異世界side3
「はやく。皆こっちへ!」
「すまない」
「くっ、もうこんなところまで魔物が」
異世界グランシウス。その世界にあるガルシア共和国にあるピコ村は魔物の襲撃にあっていた。
この村で魔物の襲撃は初めてではないが勇者が魔王討伐後、暫く平和に過ごしていたことから、この襲撃に対して反応が遅れてしまったのだ。
村にはお馴染みの冒険者……魔物を倒しお金を得る職業の人たちもいて大体の襲撃に対応できるのだが、今回は魔物の数が違う。通常の二倍だった。さらに魔物たちの中には中級の魔物も何匹か見られる。
そしてそれに立ち向かう二人の男の姿があった。一人は目立つ黄色いモヒカンの大男、対してもう一人はスリムな体系をしている小柄の男。
「おい、町の騎士たちがこちらに援軍がこちらに向かっている。もう少し耐えるんだ」
「勢いが収まらないぞ!」
「中級の冒険者は全員前線か?」
「数人、重症で後ろに下がってる。このままじゃ」
「くそが。中級の魔物を倒せるのはあいつらしかいなんだぞ」
「仕方ねぇだろが、俺たちでやるんだよ。幸い、死者はまだいない」
「はっ、そうか……よ」
男の背中に背負った大きな剣が魔物を切り裂く。
この世界では魔物は上級、中級、初級と種類が別れており、冒険者も同じくこの三つに分かれている。
彼らは中級ではないが腐っても冒険者、簡単にはやられない。
「おらーー」
「おい、爆発するぞ」
「その前に斬るぜ!」
男たちに一匹の魔物が近づく。デビルアップル。見た目は大きなリンゴに半月ような口があるだけの魔物。目もないが気配に敏感だ。さらにその大きな特徴としてデビルアップルは体内にある魔力を使い爆発することとが出来る。
それ故にデビルアップルは素早く発見して、倒さなくてはならない。能力は恐ろしいが耐久がないのでランクは初級だ。
「ちっ、もういないよな」
「あのリンゴはな。ただ、ゴブリンが多い」
「それなら俺らの領分だろうが」
「そうだったな」
「しかし、ゴブリンか……」
「思い出すな、あいつを」
「ああ」
この村に聖剣が連れてきた一人の少年。最初は彼らよりちっぽけな存在だった彼だが、数々の偉業を成し遂げ、最後には魔王を討伐して世界を救った。
あの背中を彼らは忘れることはなかった。
「直ぐにひひ~って泣いてたのにな」
「それでもあいつは逃げたことはなかったな」
「ああ」
ある時、この村に中級のキングゴブリンがやってきたことがあった。その時は聖剣はおらず初級の数名の冒険者、そして彼らと少年しかいなかった。誰もがキングゴブリンにびびり前に出ることが出来ない中、一番早く前に踏み出したのが少年だった。
「懐かしいな」
「いつかまた会いたいな。あいつに……」
「なら、今は目の前にいるあいつらだな」
「いっき片づけるぞ!」
魔王を倒し、世界を救った少年の影響を受けた人たちは彼らだけではない。少年と関わった人たちはいい影響を受けていた。
そして……。
「エンシェントフレア!!」
群れるゴブリンたちを囲むように大きな炎が出現して、ゴブリンたちはまとめて焼かれ黒い粒子となり消えていく。
そこに白い馬とともに一人の男がやってくる。それを見て男二人は感心した声を出した。
「おー、さすが!」
「来たか、イケメン!」
「……相変わらずですね、あなたたちは」
ガルシア共和国、第一王子であるロウ・ガルシアは変わらない友人たちの姿を見て溜息を吐く。この男もまた少年の影響を受けた人物の一人だった。
「しかし、王子直々に来るとはな。これで士気はうなぎ登りだ」
「僕の部隊も間もなく到着します。しかし魔物数も報告以上のようですし、もっとペースを上げますよ」
「はっ、上等」
「余裕だぜ!」
「ついてきなさい!」
冒険者も王子の登場で士気があがり、王子の部隊も合流。そこからわずか一時間で魔物の群れは殲滅された。
しかし、この世界の魔物の侵略は止まることはなかった。
『魔王が倒せば平和、はてはて誰が言ったセリフだったか』
「向こうは大変だ。おいちゃん怖い怖い」
『おぬし、少しは真面目に聞かないか』
「聞いてますよ」
とある森の山小屋。そこには一冊の本を読むおじさんの姿があった。近くの床に落ちている風変りな通信機から女性の声が発せられていた。
「なにやら騒がしいようだが」
「ああ。あの仕掛けが発動したみたいだよ」
『ほう、つまり……』
「彼が来た」
『くくく、そうか』
はぁ、怖い怖い。
おじさんは心中でそんな言葉を覚える。
今のところうまく計画は動いている。少しメランのやつが暴走したが……。
最初はやれやれと思っていたが理由を聞いた瞬間おいちゃんは納得した。
「順調に力を取り戻してるようだねぇ~」
『そうでなくては困る』
「とりあえず、おいちゃんはこれから様子見かな」
『教団の連中の動向の確認』
「はいはい」
これは暫くまた気が抜けないなぁ~。
彼は静かに溜息を吐くと通信を切ろうとする。しかし……。
『こちらにはハーゲン○ダッツを送ってくれ』
「……はいよ」
彼は見ていたエロ本を閉じて、財布の中を確認しながら通信を切る。そして大事なエロ本を数冊懐にしまう。
「さてさて行きますか」
彼が小屋から出ると風が舞い上がり小屋を包み込む。するとそこに小屋は跡形もなく消えていた。
彼の名前はクローロン。風の魔法使いである。
ここで三章はお終い。来週は休ませてもらってでその次の週から新しい章が始まります。
評価やブックマーク、感想も募集中です。




