12話 決闘
※12月10日 章を追加しました
「戦う……ね」
「そうだ。俺はまだお前を認めていない」
俺は目の前で堂々と、宣言をした佐藤を見て呟いた。大体佐藤の行動を見て、こいつが俺を認めていない理由が思いつくんだが……はて、どうしたものか。
「えっと……こんなのダメだよ。仲間同士なのに……」
「それは問題ない。唯の模擬戦だからな……そう、模擬戦」
「……」
隣にいた加藤が反対の声を出すが、佐藤が一言で否定した。というか明らかに佐藤の方は唯の模擬戦で済ませる気なんてないだろう。目が明らかにヤル気だ。まぁ、といってもさすがに殺す……とまではいかないと思うが、重症にはするつもりに見える。俺は自分の小さな脳みそをフルに使い、精一杯この状況においての打開策を考える。
できるだけ戦いは避けたかったが、これからの佐藤との関係のことを考えても、奴の挑戦を受けた方がいいだろう。
それに超能力者とも服部との任務以来戦ってないからソウルイーターもあんまり使ってなかったし……ちょうどいいか。
俺は溜息をつくと、佐藤に向かい声を出した。
「分かった。だけど、カシウスは使わないぞ」
「んっ?ああ、例の聖剣か。いいぞ、模擬戦だしな」
「決まりだな。ルールは致命傷を与えたら勝ち、または降参した奴が負けだ。怪我したら
加藤に治療してもらう。加藤、できるか?」
「うん、たぶん……」
なんか少し心配だが大丈夫だろう、さっきまで自信満々だったし……大丈夫だよね?
俺は一人自分に言い聞かせた。
「あっ、そうだ。今回のことで何か責任問題が出たら、全部お前が背負えよ」
「はいはい、分かってるますよ」
佐藤は俺の言葉に対して頷くと、手に能力を使い出現させる。
本当にやる気満々だな。
俺は佐藤が手に火を出現させたのを見ると、こちらもリングからソウルイーターを出した。
「それじゃ、加藤。合図を出してくれ」
「はぁ、分かったわよ」
加藤は俺の言葉に頷くと、制服のポケットから一枚のコインを取り出し、コインを宙へと放つ。コインはやがて空から地面に落ちる向きを変えて、そして地面に落ちる。
その瞬間、俺と佐藤との戦いは始まった。
コインが地面に落ちた瞬間、俺と佐藤は同時に動いた。俺は佐藤との距離を詰めるが、奴は手に持っていた火を俺に投げつけてくる。しかし、スピードはそこまで速くない。俺が軽く右に避けると、佐藤から舌打ちが聞こえてきた。
「ちっ、そう簡単には当たらないよな」
「当たり前だ」
俺は一人文句を言っている佐藤に一言告げて、さらに佐藤の目の前まで距離を詰める、。だがここで、自分の勘が俺に危険だと告げてくる。俺はそんな勘を信じ、一歩後ろへ跳んだ。
「はははっ」
「なに!」
なんと、突如俺の下から火が出現したのだ。俺は警戒を続けながら、また一歩後ろへ下がった。
どうやら火は手以外でも発動できるようだ。しかも佐藤はまだ切り札であろうリングを使っていない。
……予想外だな。
俺は鋭い目で佐藤を睨みつけた。
「おうおう、どうした……ビビったか?」
「なに、ちょっと後ろに下がっただけさ」
「まさか、勇者様がこんなことでビビるわけないか。じゃあ……これはどうかな!」
佐藤は俺に向かい勢いよく叫ぶと、俺の回りに大きな火の壁を出現させた。恐らく、俺の動きを封じるつもりなんだろう。俺はてっきり佐藤はパワー馬鹿かと思っていたんだが、考えを改める必要があるようだ。
俺が一人冷静に考えていると、佐藤が俺に声を掛けてきた。
「いいことを教えてやる。俺のリングは『フレイムコントローラー』。効果は火の出力や形状を変化させることができる。発火能力は火を手に生み出すだけの能力だからな、とても助かっているぜ」
敵に情報を情報を漏らすなんてやっぱバカだったか。だが……。
「しかし、俺はお前のリングは武器だと思ったんだが」
「それは残念でした」
佐藤は身動きが取れない俺に向かい容赦なく火……いや、先ほどから威力が上がっていることから、もう炎だな。炎を投げてくる。俺はわずかにある炎の壁とのスペースをギリギリまで使ったり、体勢を傾けてりしてその攻撃を避けた。そんな俺の行動を見ながら
「容赦ないな」
「へっ、まだまだ止まらないぜ」
「そうか……なら」
俺は佐藤の言葉を聞くと、ソウルイーターを前に突き出すような形に構える。そんな俺の様子を見た佐藤が首を傾げた。
「どうするつもりだ?」
「なに、通れないなら押し通るまでだ!」
身体強化……『弐』
俺は身体強化の魔法とともに、ソウルイーターを構えながら、佐藤に向かって加速していく。迫ってくる炎や炎の壁を切り裂きながら。
「なんだと!?」
佐藤の驚いた声が聞こえる。恐らく、自身の能力を過信していたんだろう。俺はそんなのお構えなしに、佐藤に向かっていく。
そして佐藤の腕を切ろうとした……その時。俺は突然前の方から、大きな魔力を感じ攻撃を止めた。
「どうやら、厄介な奴が現れたみたいだな」
「馬鹿な……」
「嘘……」
俺は溜息を吐きながら呟き、佐藤と加藤は驚きで固まっている。俺も表に出してはいないが、二人と同じような心境だ。
突如俺たちの前に現れたのは魔物、しかしそこにいた魔物は今までこの世界で見てきた魔物とは明らかに違っていた。大きな体に翼を持ち、固そうな赤いうろこを身に纏っている。そして魔物の口には鋭く。大きな牙がある。恐らく、この魔物を見てグランシウス、さらにこの世界でも知らない者はいないだろう。
「レットドラゴン」
そこにはこの世界で唯一出現したAランクの魔物であり、かつて超能力者たちに被害をもたらしたレットドラゴンがそこにいた。




