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ニード山脈北部地域戦 激突

 城門が開いた。そして中からは住民に扮していたファムの隠密部隊の精鋭たちが一気に出てくる。


「突撃だ!張りぼての城を突き崩せ!」


 俺の号令に意気の高さと兵の多さが相まって轟音となる兵たちの声が返って来て、全員が突撃して行った。


「……親方の建築技術は本当に凄いな……」


 目の前で崩れていく10メートル近い城壁を眺めつつ俺はそう呟いた。ベルフェナンド城は魔法陣がなければ水害に非常に弱い城だと言うことに入城してすぐに気付いた俺は親方に頼んで近くに別の城下町を作ってもらっていた。


 その際に、石材はある程度……崩れない程度にベルフェナンド城の物を持って来ておいたのだ。


 その所為で現在のように見かけは城として成立していても攻められると脆い張りぼての城が出来上がった。


「さて、様々な情報の攪乱は済ませてあるが……信じた偽書は内政官閣下の物だけなんだよなぁ……」

「お頭ぁ……行かねーならアタシらが全部喰っちまうぜぇ?」

「部下の手柄を俺が盗るわけにもいかないだろ。」


 賊のような言い方をしてくるリーゼにそう返しつつ俺は大河の上流で堰き止めていた水を流す任務をしている松田の帰りを待つ。


「……ん?奴さんの方から来たみたいだぜ?」

「……前線の一部が押し戻されてるな……勢いを盛り返されても厄介だ。リーゼ行けるか?」

「……アレは、魔導師だね……しかも手練れと見える。」


 戦場を観察してリーゼは平塚の言葉に答えず、そう応じた。その言葉を聞いて平塚は難しい顔をして言った。


「……無理か?」


 リーゼの言葉と声音から平塚がそう思ったのも当然のことだろうが、リーゼは獰猛に笑って見せた。


「はっ!統率の取れてないただの魔術師の突撃なんざ獣と一緒だよ。引き連れてる軍を狙ってくる。隊長は包囲した獣をいなしてこっちの魔導師さんが来るまで遠巻きにおもてなしを頼んだよ!行くよ野郎ども!」


 リーゼはそう言い残して平塚のいる場所から愛馬である青色の毛並みをした馬に乗って猛然と駆け出して行った。















 前線―――


「土人どもがぁあぁぁああぁぁっ!」

「魔導師だ!相手にせず逃げるぞ!」

「敵が退くぞ!シャマール様に続け!」


 シャマールは自らに強力な補助魔術を掛けてクリーク軍に対して万夫不当の勇を振るっていた。その姿はまさに嵐。人間では到底扱うことが出来なさそうな巨大な金属の鞭を振るって血煙を巻きあげている。


 クリーク軍はなるべくシャマールから逃れながら周囲の兵を削ろうとするがその判断を下した物はほぼ例外なくシャマールによって破砕されていく。


「やれやれ……土人なのはどっちのことなのか……」


 その様子を見ながら前線を指揮していたジャックは溜息をつく。そんな彼に付いているのはクリーク王国第2王女のマゼンダだ。


「強そうだな……私でも及ばないだろうが……それでも、兵たちを鼓舞することは出来よう。出ようか?」


 ジャックは血気に逸る王女を見て苦笑する。


「いえいえ……無駄死には困りますから……減俸されるの嫌ですし。あの獣みたいな彼には近付きませんよ。彼は別の隊の誰かに任せましょう。」


 ジャックはそう言って欠伸をした。だが、その目は細くなっており、敵将の上級魔導師であるシャマールがいる付近を見据えている。


(……一番近いのはゴンザレスさんの陣営か。まぁあの人なら何とかならなくもないかもしれなさそうだしいいかな……それよりこの化け物姫さんどうしよう……正直もの凄い邪魔なんだけど……)


 王族である自分が勇を発せずそれでもいいのだろうか……などと呟いているマゼンダを見てジャックは内心で溜息をつく。そうしていると本陣の方で動きがあったようだ。


「……あの旗印は、リーゼ殿か……我らも出撃を……」

「良く見えますねぇ……リーゼさんか……ん~……じゃあ僕らも動きますか。ここは戦場にて、この場の統帥権は私に任されていますのでマゼンダ様。言うことは聞いてもらいますよ?」

「うむ。それでどこに突撃するのだ!?」


 興奮気味になっているマゼンダにジャックはこれは自分も出陣しなければかじ取りが効かなくなりそうだなと思いつつ命を下す。


「旧ベルフェナンド城から出撃し、現在突出している部隊の後方を徹底的に叩きます。ですが決して深追いはしません。いいですか?」

「うむ。初戦場にて作法も分からぬが……マゼンダ・ミゼリコルド・クリークの名に懸けて!我が武をフラン殿に捧げよう!」


 ジャックはあんまり捧げられても困るんだけどなぁ……と少しだけ思いながら部隊に突撃の命令を下した。












「あん、もうやぁねぇ……」


 ゴンザレスは本陣と旧ベルフェナンド城を結ぶ一直線上で巨大な戦斧で敵兵の命を刈り取りながらそう漏らした。


 正直、血に塗れながら目をギラつかせ、顎鬚を蓄えた筋骨隆々の大男が微妙に高い声を出していることにも怯えるが、実力がそれ以上に恐ろしい。


「伝令のマーズルちゃんはまだかしら?これ以上遅かったら罰ゲームなんだからね?」


 ゴンザレスの近衛兵がマーズルに同情しながら敵兵を刈って行く。彼らはゴンザレスに幼少期から鍛え上げられてきた中級魔導程度なら使えるエリート達だ。


 安心できることに手は出されていない。


「ご、ごんざ「あ゛ぁ゛ん゛?」マリーちゃん様!敵将シャマールが既に目前に迫っております!」

「マーズちゃん。あんたお仕置き決定ね?……そう。マツダ様は間に合わないわよねぇ……仕方ないわ。シャマールには自分からマツダ様に会いに行かせましょう。挑発の準備よ!」


 ゴンザレスはそう言ってシャマールの方へと自ら出て行った。



「そこのいい男!あたしと勝負よ!」

「あ゛ぁ?……名のある将と見た……ガストーの手向けに首を置いて行け!」

「いやん!そこまでがっつかれるとは思ってなかったわぁ~あたしがそんなにお好みなのぉ?」


 馬上でくねくねしながらウィンクをしてくるゴンザレスに唯でさえ激昂状態にあるシャマールはすぐにブチ切れた。


「死ね化物が!【ライトニング】!」

「あら激しいプレイがお好み?でもだぁめ。初めての時は優しく、ね?」


 中級魔導師の面々に守られながら一々癪に障る言い方をしてくるゴンザレスにシャマールの怒りが更に上がるが彼はそこで大きく息をついた。


「ふ、ぅ……兵が伸び始めているな……緩めねば。」

「あら、もう満足したの?見かけによらず《自主規制》な《自主規制》野郎ね……《自主規制》だから《自主規制》なのよ。《自主規制・以下しばらく略》……な粗チン短小ゴミ屑真性包茎のEDしかいない部隊なのねぇ……仕方ないわ。あたしがその疲れを癒してあげる!ソフトな《自主規制》からハード……いや、アブノーマルな《自主規制》までぜ~んぶあたしにお任せ!」


 ゴンザレスはシャマールの部隊にウィンクをして襲い掛かる。シャマールは勢いを緩めようとしたところに敵が来たのでそのままの勢いで突っ込ませることに決めた。


「好き放題言わせておけば!」

「うふふ~ようやくその気になったのねぇ?捕まえて御覧なさ~い♪オォッホホホホホホホ!」


 ゴンザレスは何を言っていたとしても、例え自分が死んだとしても松田がいる方向へと撤退をするように厳命していた自らの部隊と共に撤退を開始した。





 位置情報です。縮尺はごめんなさい……

  

          松田の特別工作隊

 山・森       戦場に合流中

_____       →     凸 →    

~~~~~~~~~~~~          ↓

~~~~~~~~~~~~

         _____             誘導中  

        | 水没  | スゥド軍       ← ゴンザレス

 | 大  ( | 城   |  突撃中 →      ↑凸

 | 河    崩     門 凸凸凸凸シャマール      本陣

 |      壊     |   凸凸凸      リーゼ

 (        ――――       移動中   ←凸  移動中

  ~~~~         ファム凸→   ←凸  ジャック

  ~~~~~      隠密部隊凸 合流中

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