47話 豪華なホテル
「くそが!遠藤、もう一度だ」
「佐藤、ポーカー弱いな。というか運が悪い?」
「偶然だ」
「……さっき、僕ともやって負けてよね」
「がーーーー」
佐藤が頭を抑えて発狂している。
任務を一緒に向かうが特にそういったところは見えないが。ただ単にこういう勝負ごとが苦手なのかもしれん。
俺はこういう勝負事は得意だと自負している。勇者は確かに実力も大事だが、俺はあの職業を体験したうえでいうが運が一番大事だと思うね。
俺は思い出す。襲撃してくる魔物の群れ、罠の数々、資金の調達。それも運がなければ乗り越えられなかっただろう。
やばい、思い出してきたら涙が……。
「そういえば、この前に宝くじでも爆死してたわね」
「かっ、会長」
あっ、会長に突っ込まれてうろたえておる。
ともかく俺たちは今、バスの中で合宿所に向っていた。そして外の景色を眺めていると、海が見えてくる。
「もうそろそろか」
「あーー、海が見えてきましたよ」
俺は隣でうきうきしている加藤をよそにこれから起こる合宿に思いを寄せた。
「すごいっ!」
「会長、後でホテルの宿泊費の請求しないよな?」
「ええ、全額こちらで出すわ」
「それならいいが……」
目的地である伊豆のホテルに着いたのだが、俺らが泊まるところがとんでもなかった。
旅館というよりもホテルよりで大きく明らかにお金持ちが来ますよオーラがすごい出ている。さらにここから屋上にプールがあるのも見えた。
「会長、荷物はどうしますか?」
「係りの人に運ばせるわ。茜と龍太はここ初めてだから案内しなくちゃいけないし」
「了解です」
風のように現れた係りの人が俺たちの荷物を素早く運んでいく。
……まさしく、プロだな。
「茜と龍太以外は先に会議室に行ってて頂戴。場所は覚えてるわよね?今回の男子の部屋は201、女子は301よ」
「はい、大丈夫です」
「問題ない」
「資料のほう先に準備しておきますね」
「ありがとう、凛。じゃあ、ふたりとも重要な施設を回るからこっちについてきて」
「はい」
「おう」
俺と加藤は会長の後に続き、ホテルの中に足を踏み入れた。
「充実してるなぁ。予想してたけどトレーニング施設まであるとは。ここって一般の人も利用可能ですか」
「もちろんよ」
「ちなみにここっていくらくらいなんですか?」
「聞きたい?」
「……いえ、やっぱりいいです」
間違いなく、一般人と呼ばれる方たちは来ないだろ、絶対。
それと一通り案内してもらったが、入り口で見えたプール、さらにカジノにゲーセンから大きな庭、体育館のようなところまであった。定番の温泉も露天風呂まで
しかし、外から見てかなり広いと思ったが、ここまで広いとは。さすがに驚きだね。
次に会長は俺たちが泊まる部屋に案内をしてくれた。
「ここが男子が泊まる部屋よ。女子はこの上の階ね」
「いい部屋ですね」
部屋の中を見ると洋風な四人部屋で、もちろん輝いている。うわー、あの壺とか高そう、絵も。グランシウスで勇者をやっているとお金持ちの屋敷も意外といったりするので、そういった目利きも自然と身に着いた。
さらに窓から外を見ると綺麗な海と砂浜が見える。景色も最高だ。
「上の女子の部屋も同じですか?」
「そうよ。四人部屋でね。部屋のなかも同じよ」
女子の部屋は上の階か。なんか身体強化を駆使すれば覗けそうだな。温泉も同じく。
俺はここでグランシウスでレオンと共に覗きを挑戦したことを思い出し、寒気を感じた。
いかん、トラウマが……。覗きはやっぱりだめだな。
「龍太、顔色が悪いけど大丈夫?」
「……大丈夫ですよ。それより次はどこに?」
「会議室……みたいな場所よ。他の皆もそこで待ってるわ」
「ということは前に言っていた祭りのルールとかか」
「ええ。それにいい機会だしこの辺で龍太の異世界のこととか聞きたいし。教団も関係しているしね」
「……そうだな」
いまいち目的が見えないし、向こうのトップも思いつかないんだよな。俺の勘だが絶対顔見知りだと思うんだが……。
そしてそこに所属している能力者の強さ。忍びの村で会った三人は幹部クラスだと思うんだが、あれがあの組織の下っ端という線も考えられるのでこの合宿で俺たちのさらなるレベルアップが求められるだろう。俺も早く勇者だったころの力を戻さなくては。
聖剣の奥の手もデメリットなしで使いたいしな。寿命がなくなるとか笑えないし。
俺は忍びの村でのケルベロスとの戦いを思い出す。あれも本来、奥の手を使わなくても対処できたはずだ。
俺はこの合宿での目標を定めるといつの間にか目的地に着いていた。
「着いたわ」
「すごい!」
「なんかどこかのお偉いさんが集まりそうなところだな」
「プロジェクターも使用可能よ。さっ、席について」
俺と加藤は会長の指示通り、空いている席に座る。他の皆ももう席についていた。
「じゃあ、早速フェスティバルについて……」
会長がプロジェクターを起動させ、映像が会長の後ろに出現すし、説明を始める。
こうして俺たちの桜川支部の合宿がスタートした。




