どうしようもないから…
「…2歳か…流石の俺でも引くぞ…」
まさか松田より酷いとは。…言ってて何だが真面目に否定できない。
「か…返さないでね?ワヒャッ!」『あぁ~もう疲れた…翻訳魔法って疲れる…』
『そうか…』
俺と彼女が果たして今何語で喋っているかは問題ない。…にしても2歳か…流石にそれは…どうなんだろ。…いや、別にそう言ういかがわしい行為とかするわけじゃないよ?でも…ねぇ…元30代男と血のつながりのない奴隷幼女2歳…ヤバい。俺だったら確実に通報してる。
『…で、捨てないでね?やっと見つけた言葉の通じる人なんだから!』
『…翻訳魔法使い続ければいいだろ。』
『あれ結構疲れるの~!もういいから!ヤルことヤれれば大丈夫だよね?それ位の知識なら生まれて4ヶ月で身についてるから大丈夫!』
『お前が大丈夫でも俺的に…いや、社会的に問題しかないわ!』
半ギレの俺を不思議そうに見てくる松田とファム。
「…何だ?」
「…いや…平塚…何か辛い事でもあったのか?訳の分からん言語を使って…疲れてるならもう休んだらどうだ?」
妙に優しい松田の言葉に俺は引っ掛かりを覚えた。
「…訳の分からない?お前…通じてないのか?」
それだけで松田は何かが分かったようで何やら頷いている。
「…成程。それが悪魔の言葉か~多分俺あの人にそれ貰ってない。あの書類を読んだ時に何か言ってたし…」
そうか、何か言っていたな。それでこいつは訳の分からん能力を手に入れて…
『早く宿に行きましょ~よ~眠いの~外のベッドはふかふかで気持ちいいって聞いてるよ~?』
『…そうだな。いつまでもここに居るわけにはいかんしな』
おそらくディア以外には通じていないので俺はファムと松田に宿に行くことを告げると二人とも了承した。丁度そこに頼んでいた飯が来たので食べて行く。
『…いっぱい食べるね…』
『やるよ。』
『ほんと?』
『狙ってたんだろ…痩せてるんだし少しは肉つけろ。』
『えへへ~』
元々ディアに食べさせる分の方が多いしな。もう少し特に胸の辺りに肉を…っていかんいかん!こいつ2歳!ぺドにもほどがある!
―――ケッケッケヤっちゃえヤっちゃえ―――
(お前は…悪魔!)
視界の一部が暗くなってミニサイズの小悪魔が俺に何か言ってきた。
―――ここはファンタジーの世界だぜ?何も気にすることはない!実年齢2歳でも肉体と精神年齢は違うんだ!―――
―――それは違うよ!―――
(おお…これがかの有名な頭の中での論争か…ファンタジー世界だから起こるのか?)
今度は視界の一部が明るくなってミニ天使が!
―――いくら盛りのついた人間でもそれはないよ!ムッツリ野郎は一回宿で右手に慰めてもらうといいよ?残業ばっかりで溜まってるんだ。落ち着けこの童貞糞野郎2歳を犯すとか死んだ方がいい。いや、一遍死ね。―――
天使…ちょっと口悪いな…
『ご主人様これ美味しい!』
そんな葛藤のことを全く知らないディアがまぶしい笑みを向けてくる。止めて!穢れている俺を見ないで!
―――う~んでもやっぱり可愛いね。いいんじゃない?―――
おい天使テメェ巫山戯んな。
―――いや、大体その辺覚悟してるんだろうし逆に抱かなかったら不安にさせると思うよ腐れぺド。かっいいねぇ幼女誑かしたと思ったら今度はもっと幼い子ですか。2歳?半犯罪どころの騒ぎじゃないよ?死ねば?―――
ちょ…悪魔…助けて…
―――まぁぶっちゃけ同感。死ねリア充。…ところであんた俺らを見てるけど…声聞こえてたりする?―――
(そりゃそうだろ…頭の中の口論だし…)
―――あ。何か怪しいな…聞こえてるっぽい…やば光の精霊としてのイメージが…―――
どうした天使。急に汗なんかかいて…
―――そっち見てるってことは【天界語】も分かるんだな。ここらじゃ珍しく【悪魔族】の子を見つけてまだ若い奴に手ぇ出そうとして葛藤してそうだったからサブリミナル入れようと思ったが…―――
―――迂闊…まさか聞こえていて何も言わないとは…まさに策士…―――
何か戦慄してる。
―――ねぇねぇそこの格好いいお兄さん。ちょっと相談があるんだけど~―――
―――おいおいさっきまでの話聞いてて急にそんな猫なで声出したら…それ見ろメッチャ微妙な顔してるじゃねぇか―――
「…おい。平塚?手が止まってるけど飯食わねぇのか?」
「ん…あ…あぁ食うが…」
天使と悪魔の方を見ていたらいつの間にか手が止まっていたようだ。…っていつの間にか全員もう食べ終わってるし!
―――あーあーそんなに急いで食べると消化に悪いぞ~?ほら口元も汚れてるし―――
悪魔お前優しいな!
―――まさに動物のよう…2歳を本能のままに蹂躪し野生のままに生きる―――
天使は黙ってろ!
―――ところであなたに一つやって欲しいことが。それをしたら黙るので。はいその皿を持っている左手を横に上げて~―――
…まぁ黙るなら…
言われた通りにすると天使が悪魔のように邪悪に笑い悪魔が天使のように慈愛を込めた眼差しを向けた。
―――我この者と契約せん―――
―――やっちまったな―――
突然俺の左手が輝き、店内がざわめいた。
「お客様…店内での魔法の使用は…」
それに気付いた店側の人が注意してくるが俺は口の中にいっぱいにものを詰め込んでいるので何も言えない。
―――あぁ全くもって嘆かわしいこと…光の精霊たる私がこんな野獣と契約するなんて―――
(契約?)
―――契約も知らないなんて…無知無能の野獣はこれだから…―――
う…うっぜぇ…
―――あー兄ちゃん左手見てみな。―――
悪魔が言った通りに左手を見ると手の甲に何か蛍光マーカーの黄色で描かれたような三角形が二つ並んだ印が刻まれていた。
「平塚?何やってんだ急に…ってあ、何だその刺青…三角形2つって〈ザガズ〉でもイメージしたのか?」
俺がじっと左手を見ていると松田が何か言ってきた。
「〈ザガズ〉?」
―――きゃああぁああぁぁぁあぁ!し、信じらんない…―――
横で天使が何か喚いてるけど気にしない。
「あぁ…ってか知らないで入れたのか?ルーン文字で日とか昼とか光とかを表す…」
「よくそんなの知ってるな…」
「一般常識だろ。」
寧ろ知らないの?って顔の松田に腹が立つ。隣にいるファムにもう一回自我を崩壊させるように頼もうかと思ったがファムはいつの間にか寝ていた。
年の所為か…それとも肉体が幼いからなのかは知らない。
―――ちょっとアッ君!あんたもこれと契約してよ!―――
―――ヤダよ面倒くせぇ…―――
―――可愛い幼馴染の頼みじゃない!私一人でこいつとずっと一緒は嫌よ~!―――
…この天使と悪魔幼馴染なのか…
―――迂闊に仮契約とか結ぶ方が悪い…まぁまさか古代文字読まれるとか思ってもなかったが…―――
―――本契約になったじゃない!どうしてくれるのよ!―――
天使が急に矛先を俺に向けて来た。だからといってここで喋り出したら独り言と思われるしな。無視しよう。
「よし、飯も食い終わったし出るか。」
「そうだな~」
『美味しかった!』
―――うわぁ~こいつマジか…無視する気だ…―――
―――ちょっと聞きなさいって!―――
俺はそんな天使に軽く微笑み―――
―――全く、最初から大人しく話を聞いてればいいのよ。…さて、偉大なる精霊様と契約を結んでしまった愚かなる野獣の人間は―――
何か長そうだったので無視して会計を済ませて店から出た。