43話 唐突に
「二人とも大丈夫か!?」
「はい、なんとか」
「これは……」
俺たちの前に突然現れた黒い風。それは俺たちを包みこんだ。
そして……
「ここって……」
「反転世界に転位されたのか。だが……」
あの魔力が関係しているのは事実。ではやはり魔法で俺たちは魔法で転位されたのは間違いなさそうだ。
しかも、あの魔力。俺が感じた限りでは複数の属性が混じり合っているように感じた。もしかしたら……。
俺は先ほどの罠について考える。しかしその間にも事態は悪い方へと進んで行った。
黒い風は徐々に一つの形を成していく。
「鳥……でしょうか」
「おい、遠藤。あれは魔物なのか?」
「……」
俺はその現れた黒い鳥をじっと睨めつける。
黒い鳥は大きく十メートルはある。さらに目や口など見当たらず、全身が黒く染まっていた。
やはり、見覚えがない。いや、俺が知らないだけなのか。
俺はグランシウスでの記憶を掘り返すが、目の前の鳥には覚えがなかった。魔力を確かに感じるとこから確かに魔物だと思う。さらにその魔力もとてつもなく大きく感じうことからAクラスは間違いないだろう。
しかし、加藤の予言がこうもあたるとは……超能力とは本当に謎だな。まさしく、ものによっては魔法よりもすごいというところだろうか。
「すまんが見覚えがない。だがAクラスの可能性がある。一度撤退して戦力を整えるぞ」
「はい」
「敵を錯乱させるために風を吹かせる。ゲート作りは任せたぞ」
「おう」
俺は現実世界と繋がる穴を作るためいつものようにカシウスで切り裂く。しかし……
「なんだと」
「どうした?」
「……空間に干渉できない。リングでも無理なようだ」
「まさか」
「……私の方でも同じです」
「つまり、私たちは……」
「ああ、どうやら閉じ込められたようだ」
誰がこの罠を仕掛けたかは知らないが、そいつは確実に罠に嵌った者を確実に殺しておきたいようだ。
「どうしますか?」
「どうしますかって、このまま助けを待ってるだけじゃやられるだけだし反撃かな。出来れば撤退したいところなんだがな」
俺は二人の様子と自身の状態を見て呟く。二人もここまでの戦いでの疲労が見える。俺自身に関しても聖剣の奥の手を使って魔力は無理やり回復したが、その分やはりこちらも疲労がたまっていた。
目の前にこいつも出来れば早期決戦で倒したいところである。
「とりえず、俺が先に仕掛けるから二人は続いてくれ。木原はブラットウルフに変身して俺と同じ前衛、服部は後衛で風をぶつけてくれ」
「「了解」」
俺の合図と共に俺を含め三人はそれぞれ動き出す。正直、敵の具体的な戦闘力や戦い方が分からない以上、様子を見ながら戦いたいところだがその途中で俺たちが倒れたらもともないので強引でも攻めていく。
そしてこちらが動くと同時に敵もまた動き出す。
「恐らく、あの黒い風がくる。服部!」
「任せろ!」
俺の声に服部は答える。彼女は自身の能力で風を操り、黒い鳥にぶつける。そしてそれは敵の黒い風をも巻き込みうまく相殺……することは出来なかった。
服部の風で相殺することの出来なかった黒い風は俺と木原に向かう。
ここで俺はあえて前へ踏み込んだ。
「はぁーーー!」
俺は力強くカシウスを横に振るう。すると黒い風は見事に一閃された。次の攻撃も直ぐに来ると予想したが、どうやら連発が来る感じはなく、攻撃は収まる。
俺は直ぐに木原を連れて一度後ろに引いた。
しかし……
「これでやっと一撃か。まずいぞ」
「これは苦戦が必須ですね」
「どうする?」
「俺が先行する。少しあの魔物の魔力を近くまで行って調べたい」
「ということは私がおとりをした方がいいですね」
「頼めるか」
「任せてください」
「服部、サポートを頼む」
「了解した」
身体強化……『肆』
俺はいつも通り身体強化を掛けて、加速する。
敵の様子を見ると、作戦通り木原がうまくおとりになってくれているのでこちらに敵の視線は向いていない。
いける!
俺はこの機会を利用し、敵の背後に回り、そのまま敵の体に手を触れる。そして俺は魔力を感じ取った。しかし。
「なっ」
俺はその魔力に思わず声を上げてしまう。
さらに魔力を調べ、声を上げたことで魔物に気づかれる。
敵である黒い鳥はその鋭い足の爪を使い、俺を切り裂こうと迫る。俺はその爪をカシウスで抑えて強く踏ん張る。
「くそ!」
ギリギリで踏ん張ってはいるが、向こうの方が力は強く押し返されそうになる。
ここで俺はあえて力を抜き、敵の下に滑り込んだ。そしてそのまま俺は敵の後ろに逃げることに成功する。
だが、魔力を調べその正体と、奴にかかっている御大層な加護の存在をしり、思わずため息を吐く。ともかく、あれを倒すには木原の力が必要だ。
しかし、そのためにも準備をするための時間も必要である。なんとか周囲に時間を稼げそうなものを探しながら、その方法を考える。すると天井にいい形の岩を発見する。
これなら……。
俺は二人に声を掛ける。
「木原は俺のところに来てくれ。服部は風で天井の岩を崩してくれ」
「岩だと?」
服部は俺が指を刺した岩を見て、はっとした顔をする。どうやら気付いたようだな。
彼女は俺の考え通り、風で岩を壊し見事に黒い鳥に命中する。その岩は見事に黒い鳥えを下敷きにした。
これで数秒は稼げる。
俺は引き続き服部には風で敵に集中攻撃してもらうよう指示を出した。
そして木原が俺の元に来る。というか俺の心情的には来てしまったというのが正解なのかもしれない。
彼女は元の姿に戻り、声を掛けて来る。
「遠藤さん、なにか作戦が」
「ああ。あの魔物の正体が分かった。そこでだな」
「はい?」
俺は小さな声で彼女にこれからの作戦について説明する。そしてその途中、俺のある言葉を聞くと、顔を真っ赤にする。この時、間違いなく俺の顔も赤かったことだろう。
「それ以外に方法は……ないんですね」
「服部の攻撃がまったく通じてないだろう。恐らく、超能力も範囲内だと思われる」
俺は彼女の様子を見ながら、思考を加速し続ける。
まぁ、無理だろうな。
他の方法も考えるが、やはりこの方法以外であれを倒すのは無理だろう。封印するという手段もあるがあの魔法は俺では使用不可能だ。
でもしかし、う~ん。
ここで木原が色々悩んでいる俺に声を掛ける。
「かっ、覚悟はできています」
「本気か?」
「はい……でも、優しめでお願いします」
「おっ、おう」
彼女の真剣な眼差しとその声に思わず、緊張してしまう。
しかし、この思いには答えなくてはならない。
俺はある一点に魔力を集め、ある魔法を発動させる。
そして……
俺は静かに彼女と唇を重ねた。




