まであるロングコートの襟をただしてその場で軽いジャンプを繰り返し、雹はその長身によく似合ったスーツ姿でネクタイを緩め動きやすい姿勢を作り並んでいる。


その二人の目の前には少しくたびれた中年にしか見えない勇司が、煙草入れ片手にごくごく自然体で立っていた。


「さてと、二人まとめてやろうか。最後だ、命までとは言わないがKO狙いで少しは二人の底を見せてもらうぞ。」


使い込まれた銀色に鈍く輝く煙草入れから白い煙草を取り出した勇司を見て、陵司と雹はゆっくりと構えを取っていた。


広い訓練室に響く勇司の親指と中指で鳴らされるスナップ音と共に、模擬戦は開始される。

スナップにより親指から吹き上がる炎で白い煙草に火をつけた勇司は、思い切り煙を吸い込み一気に吐き出していく。


【白煙】


吐き出された白い煙を見て、陵司と雹は別々に動き出す。白い煙は二手に別れ顔面へと伸びてくるが、二人は下がりながら余裕を持って煙を避けていた。


落ち着いた二人の動きにに少し喜びを感じながらも、いつの間にか床から出現した灰皿に煙草を捨て、慣れた手付きで新たな煙草に火をつける。


【銀煙・ダーツ】


吐き出された銀色の煙が無数のダーツ状へ変わり陵司と雹に飛んでいくが、二人も対応するべく特技を使っていた。


【持駒・銀】


【付喪神・ハンカチ】


握られた駒を陵司が床に落とすとその場に鎧を身に纏った少し恰幅のいい木人形が現れ、その身でダーツを受け止めると全く効いた素振りさえ見せない。

ポケットから取り出したハンカチを雹は宙に舞わせると、その特技によって意思を持ち空中に留まる。飛んでくるダーツに対しハンカチは宙を自在に動いて受け止め続け、飛んでくるダーツが止むと役目を終えたハンカチはボロボロになりながらハラハラと床に落ちていっていた。


「銀の調子は悪くないってやつだな。雹、ハンカチ一枚でヘコむなよ。」


「うんっ、まだ予備の予備もあるから大丈夫っ。それより銀さん久しぶりだよー。」


「確かに駒から人型にするのは最近なかったか。たまには出番を与えてやらねえとな。」


「銀さんは丈夫だもんねー。」


二人の呑気とも言える会話を聞きながら、勇司は煙草入れを開きつつも悩んでいた。


(さてと、結局やりにくいったらありゃしないか。結局二人相手じゃ親心が滲み出すけど、このままだと呆気なく負けるな・・・、俺。もう少しだけ気合い入れるか。)


違う色の煙草を三本取り出す勇司と、新たな動きを大して見せない陵司と雹の模擬戦はまだ始まったばかりであった。



とりあえずもう少し活躍して貰おうと思っていた前作の主人公との多分最後の絡みです。

このまま中編、後編と続きます。

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