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帰還勇者と超能力者  作者: 厨二王子
三章 忍びの村と動き出す者たち
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40話 おじさん

 あれはまだ私が小学生の時の出来事であった。

 私の村では能力者が見つかると忍びの訓練を受けなくてはいけない。もちろん、能力者でなくても申請すれば訓練を受けることは出来る。そんなこんなで私もずっと訓練を受けてきた。その中でいつも逃げたくなるような訓練も私は逃げ出すことはなかった。そうしていられたのはいつもそばにいてくれた姉上の存在があったからだ。


「彩、準備できた」


「待って姉上。もう少し」


「もう、速くしないと学校始まっちゃうよ」


「よし、出来た」


 私は慌てていつもの学校に行く準備を終えると、玄関で私を待っている姉上の元に向かう。


「待ったく、昨日のうちに準備くらいしとかないか。いつものところで絵里ちゃんも待っているのだろう」


「うっ、直ぐに……」


 私と姉上はいつも同じ時間に同じ場所に向かう。このとても幸せな時間。まだ本格的に裏の世界に足を踏み込んでいなかった私にとってはとても大事なものであった。

 私と姉上は歩き出すと幼馴染であり親友でもある絵里の姿を見つける。


「おはよう、彩」


「……ああ、おはよう」


「すまないな、待たせて。彩が相変わらず準備が遅くて」


「相変わらずって、何ですか姉上」


「あー、大丈夫ですよ」


「絵里!」


 私たちはにぎやかに話しながら学校へ向かう。私や絵里はまだ小学四年だが姉上はもうASOに就職していた。私たちが通う学校と姉上の向かうところは近くにあり、さらに時間も偶然同じということがあって一緒に通っている。


「おっここまでね。最近、森で怪しい人がうろついてるらしいから気を付けるように」


「怪しい人?」


 私の脳裏にこの村のはずれに住んでいる一人のおじさんがよぎる。まぁ、あのおっさんは確かに怪しいが、結構前からいるしそれならもっと前に言われてるか。


「分かった」


「気を付けます」


「うむ。では私は職場に向かう」


 私は姉上が職場に向かうのを確認すると絵里に話し掛けた。


「じゃあ、私たちも学校に向かいますか」


「うん」


「そういえば、絵里は今日はボランティアだっけ?」


「今日は忍びの訓練がないから、久しぶりに顔を出せるよ」


「そうかぁー」


 いつも放課後になると忍びの訓練があるのだが、今日はない。絵里も私と同じく能力者で訓練を受けている。そして彼女はさらにボランティアを請け負っている。最近は訓練続きでボランティアの方に顔を出せていなかったので嬉しそうだ。本当は遊びに誘おうとしたけどやめておいた方が良さそう。

 この後は当たり前のように授業を受けた。

 放課後になり、教室にいた生徒もそれぞれの目的のために動き出す。絵里もボランティアの生徒たちが集まる教室に向かって行った。


「……どうしよ」


 完全に暇だ。

 そんな私は自然とある所へ向かっていた。







「なんだい、お嬢ちゃんまた来たのかい?」


「わるい」


「別に悪くはないが……」


「それと小学生の前でそんな本を見るのはどうかと思う」


「おっと」


 目の前にいるおじさんはさりげなくそのてにあったエッチな本をしまった。


 ……まったく。


 ときよりやることがなくなるとこの村のはずれにある小屋に訪れる。このことは最初この小屋を見つけたときに秘密基地にしようとしたところ、変なおじさんがいたのでひどくがっかりしたものだ。故に特に親や絵里に話すことでもないのでこのことは誰にも話していない。

 おじさんは後ろ髪をひもでくくり、しかしボサボサであることが目立つ。清潔感のないイメージがる。




「お嬢ちゃん、また悩み相談かい?」


「悩みって……。そんな相談した覚えもないけど」


「ほら好きな男の子の話とか」


「していません」


「あら、つれないね」


 おじさんは立ち上がると、床に置いてあったオレンジジュースをコップに注いだ。それを私に渡してくる。


「ほれ」


「ありがとう」


「お菓子は……ないねー。カブトムシでも食う?」


「食わないわよ!」


「おー、おー。そう怒りなさんな」


 おじさんは私の反応を見て笑ってくる。


 相変わらずむかつく。


 このおじさんはいつも私をからかって笑ってくる。さすがに毎回やられれば慣れるものだ。


「しかし、いいねぇ~小学生は。学校は楽しいかい」


「楽しいわよ、友達もいっぱいいるし。ここで一人寂しく暮らしているおじさんとは違うの」


「ははは、羨ましい限りだ。小学生は上司に怒られないしね。んっ、先生には怒られるか」


「私はまだ一回も怒られてないもん。というか、おじさん働いてたんだ」


 驚きである。私がここに訪れると毎回いたり、この小屋もぼろいし、清潔感もなかったのでてっきり働いていないのだと思っていた。


「おじさんはニートじゃないよ。最近は魔女がうるさくてね」


「魔女?」


 私は首を傾げる。この時、私は忍びの訓練を受けていたが、それは自身の能力や生き残る忍びの技術を訓練していたので、魔女関連の知識はなかった。


「まぁ、それはいいんだ。そういえば訓練の方はどうだい?」


「うまくいってるよ。……そうだ、おじさんが教えてくれたあの動き。模擬戦で使ってみたんだけど皆びっくりしてたよ」


「ははは、喜んでくれておいちゃんも嬉しいよ」


「じゃあ、なにかまた強い技を教えてくれる?」


「技ねぇ~。おいちゃんは近接型じゃないからな~。正直、あまり教えることがないんだよね」


「つまんない」


「すまん」


 おじさんは困った顔をしながら、頭を掻く。


「今度はおいちゃんの愚痴でも聞いてくれや」


「やです」


「わお、断るのはや!」


 おじさんはわざとらしい驚きを見せる。愚痴を聞かない理由としては単純に面倒だからだ。


「私とおじさんって相性悪いよね」


「そうかい?おいちゃんとお嬢ちゃんはとても相性がいいと思うぜ。色んな意味で」


「?」


 私はおじさんの言っている意味が分からず首を傾げる。色んな意味とは……。


「というか、おいちゃんとこんな話せているのがなによりの証拠じゃないか。おいちゃんもこんな話せる相手と出会って嬉しいよ。小学生だけど」


「私は嬉しくなけどね。別に」


「ツンデレ乙」


「……」


「わお、ごみを見る目頂きました」


 これが俗にいうロリコンか。


 私は身の危険を感じ、体を抑える。


「んっ、なんか勘違いされてる気がする。おいちゃんは巨乳が好きだよ」


「……」


 もうだめだ、このおじさん。


 私はさらに冷ややかな視線を送ってると、おじさんは突然立ち上がり窓の外を見た。今はもうあれから時間が経ってもう夕方になっている。ここでおじさんの目が鋭くなる。さらに雰囲気も変わった。


 ……なんだが怖い。


「おいちゃんの最後のアドバイス。今日は村に帰らないことをお勧めするよ」


「どうして」


「……」


 おじさんは私に返事をしない。するとおじさんはおおきなリュックを背よった。


「すまない用事を思い出してね、失礼するよ」


「出かけるの」


「まぁね」


「じゃあ、私もそろそろ行こうかな」


「……そうか」


 おじさんが小屋から出ていく。いつもは私が先に小屋から出るので少し変に感じた。私もそれに続く。


「あれ?」


 なんと、おじさんの姿が消えた。


 ……嘘。


 私はきょろきょろして周りを確認するが、やはりおじさんの姿はない。


「どこに……えっ!」


 私の視線が村の方に向いた瞬間、思考が停止する。村が赤く燃えていた。

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