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第12話

盤面の棋士


ポケットに入っていた駒を外に出し、手を離すと床に落としながら陵司は特技を使う。


【持駒・王】


床に落ちる直前に駒は形を変えて年季の入った材木のような物で出来ている、顔形は曖昧なものの明らかに陵司に似ている一体の木人形が出現していた。

サイズまで陵司と同程度の木人形はその場に立ち、木製の瞳で硬い表情のまま勇司を見つめる。その後ろから木人形の肩に陵司は手を置き、横に並び立っていた。


「さてっ、このままじゃコイツを壊されたらそれで終わりなんでな。もう一工夫ってやつだ。」


【盤面の棋士】


出現させた王将の木人形と陵司の身体が重なっていき、木人形の存在が陵司へ吸い込まれていく。

そして訓練室は再び勇司と陵司の二人きりの空間に戻ると、何も変化はなかったかのようにも見える。しかし長年親子関係にある勇司の目には、少しの変化が見えていた。


(ほうほう、王と一体化したと。確かコイツの特技は王将を撃破した時点で終わりだから弱点を一つに纏めたって訳か。・・・そして少しだけ身長伸びてるよな?少しだけど。)


煙草入れから勇司は白い煙草を取り出し咥え、少しだけ身長の伸びた陵司を怪訝そうに見つめていると、少し伸びた当の本人は不機嫌そうに眉をひそめていた。


「何だよ親父?何か文句のありそうなその表情は。」


「いやっ、なんだな。その、あのー、少し大きくなって良かったなと・・・。」


「・・・。」


無言で睨む陵司に対し何か言葉を絞り出そうとする勇司に、言葉ではなく行動で陵司は答えを出す。


王将と同化した事により陵司の身体能力は跳ね上がり身内への怒りによって駆け出すが、その心情の内では同化した王将によって沸き上がった怒りが押さえ込まれる。


「仕方ねえな、分かりましたよ。落ち着けばいいんだろっ。」


ふと冷静になった陵司は足に急ブレーキを掛け、トントンと軽いリズムで後ろに下がり、大きく息を吐く。そして迎撃のため既に煙草に火をつけている勇司をジッと見つめていた。


(訓練だしな、熱くなっちゃダメか。・・・だけど熱くならずに思い切り攻めるなら問題ないだろ?)


己の内面に問いかけると肯定の意思が感じられ、陵司は手の中に新たな駒を出現させる。


顔目掛けて飛んでくる白い煙をあっさりと避け、陵司は駒を片手にどう攻めるか考えながらも、既に身体は自然と動き出しているのであった。




遅めの更新です。

主人公の特技の設定画少々厄介なものになっております。


予定の最終話の為だけに考えた特技なので、気長にお付き合いください。

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