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帰還勇者と超能力者  作者: 厨二王子
二章 呪われし妖刀と闇の魔法使い
28/54

25話 合流

 闇が会長を中心に私のいる部屋を包み込み、反射的に目を瞑ってしまう。目を開けると会長は意識を失い床に倒れていた。私は牢獄の中で思わず、会長へ向けて必死に声を掛ける。


「会長、会長、会長!」


「いやー、よく眠っているね」


「貴様!」


「大丈夫、死んではいないさ」


 私は目の前にいる元凶を睨めつける。しかし、その本人……闇の魔法使いであるメランはそんな視線を微塵もきにすることなく、会長の方を向いていた。


「一体、会長に何をしたんですか?」


「んっ?ああ、君もいたんだったね。妹君が帰ってくるまで暇だし、少しお話ししようか」


「質問に答えてください」


 私はさらに奴を睨みつけるが、相変わらずこちらを見ずに笑っていた。

 しかし、奴を見る限りその目的が見えてこない。先ほどの言動から会長のことを気に入っているように見えた。つまり、奴が会長を殺す確率は低いと考える。でも奴は会長の意識をなにかしらの方法でなくした。では奴の目的って一体……。

 私が思考にふけっていると、奴は私の考えが分かってるかのように答えた。


「その様子だと、私が気に入っている妹君にこんなことをしたのはおかしいって思ってるね」


「……」


「別に不思議なことじゃない。妹君自身で果たそうとしたことにちょっと手伝ってあげただけさ」


「会長自身で……」


「妖刀の試練さ」


 メランは手を広げながら、妖刀の説明を始めた。私は静かに聞き耳をたてる。


「妖刀の試練は過酷なものだからね。それで妹君が死んでしまうといけないので、予め僕の方で調節したのさ。それでも彼女にとってギリギリの試練だけどね」


「会長が試練を突破すると分かってるような顔ですね」


「じゃなきゃ、僕の目が腐っていただけさ」


 妖刀の試練……恐らく私では想像できない試練に違いない。


 ……会長。


 私が会長の安否を心配していると、メランはなにかの魔法だろうか、正面に二つのつのモニターを展開する。そこには私の仲間たちの姿があった。


「しかし、君の仲間たちは強いね」


「だから、分断したのか?」


「ああ、見た通り無事だよ。最も戦闘力がない回復役の子も他の仲間とセットにしておいた」


「皆……」


「だけど、ここにたどり着くことはないけどね」


「遠藤くんはどうしたの?」


 そう、その二つのモニターには遠藤くんが映っていない。私は再びメランを睨みつけた。


「元勇者か。彼も無事だよ」


 元勇者、メランはそう言った。まだ遠藤が元勇者であることは本部でもそう知られてはいないはず。そのことを知っているのは桜川支部である私たちだけ。では一体どこから……。

 やはり、この闇の魔法使いはまだなにか隠していることがあるようだ。

 私は奴から出来るだけ情報を出させるように話を続ける。


「なら何故、他の皆のようにそのモニターで見せない」


「そっちには余裕がなくてね。簡便してもらいたいな」


「余裕がない?」


「ちょっと特殊な魔法を使っていてね。さすがは元勇者と言ったところか、あの魔女の言った通りだったな」


「魔女?」


 ここに来て聞き覚えのない名前が出てきた。魔女……七人の魔法使いの誰かだろうか。


「おっと僕についてはある程度話してもいいけど、彼女のことは本人に口止めされていたんだ。あぶない、あぶない」


 ……さすがにそこまで教えてくれるほど甘くはないか。


「さてさて、妹君もそろそろ試練の山場に着いたところかな」


「会長……」


「ではでは……くっ」


 メランがなにかしようとすると、彼は頭を抑える。

 私は敵の思わぬ行動に首を傾げた。


「まさかもうあの魔法を突破するとは……。聞いていた以上じゃないか」


 あの魔法ということは遠藤くんだろうか。


「だがその時には試練が終わってるだろう。とつておきもあるが、さすがの僕も彼を相手にするのはきついしね」


「皆……」


 私は目の前にいる会長を見守りつつ、分断された仲間の安全を祈っていた。






「一体なにが起きてるんだ!」


「それは私自身が聞きたい」


「二人とも落ち着いて」


「僕が……食い止める」


「いや、もう少しで部屋に着く、そこまで走りぬくぞ!」


 私たちはあの黒い犬の大群を切り抜けた後、奥に続く道を進んだ。目的地というか、ここかどこかも分からない状態だけど……。それでも私たちは先に進むことしか出来なかったのだ。

 暫く進んでいると、後ろから大きな物音が聞こえて振り向くと、必死に走っていた服部先輩がいた訳で……。後はご想像通りだ。


「何でゴーレムなんて引き連れてるんだよ!」


「一体ならともかく、あの数は私一人では対処不可能だ。まぁ、再開できて良かったではないか」


「よくねぇよ!」


 佐藤先輩が服部先輩に怒鳴る。すると、部屋の入り口が見えて来て私たちはそこに突っ込んだ。直ぐに彼は今村さんに指示を出した。


「今村、シールド展開!」


「うん……」


 今村先輩は頷くと、指示通りリングを使って盾を展開した。


「燃えやがれ!」


「風よ!」


 佐藤先輩と服部先輩が同時に炎と風邪をゴーレムの軍団にぶつける。


「やったか?」


「先輩、それフラグです」


「あっ……」


 一瞬、音が止まってお決まりのやったかが入ったが、これもまたお決まりで足を止めたゴーレムたちが再び動き出した。


「ちっ、今村は加藤を守れ。俺と服部は特攻だ」


「……」


 服部先輩は無言で頷く。


「……でも」


「でもじゃねぇ。加藤は俺らの生命線だ。文句があるならしっかり守れよ」


「……了解」


 今村先輩は前に出たがっていたが、納得して私の前に立つ。なにか、申訳ない気持ちになる。


「そんな顔するな。さっきもいったが、しっかり自分の仕事果たせ」


「はい!」


 私は佐藤先輩の言葉に笑顔で返した。そして戦いが本格的に始まる。


「それじゃあ、行くぞ!」


『了解』


 ここで佐藤先輩と服部先輩がゴーレム軍団に向かい、走り出そうとすると突然この空間が輝かしい光に包まれた。私たちは反射的に目を瞑った。






「この光は……」


 私は思わず呟く。目を開けると、目の前にいたゴーレム軍団は一体も残らず、半分にされていた。

 この光には見覚えがある。あれは確かレットドラゴンの時……。


 やっと来たんだ、バカ……。


「たく、遅いじゃねぇか」


「ふん、待ちわびたぞ」


「……おかえり」


「おう、待たせたな……」


 皆もやってきた人物が誰だか気づいたようだ。

 右手には光り輝く聖剣を持ち、相変わらずボサボサの髪。体のあちらこちらに傷が見えるが間違いない。


「治療するわ」


「頼む」


 私は直ぐに彼に駆け寄って治療を開始した。私のリングが輝く。


「その様子、もう会長たちの場所はつかめているようだな」


「霧島も会長と一緒だ」


「そうか……」


 治療は終わり、私は彼に体の調子を聞く。


「問題ねぇよ。ありがとな」


「会長たちをお願い」


 私は彼の目を見つめながら言う。彼はそんな私に笑顔で言った。


「もちろんだ」


「お前の方が速く会長たちの元にたどり着く。任せたぞ」


「ああ」


 彼……元勇者である龍太は佐藤先輩の言葉を聞き、再び会長たちの元へ走り出した。


「俺たちも直ぐに向かうぞ」


「はい」


 私たちもまた彼の後を追い、会長たちの元へ向かった。



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