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帰還勇者と超能力者  作者: 厨二王子
一章 知らなかった世界の真実
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10話 忍法

「来る!」


「了解」


 目の前に現れた男は俺たちを見ると、まるで獣のように突っ込んで来た。

 俺と服部は左右に跳んで避ける。すると、さきほどまであまり見えなかった敵がよく見える。敵の超能力者はスキンヘッドで、上半身は裸の男性。身長は今村なみにでかい。

 おいおい、マジか……。


「意外と、図体の割に速いな」


「恐らく、能力で体重を軽くしてスピードを上げているのだろう。しかし、調整が難しいせいか捕らえられないほどでもない!」


 服部は俺に一言告げると、まさに風のように敵に向かっていく。俺は指示されていた通りに、リングからソウルイーターを出した。


「じゃあ、行きますか。新しい愛剣」


 俺は一人言葉を出し、敵の動きを封じに向かった服部の後に続いた。






「舞え……風よ!」


 服部は短く言葉を紡ぎ、自らの能力である風を出現させる。しかし、敵はそんな隙を見逃さず、服部に敵の拳が迫る。拳も能力で軽くし、速くしているのだろう。

 しかしそれでは……。


「その拳。確かに速いが……軽いぞ」


 服部は敵の拳をその小柄な体で、簡単に受け止める。俺は彼女を見て、あれは力だけで止めている訳ではないことに気づいた。よく見れば彼女の受け止めている手の近くには少し風が吹いている。恐らく彼女は風化能力を使い、生み出した風力を利用して自分の力に加えているのだろう。だが、これだけでは敵の動きは完全には封じることはできない。

 彼女は一旦敵から離れると、自分の両手に先ほどより大きな風を生み出した。


「そろそろ出番だぞ」


「やっとか」


「ふん。せいぜい足を引っ張るなよ」


「期待にそえるよう頑張りますよ」


 俺は服部に適当な返事をする。服部はそんな俺の返事をすると、一瞬顔を歪めるが直ぐに敵に向いた。俺はその切り替えの速さにさすが自称忍者だなと一人納得する。

 敵は少し動きを止めていた。さらに、よく見れば足元が少し沈んでいるのが分かる。恐らく今度は自分の体重を重くして防御に専念するつもりなんだろう。拳も重くすれば

 威力も上がるからな。


「動かないつもりなら、好都合なだけだ。ここで追い打ちをかける」


「止めは任せろ」


 俺と服部は同時に動く。敵はそれを見ても、一向に動こうとしない。その間に服部が両手に持った風の塊……小さな渦を敵に投げつけた。


「忍法……疾風竜巻」


 服部はかっこよく技の名前を告げる。その竜巻は彼女の手から離れると、大きくなり敵を挟む。敵は突如出現した二つの竜巻に、混乱してるようだ。


 ガァーーーーーーー!!


 敵は人とは思えない、悲鳴を上げる。


 ……暫く、この空間に閉じこもってるとこんなになっちまうのか。


 俺は敵の能力者を見て一人思いながら、ソウルイーターを構え、身体強化の魔法を使った。


 身体強化……『弐』


 俺はいっきに加速する。すると、竜巻の間にちょうど俺が通れるくらいの道が開いた。俺が通れるように、服部が竜巻をコントロールしたんだろう。

 そこまで、コントロールできるとは……。俺は彼女の能力の扱いのうまさに一人驚いた。


「これで終わりだ」


 俺は敵の目の前に着くと、そのスピードを維持しながら敵の胸元を一閃した。切られた敵には傷一つなく、意識を失い地面に倒れる。

 倒れた敵は、服部が会長に渡されていたという、転送のリングで本部に送った。そんな便利なものもあるのか……しかし、それにしても。


「すごいな……この剣。普通なら即死だぞ」


「ソウルイーターは敵の心を切る。だが、まだ作られたばかりのリングだからな。未知の部分も多いんだ」


「なるほどね……んっ?」


 俺が服部の話を聞いている途中、突如この場が大量の火に包まれた。







「どうやら、魔物のようだな」


「ちっ、油断した。まさか、俺が魔物の反応に気づくのが遅れるなんて」


 俺はソウルイーターで、服部は風で火を払い、お互いに怪我はない。まぁ、制服は少し焦げたけど。

 火が徐々になくなっていき、少しずつ敵の姿が現れていく。それは人間の姿ではない。大きさは俺より少し小さいぐらいで、小さな羽を生やし、火を吹いている。

 その数は二匹。


「ベビードラゴンだな。小さいがあれでもドラゴン、しかもBクラスだ。油断は禁物だぜ」


「片方は私がやる。お前はもう片方をやれ」


「作戦は?」


「お前も魔物の戦いには慣れているから、大丈夫だろう。特にない、好きにやれ」


「はいよ」


 俺は服部に返事をすると、ソウルイーターをしまい、カシウスを出した。そして身体強化の強化の魔法をかける。


 身体強化……『参』


 ベビードラゴンは俺に突っ込んでくる。俺は動きをよく見て、避けた。


「あぶね。あの爪に当たると、やばいんだよな」


 俺はベビードラゴンの爪を見て、一人思う。ベビードラゴンの爪はとても鋭く、当たれば致命傷だ。俺はそんな爪を避けつつ、隙を探す。

 すると、ベビードラゴンの爪の一撃が大振りになった……今だ!

 俺はカシウスを構えてベビードラゴンに近づき、奴の胴体を切り裂いた。切り裂かれたベビードラゴンは黒い粒子となって消えていった。


「どうやら、終わったようだな……服部はどうかな」


 俺は服部の方を見ると、ちょうど戦いの終盤だった。


「これで終わりだ。小太刀……三段切り」


 服部が小太刀を振るうと、ベビードラゴンは三枚おろしの状態になる。その後は黒い粒子となり、消えていった。


「さすがだな」


「Bランクだったら、数が多くなっても一人でなんとかなるんだがな」


「Aランクは次元が違う。その強さは誇ってもいいと思うぜ」


 そう。BランクとAランクの差は激しい。グランシウスでもそうだった。


「とりあず、これで終わりだな」


「ああ」


 俺と服部は反転世界から、現実世界に帰る。ちなみに、これは余談だがこの後、服部に忍法かっこいいねって言ったら、思いっきり蹴られた……何故だ?

 どうやら、彼女と仲良くなるのはまだまだ時間が掛かりそうだ。

 こうして俺たちは今日の任務を無事に終えることが出来た。






 誰もいるはずのない静かな空間……反転世界。フードを被った一人の男が薄気味悪い声を出し、笑っていた。


「準備はできました……もう直ぐです。世界に混沌を、そして魔人の復活を」


 男の目の前には、赤く巨大な魔物の姿があった。


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