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帰還勇者と超能力者  作者: 厨二王子
一章 知らなかった世界の真実
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プロローグ2



プロローグ2

「行ってしまうのですね……」

「ああ、ずっと帰りたかったからな」


 どこか遠い世界、『グランシウス』で世界を絶望に陥れた魔王との戦いを終えた勇者である俺は今までお世話になった人々にお別れの挨拶をしていた。そして今その最後の一人であるこの世界で大国に位置する『ガルシア共和国』の王女、リリス・ガルシアと話している。銀髪のポニーテールでとても凛々しく、力強い瞳をしている彼女はおそらくこの世界でもトップの美しさをもつであろう女性だ。


「さて、これで最後の一人とも別れの挨拶できたし、そろそろ行くか」

「酒場の皆さんには…」

「もちろん、もう済ませたぜ」

「……そうですか」


 ここでお互いに無言になる。思えばこの世界に来てから色々あった。あの酒場はこの世界で俺の故郷といってもいい思い出の場所。色んな事もあったし、あそこに人たちにはたくさん世話なった。そんな酒場のみんなと同じくらいリリスにはお世話になったな。

 すると俺はふとずっと一緒にいた仲間を思い出す。


「あっ、メリーについては頼んだぜ」

「分かっています。彼女は元奴隷ですが、魔王討伐の実績があるので王族の方々も特に文句は言えないでしょう」

「そうか……なら、大丈夫だな」


 メリーは元奴隷であり彼女だけ身寄りがなかった為、自分が元の世界に戻るのに懸念事項だった。しかし勇者の仲間であり魔王討伐の功労者となったことから今では世界中から認められた存在になったのでそのような心配は無用のようだ。

 俺はもう用はないとばかりに荷物を背負い、部屋を出ようとする。

 ふと最後に後ろにいる彼女の顔を見たくなり、振り返ろうとするがここで振り返ると帰れなくなると思い最後の理性で無理やり前に踏み出す。


「どうかお元気で……」

「ああ」


 俺はリリスに短い言葉でそう言うと、後ろを振り向かずにそのまま城の外へと歩き出した。彼女の涙に気づかない振りをして。






「ふう、なんとか帰る準備はできたな」


 俺はリリスと別れた後、一番最初にこの世界に来た洞窟に元の世界へ帰るために足を運んでいた。帰る準備はもう終えて後は仕上げをするのみである。恐らく追ってくるだろう、あいつのために少し罠も仕掛けた。


「さて、後は聖剣で次元を切って……」


 俺は聖剣である、『カシウス』を出す……その瞬間、突然背後から矢が俺の足めがけて飛んでくる。


「ほいっと」


 俺は事前に気配を感じていたのでその矢をすんなりと避けると矢が飛んできた方角に向く。俺が避けた矢は真っ直ぐ進み、洞窟の壁にあたりに突き刺さった。


「やっと見つけましたよ。ご主人様」

「たく、物騒だなメリー。もうお前は奴隷じゃないから自由だって言ってるだろう」

「ですから、私はあなた様についていきます!」

「はぁ……」


 元の世界に帰ろうと準備していたところに現れたのは俺の元奴隷である仲間のメリー。彼女は俗にいう獣人で茶色い猫耳がチャームポイントだ。


「私も連れて行ってください」

「ダメだ。お前を連れて行って、元の世界にどんな影響を及ぼすか分からない」


 俺は前からずっと言っていたことをまた説明する。彼女の耳といった獣人要素を隠したり、人間に擬態することはできるがいつふとした瞬間に獣人になるかも分からない。そもそも獣人がこちらの世界で暮らせるのかもわからないため彼女がこちらに来るには問題が多すぎた。

 しかし彼女は相変わらず、聞く耳を持たない。


「そうですか…なら強引に連れて行ってもらうまで」


 彼女は弓を構えながら、ダッシュで俺に近づいて来る………しかし。

 

「なっ」


 彼女が踏み込んだ足元がドンッと見事に陥没し、綺麗に俺が事前に仕掛けた落とし穴に引っかかった。俺はその様子を見てにやりと笑う。


「小癪な…………」

「はっはっは、変わんないなお前は」


 メリーは根はとても真面目だが大事な時に限ってドジる癖がある。今回はそれを利用させてもらった。

 てっきり最近魔王討伐、その直近の戦いではそのような姿は見れなかったので直ったと思っていたがそんなことはなかったようだ。

 俺はしっかり彼女が落とし穴にはまっているのを確認すると、カシウスで次元を切る。するとそこに虹色の穴が出現した。この穴は前に見たことがある。俺が初めてこの世界に来た時に見た穴と同じ穴。どうやら、この穴は元の世界に帰る穴で間違いないようだ。


「くっ、待ちなさい」

「じゃあな、メリー。リリスたちと仲良くやっていくんだぞ。そしてさらば異世界、グランシウス」


 俺は色々な思いを抱きながらこのセリフを残し、元の世界に帰って行った。






 あれから二年の時が過ぎ……俺は戦いとは無縁な世界で平和な生活を送っていた。


「……夢か。しかし、あれからもう二年経つのか」


 俺はいつも通りの目覚ましの音を聞きいて目を覚ます。ここは異世界ではなく、俺が生まれた元の世界。


「龍太ー、起きたの?もう朝食できてるわよ」

「ああ、今行く」


 俺は下の階から呼んでいる母さんの声に返事をすると、自分が通っている高校へ行く準備をして下の階に降りていく。

 

 俺の名前は『遠藤龍太』。異世界の元勇者で今は平和を満喫する高校生である。

次回から一週間に一回のペースで投稿します。

感想やアドバイス募集中です。


2024/11/12 更新

やっぱり異世界のやりとり好きだな

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