第16話
決断
薄っすら煙の漂うフロアで雹はあっさり目的の物を見つけていた。
既にその目的の物はズラリと陵司の後ろに並び、様々なポーズを決めながら出番を待ち構えるように綺麗に整列している。
【付喪神・マネキン】
表情のない着飾ったマネキンは雹の特技によって一斉に動き出す。少したどたどしく走り出した五体のマネキンは、無表情のまま命じられたままに容疑者である夫婦へ向かっていた。
再び飛んでくる金串が一体のマネキンの顔面、そして腹部へと突き刺ささるが、痛みを感じない五体のマネキンは足を止める事は無い。
串打ちが無駄だと分かり、すぐさま床を触って火をおこそうとする夫の手首が、体温のないマネキンの手に掴まれていた。
行動をマネキンによって阻害された夫に次のマネキンが飛びかかり、ちょうどいい高さにあった顔面へ、着ていたフレアスカートを舞わせながら膝を真っ直ぐに打ち込む。
勢いの乗ったマネキンの硬質な膝は意識を刈り取るのに一発で充分であった。
もう一方では腕を切断されたマネキンが夫人を捕え床に押さえ込むと、駆けつける他のマネキンによって夫婦共々あっさり確保に成功する。
陵司と雹によって確保され、警察に引き渡されていく夫婦を見ながら、勇司は思わず呟く。
「こりゃ最初から俺は必要なかったなと・・・。まあ、悪いことでは無いか。」
すると勇司の斜め後ろでこちらも何をするでもなく立っていた明香も口を開く。
「確かに班長の必要性は全く感じないですね。ではこれからはやはりあちらへ?」
「うーん、そうだな。前から長い事誘われてるし、なんせあちらの方が悲しいかな向いているという現実だよ。」
「確かにそうですねとしか言いようもありませんね。ではこちらの事はお任せを。」
「息子達の事は任せたよ、明香ちゃん。」
「・・・はい。」
少しだけ俯き加減に返事する明香を横目で見つつ、勇司はフロアの後片付けを始めている二人を複雑な思いで眺める。
(手が掛からないってのも少々寂しいもんだな。陵司も雹も教える事なんて最初からないってやつじゃねえかよ。)
陵司と雹によってあっさりと容疑者を確保し、この何も手出しをしなかった事件をもって勇司は特局から身を引く決意を固めたのであった。
いろいろとありまして更新が遅れましたがなんとか更新です。
とりあえず次話で前回の主人公には退場していただく予定です。次は素早く更新できたらいいなー。




