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特訓準備

 全てを話し終えて、俺はぐったりしていた。話を聞いていた二人は少し考える時間が欲しいと部屋を後にし、今は精霊と二人きりだ。


「ふぁ~……あによ?」

「……どうなると思う?」


 呑気に欠伸をしている精霊。俺の悩みなど無縁のようだが、話だけは面白そうに聞いていたので俺はそう尋ねてみる。

 すると彼女は頷いた。


「そうねー……まぁ、割とどうもならないと思うわよ?異世界っていう概念はまだこの世界にないし、輪廻転生はあるけど……まぁ、その程度ね。」

「……そうか。」

「気にし過ぎじゃない?自意識過剰?大体、この世界の魔力が多い人間……例えばあのフロワなんて子は多分200年位生きるし、その間の100年位は10代から20代の姿のまんまよ?あれね。文化が違うから気にする必要ないわ。」


 精霊はそう言って欠伸する。


「まー……そんなことより私ってさー光の精霊なんだよね……外が暗くなると眠くなる……部屋の中に篝火をいっぱい焚いてよ……守護義務あるんだから……」

「もういいぞ?」


 欠伸をした状態で精霊は固まった。気付けばそこに黒装束の青年が現れていたのだ。


「へ、へへーっ!」


 すぐさま平伏する精霊に一応といった形で跪く平塚。青年は少し首を傾げて呟いていた。


「……何しようと思ったんだっけ……あぁ、アレだわ。戦争のやり方を教えるのと後は……経済とかか。植物学も教えないといけないし……面倒だな。もう一人誰か連れて来るか……?いや、あいつらにしよう。」


 彼はそう言って何かを呼び出す。すると平塚が知覚できないナニカが天井に現れてそこから思わず毛細血管が破裂するほど興奮させるような美女たちが舞い降りてきた。


「とう!」

「呼ばれて参上!」

「例え着替え中でも即行参上!」

「「「「我らクワトロシスターズ!」」」」

「……俺がアホだと思われるから服着ろよ……あ、つーかお前らの所為で死んだじゃん……蘇生。」


 下着姿の彼女たちは一瞬で赤、青、緑、黄色を基調としたドレスに純白のレースがついたふりふりのエプロンを身に纏い平塚と精霊の蘇生を行う。


「さて……あ、顔を上げるな。死ぬから。」

「はい……」

「お前らは仮面を付けろ。」

「ふふふ。」

「気分は夜の淑女です。」


 目隠しのような仮面をつけて美女たちは青年の後ろに整列する。それを見届けて青年は平塚に顔を上げるのを許可して立たせた。


「さて、鍛えるが……期間は3ヶ月。それ以上の面倒は看れない。自分で優先順位を定めて俺に言え。」

「……取り敢えず女性を見て興奮し過ぎて死ぬと言うのがかなり屈辱的なのでそこからがいいかなと……」

「……しゃあない。おいウノ、あいつのファルス斬り落として来い。」

「待って!?」


 直接的過ぎる解決方法に思わず後退りする平塚。青年はそれを見て笑う。


「冗談だ。イスナ、性転換の準備。」

「そう言う問題じゃないですって!大体、同性のそこにいる精霊だって死にましたよねぇ!?」

「……ふむ。いい突っ込みだ。最近気に入らない奴は皆殺しにしてるから俺に突っ込み入れる奴っていないんだよね~……調子に乗る奴は殺すし、突っ込んだ後反省する奴は勝手に慣れ始めるし……」


 青年が頷く姿を見て平塚は引く。


「さて、その辺は面白くないから嫌だとだけ答えておこう。それと、条件を言い忘れてた。幸運補整があった時以上に頭を使わず成果を出せるようなことは教えない。ある程度、お前らの理解できる範囲から逸れた場合も教えない。」

「そ、創造神様!遅れて申し訳ありません!」


 青年が平塚に話をしていると精霊神がこの場に現れて平伏した。青年はその姿を面倒臭そうに見てお疲れとだけ言った後、平塚に視線を戻す。


「……まぁいいか。取り敢えず教えないこともあるってことだけ理解してろ。で、何を知りたい?」

「……自分が、この世界で生きて行くには足りないことを。」

「……へぇ。」


 青年は満足そうに笑う。


「幸運補整とか、思考停止してるだけの奴かと思ってたら……それなりの答えは出せたな。まぁ教えよう。アルバ。仮想空間。」

「できました。」

「……早いな。」


 空間に皹が入り、青年は中に消えて行く。その様子を呆然と見ていると中から青年が顔だけを出して言ってくる。


「来いよ。……あぁ、ついでにあのロリコンも連れて来い。一緒に面倒を看てやるから。」

「松田ですね。わかりました。」


 神にまでロリコン認定されてロリコンと呼ばれる同僚を持つのか……と変なことを考えた平塚だが、松田にとっては本望だろうと思いつつ平塚は足早に松田の下へと駆ける。




「おい!神様が来たぞ!」

「ロリ神様か!」

「ちぃっ……あと少しで陥落しそうなところでしたのに……!」


 ファムが何か言っていたが、ベッドから跳ね起きた松田はそれを無視して平塚に続く。


「ロリ神様!はぁはぁ……!」

「そっちは来てない。何か他の……思い出すと死ぬから思い出せないけど凄い美女たちが目だけ隠す仮面を持っている。」


 松田のテンションが目に見えて急降下した。


「……はぁ。命の恩神様だから行くけど……」

「お前、そんな顔して殺されたらどうするんだ。いや、殺されても多分生き返らせられて殺されるとかの地獄だぞ!」


 平塚は注意するが松田はそれでもと落ち込んだ顔をする。そうこうしている間に先程の部屋の前に付いた。


「でも、やっぱりロリ神様が……」

「いいか、入る前にその顔を何とかしろ。商談スイッチ入れるぞ。」

「はぁ……」


 スイッチを入れて入室をするとそこには黒いウサ耳を生やしたバニー幼女がそこにいた。


「ぁθdñryuδκπλςびゃuлавьebjâspojiakきひゃぁroguhkama!」

「何言ってんのか全く分かんない。」

「うへへへっへへへ……えへへへっへへふひゃひゃひゃひゃ!」


 松田の壊れた笑いにそのバニー幼女は一瞥だけくれると無視して罅割れた世界の中に声をかけて誰かを呼ぶ。


「…………サラサさん、お菓子……お兄と食べる……」

「今日は白餡仕立ての苺大福とカスタード仕立ての苺大福。そしてバニラアイスの苺大福です。後、あの方々はマイマスターの訓練生なので精神を壊したら治してください。」

「むぅ……シカタない……」


 二人を治すと黒兎幼女は中に跳ねて入って行く。そして正気に返った二人も罅割れた世界に入ると入口が閉じた。


「さて……ここでの3ヶ月は外での3分。じっくりみっちり基礎から叩きこんでやるよ。」

「ハニバニ、お手伝い……」

「平塚……俺、頑張るわ……今ならどんな辛い責め苦も頑張るよ……」


 穏やかな微笑を浮かべる松田。平塚は無言でビンタして正気に戻そうとするが戻らないので耳打ちする。


「ファムさんの、ロリババアの問題はどうするんだ……?」

「可愛いは、正義……」

「目の前のあの女の子だって100歳以上のお婆さんかもしれないんだぞ?」

「……ハニバニ、3億歳だけど……まだ幼生……ハニバニの種族は、もっといっぱい長生きしないと大人になれない……」


 こちらの声が聞こえているようで黒兎耳の幼女は説明してくれるが、完全に黒装束の青年を見て、頭を出しながら褒めてほしそうに言っているのでこちらに配慮したわけではないだろう。


「……マーベラス……これが、これこそが、俺の、理想郷アガルタだ……」

「ファムにチクるわ。黒兎耳の女の子に目移りしてたって。」

「ごめんなさい……」


 何かいい加減話を進めたいという青年の視線を感じ取った平塚は松田との話はここまでにして青年の方を見た。


「……始めようか。」


 そして特訓が始まる。




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