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帰還勇者と超能力者  作者: 厨二王子
一章 知らなかった世界の真実
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14話 聖剣の輝き

「やっと来たか」


「あら、みんな無事じゃない。セーフよ」


 俺が溜息を吐きながら言葉を出すと、会長が笑顔で答えて来た。


「それで援軍は期待できそうか?」


「それが、今回に限ってどこも人がいないみたいなの」


「嵌められたな」


 さっきの人影が関係していると思うが、本当に厄介だな。俺は会長たちに今の状況を詳しく説明した。


「なるほどね。とりあえず全員攻撃みたいな感じでいいのかしら」


「ああ、それで」


「でもリングがあるとはいえ、私たちの火力であのレットドラゴンを消滅できるとは思えないけど」


「そこは俺のとっておきを使う」


「時間は掛かる?」


「少し」


「分かったわ」


 会長は俺の言葉を聞くと、皆に指示を出し始めた。


「加藤さんは回復を、今村くんは敵の攻撃を防ぐことに集中して」


「はい」


「……分かった」


「残りの皆は遠藤くんの準備が終わるまで、レットドラゴンを弱らせるわよ」


「「「了解」」」」


 会長を筆頭に佐藤、服部、霧島はレットドラゴンにに向かって行った。





「遠藤大丈夫?」


「ああ、問題ねぇよ」


 会長たちがレットドラゴンに向かって行ったのを見ると、加藤が俺に声を掛けてきた。俺に傷とかないか見に来たんだろう。するとさっきのレットドラゴンの攻撃が少し掠っていたのか、腕にあった傷から少し血が出てきた。


「ちょっと血出てるじゃない。ちょっと待って」


「平気だよ、これくらい」


「いいから、いいから」


 俺は問題ないと加藤の手を払おうとするが、加藤が強引に回復してくる。そして加藤が俺の傷を回復させている途中、話し掛けてきた。


「なんで……」


「えっ?」


「なんで遠藤はそんなビビらずに、堂々と戦えるの。やっぱり勇者だったから?」


 加藤が俺に問いかけてくる。やっぱり加藤にも不安な部分があるのだろう。しかも今回は前にたくさんの被害を出したと言わているレットドラゴンだ。

 俺は加藤の言葉を聞き、グランシウスでも似たようなことを聞かれたのを思い出した。


『あなたは何故……何故そこまでして私たちのために戦ってくれるのですか?』


 思えば加藤は似ている。妙に世話焼きなところや正義感とか。あのグランシウスにある国、ガルシアの姫であるリリスに。

 俺は加藤の質問を質問で返した。


「なあ、加藤。勇者になるのに重要なものってなんだと思う?」


「重要なもの?やっぱり力とか」


「それも確かに必要だが、それは後から付いてくる感じだな」


「じゃあ何?」


「それはな……」


 俺は笑顔で答える。


「一歩踏み出す小さな勇気だ」


「何でよ?」


「どんな強敵と戦うにも、国も救おうにも結局は自分で決断して、自分の足で動かなきゃ行けないからさ」


「……深いわね」


「まぁ、師匠の受け売りだけどな。だから……」


 俺はグランシウスでリリスに告げたことと、同じ言葉を加藤にも告げた。


『「大切な勇気を振り絞って踏み出した一歩で、後悔したくないんだけさ」』


 俺の言葉を聞いた加藤は、小さな声で呟く。


「強いんだね、遠藤は」


「はっはっは、そうそう。俺は強いのさ」


「……バカ」


「だから、ちょっくらあのデカブツを倒してくるわ」


「行ってらっしゃい」


「ああ、行ってくる」


 俺はそんな加藤の言葉を聞くと、再び聖剣を構えてレットドラゴンに向かって行った。






「会長、奴の攻撃が来ます」


「ええ。彩は腹を、蓮は首の下を、凛は遠距離から目を狙っての狙撃をお願い。幸一は私と一緒にレットドラゴンの引き付け役よ」


 私の言葉を聞くと、皆指示通り動き出す。凛は出来るだけ離れた狙撃ポイントに向かい、幸一は早速レットドラゴンの攻撃を防ぐため、近くに向かった。


「会長、少し無茶では?」


「大丈夫よ。それよりも遠藤くんの準備が終わるまで、少しでも弱らせるわよ。後、分かってると思うけど、幸一はともかく最後の一撃を出せる力は残しておいてね」


「まかせてくださいよ」


 蓮は私の言葉を聞くと、元気よくレットドラゴンに向かって行った。


「まったく、無茶な奴だな」


「まぁ、そこが彼のいいところよ……欠点でもあるけど」


「はぁ」


 彩は溜息を吐くと、小太刀を構える。


「とりあえず、お願いね」


「……分かった」


 彩は自分の能力を生かしながら、レットドラゴンに攻撃を仕掛けに行った。さて、私もそろそろ行きますか。


「ふぅー」


 私は軽く深呼吸をし、腰に下げている刀を抜いた。


「金城流剣術……」


 レットドラゴンが咆哮を上げこちらに迫ってくる。そしてレットドラゴンは暫くして、私の距離へと入った。そしてその瞬間私の姿はその場から消えた。


「三の太刀、『修羅切り』」


 私は自分の能力でレットドラゴンの目の前に一瞬で移動し、剣術を使った。私の剣はレットドラゴンの顔……牙に鋭い一撃が入り、その牙は見事に一刀両断された。


「私たち超能力者は前とは違うのよ……」


 そのあまりにも速い一撃に気づくのが遅れたレットドラゴンは落ちた牙を見て、悲鳴のような鳴き声を上げる。さらにそれに追い打ちをかけるように、遠くから高出力な射撃と、

 燃え盛る炎、荒れる突風がレットドラゴンを襲った。


「ここまでね……。皆一旦引くわよ」


「何でですか?」


 私はまだ物足りなそうに私に話掛けて来る蓮に、少し離れたところにいる男を見て言った。


「どうやら、元勇者さんの準備が終わりそうよ。皆もしっかり準備しておいてね」


 その男……遠藤龍太からは大きな銀色に輝く光の柱が立ち昇っていた。







 俺は今極限の集中状態にあった。身体強化の『肆』は使えても、時間制限がある。しかし『肆』からは奥の手である聖剣の力を少し開放できるのだ。レットドラゴンに致命傷与える方法はこれしかない。なので放てるのも一撃のみ。そして一撃しか放てない状況が俺にプレッシャーとなって襲い掛かってくる。そんな中俺は意を決して、身体強化の魔法を発動した。


 身体強化……『肆』


 身体強化の魔法を発動させると、今まで以上の力が溢れてくることを感じ取る。それと同時に体中から悲鳴が上がってくることにも気づいた。


 ちっ、やっぱ長時間の発動は無理か。


 俺はソウルブレイドをリングにしまい、カシウスを両手で持って構え、奥の手を発動させる。

 俺はもともと聖剣……カシウスの担い手になれたのは才能や技術があったからではなかった。むしろ才能なんて欠片もなかったのだ。それは師匠に散々言われた。選ばれた理由は至極単純、相性が良かったからだ。結果カシウスに選ばれたことで、そのまま勇者になった。                   

 俺は息を抜き、周りの音や声が聞こえなくなるまで集中し、カシウスと一つになるようにリンクさせた。カシウスから銀色の光が発光し始める。

 すると、会長たちの動きが変わった。この光で俺の準備が終わったことに気づいたようだ。なら後は、実行するのみ。

 俺は聖剣であるカシウスの力を開放するために呪文を呟く。


 ___告げる。


 ___我この聖剣……カシウスの担い手なり


 ___絶望を切り開き、希望に導く


 俺はカシウスの開放の呪文を呟くと、カシウスを大きく掲げた。


「はぁーーーーーーーーー!」


 俺は身体強化された全身の力と、大量の魔力を使いカシウスを振りかざした。振りかざされたカシウスから銀色の光が解き放たれ、その光はレットドラゴンを飲み込んだ。

 さらにその攻撃に合わせるように、他の皆の攻撃が加わった。レットドラゴンは悲鳴を上げながら、光の中で必死にあがく。しかし、光が止むとそこにレットドラゴンの姿はどこにもなかった。


「終わったか……やばっ、意識が」


 俺は力を使い過ぎたのか、誰かが近づて来るのを感じながらも、そこでプツンと意識を失った。





 私は遠くから遠藤が倒れるのを確認すると、慌てて彼の元へ向かった。


「大丈夫、遠藤……あれ?」


 倒れている遠藤を見ると、見事にいびきを掻いて眠っていた。私はその姿を見てホッとすると、リングを発動させて遠藤を回復させる。私のリングは傷だけではなく、疲労も回復することもできるからだ。


「まったく、無茶しちゃって……バカだなー」


 私は遠藤の寝顔を見ながら、そんんことを呟いた。すると遠くから、他の皆もこちらに近づいてくるのが見える。

 私は大きく手を振りながら、大声で会長たちを呼んだ。

 こうしてレットドラゴンとの戦いは以前のように多くの被害を出すことなく、リングの力……何より異世界から帰ってきた勇者がいたことで幕を閉じた。


次回で一章は完結です。二章は会長と霧島の二人の回にする予定です。

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