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第10話

出番無し


特局では通常、一班は4名から6名程度の人員で構成され要請のあった事件の解決にあたる。人員の増減がある中で様々な要因から勇司と明香二人になった26班は、それでも他の班に劣る事なく要請に対処してきていた。それは二人の相性はもちろん、二人の持つ特技の戦闘能力によって成り立たせていたものであった。


長い黒髪をサラリと揺らしながら前に出る明香は、ローブの中から怪し気な色の液体の入ったガラスの試験管を取り出す。液体の入ったガラスの試験管を揺らしニヤリと笑うその顔は魔女の風情に溢れているが、人質が取られている事もあり大人しくローブの中に試験管を戻していく。

少しだけゴソゴソとローブの中から次の道具を探すと、明香の手には太く削り出された樫の木が握られていた。


「これでいいかな?試薬が使えないのは残念だけど。」


樫の棒だけを引っ提げて歩く黒いローブの女性が近付いてくる事に、子供を人質を取り金属バットを振り回している男は気付き叫ぶ。


「そこの黒い女っ、止まれっ!」


その言葉にも明香の歩みは止まらず、軽い笑みを浮かべたまま興奮状態の男とは目を合わさず人質となり恐怖に固まっている少年だけを見つめていた。


「男の子でしょ、少しだけ我慢しなさい。目をつぶっていればすぐ終わるから。」


少し妙なほど通り頭の中に直接話し掛けてくるような明香の声に、少年は素直に従い目を閉じる。その様子を見ながらも全く歩みを止めない明香に向かい、男は特技を乗せてバットを振りかぶっていた。


【フルスイング】


空気を切り裂き振られる金属バットの初撃は、当てる気のない牽制で明香の眼前を通り過ぎていく。それでも表情もペースを変える事なく足を前に出す明香に向かい、金属バットが次撃を繰り出すと持っていた樫の木を差し出していた。


軽く振られたように見える金属バットは樫の木を簡単に粉砕するが、それでも明香に焦りの表情は見られない。

三分の一程度の長さになった樫の木をその場に捨て、慌てたように三度金属バットを振ろうとする男に手慣れた様子で攻撃を仕掛けていた。


空いた両手で男の顔面を掴み、額で男の顔面に頭突きを入れる。痛みに悶える隙に男から人質の男の子を引き離すと吹き出す鼻血を気にもせず、そのまま男の髪を掴み強引に引き下げ膝を突き上げると、男の顔は天を向き意識を失い倒れていくのであった。


警察によって確保される容疑者の中原と、容疑者を血塗れにしたことにより男の子は確実に明香から距離を取り、走って逃げていく。その後ろ姿を見ながら仕方ないと手についた鼻血をローブで拭い、明香は大人しく待機していた陵司の元に戻ってくる。


「男の子なのに情けないですね、怪我はなかったようなのでよしとしましょう。では戻りますよ陵司君。」


「・・・了解。それにしたって明香姉、ワイルドな捕まえ方だな。」


「そうですか?確かに子供には少し刺激が強かったようですね。」


二人は乗ってきたワンボックスに戻ると連絡を入れ、特局への道を戻っていくのであった。




その15分後、現場であった道路に二人乗りの原付きバイクが到着し事後処理の警察の姿を見ている。


「勇司オジサン、何か後片付け中だね。」


「そうみたいだな。さーて、どうする?」


「手伝っていこうよっ。僕は工事とかのお手伝い得意だよ。」


「ここまで来たしそうするか。俺はそこまで得意じゃないけどな。」


遅れて現場に到着した勇司と雹は、この後やってくる工事業者と共に特技を使い破壊されたアスファルトの修復工事に汗をかく。


こうして陵司と雹の入局してから初の事件は、二人は何もする事なく終えるのであった。





とりあえずの更新です。

イマイチ容疑者の特技がいいの思いつかないので、思いつき次第次話を更新予定です。


次こそ主人公に活躍させよう。

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