戦略会議
お久し振りの登場なので
元帥 ファンテ
見た目は普通の農民。だが、記憶力と周囲を見る能力に秀でている。小数を操るよりも全体の指揮が得意。臆病ながらも大胆な行動を取るという相反するいい性格をしている。
将軍 フィロド
狼人間。少数での電撃作戦の方が得意。少し直情気味。
副将:ド・マーゾ・ベルフェナンド
見た目は高貴で美形の金髪碧眼貴族、素顔はドマゾ。 オールマイティ。
リーゼ・フォン・ベルベロッサ
元傭兵団の首領。赤銅色の短髪で、少し丸顔。キツメの顔立ちの美人。大柄でかなり胸が大きい。
粗野、酒乱、淫乱。 得意兵種は突撃兵。
ジャック・フラン
全体的に色素が薄い。極々薄い鶯色をしたぼさぼさの髪をしており、顔は基本的に眠そう。男性にしては小柄。
大食漢、効率厨、サボり癖アリ。寝坊助。 得意兵種は軽装兵。
ゲンリュウ・カシザワ
20代半ば近いのに日本にいる近所のすこ~しやんちゃめな中学生みたいな感じの顔立ちというかなりの童顔。髪は金と茶色の中間みたいな色で毛先が黒い。
根はいい人。血を見ると凶暴化。 得意兵種は魔導兵。
ゴルゴザン・ゴンザレス
ボディービルダー。金髪、長い髪、歴戦の強者を思わせる傷だらけの顔。強大なパワーを持っていそうな褐色の筋肉。
オカマ。マリーちゃんと呼ばれたい。 得意兵種は重装兵。
親方
年齢不詳。本名不詳。禿げ気味。それを隠すようにスキンヘッド。髭が濃かったらしく、髭を剃った後の青いところが目立つ。
江戸っ子気質。 得意兵種は工作兵。
書類での準備が終わったところで平塚と松田は一度屋敷に帰り、未だ転がされていた王様の近くに大きな落とし穴のような物が作られていたのを見た。しかし眠かったので無視した後、翌日の早くから出勤する。
「……まぁ、徹夜してからが本番だしな。」
「寝れた分だけマシだな。それに、結構休んでたし。」
縛られたままで汚物もそのまま垂れ流しになっている王を無視して二人はフロワやディア、ファムを伴って馬車に乗って王宮に出て行った。
「では、これより対スゥド国の作戦会議を行う。」
平塚は彼の部下を集めて巨大な兵棋(兵と将を種類別に形や色を変えて表す駒を地図上に置いたもの)が揃えられている部屋で会議を始めた。
今回参加しているのは、松田、ディア、ベルフェナンド、リーゼ、ジャック、ゴンザレスそれと何故かマゼンダ王女だ。
ファンテは北の動きを監視するために北に駐在しており、フィロドは先行して考えられるスゥド軍の侵略ルートへと向かっている。また、カシザワは今回の騒動で混乱した地方などを回っている状態だ。
それはさておき、ディアの視線を感じた平塚は目が合うと顔を顰められて欠伸された後、マゼンダにも分かるように今回の戦争の目的などからおさらいを開始した。
「まず、戦略から話すと目標は過去の山越えの悪夢を思い知らさせ、二度と攻め込んでこないようにすることだ。」
「まぁ、要するにぶっ飛ばせばいいんでしょう?」
リーゼは敵の兵棋を表す赤い駒を自身の兵種で弾きながらそう言った。それをゴンザレスが窘める。
「もう。真面目にやらないと……それでヒラツカち……元帥。どうなさいますのかしら?」
「……まず、前提の再確認から行くぞ?」
ちゃん呼びをされかかってイラッと来たが何とか言い直したゴンザレスには鋭い一瞥をくれてやるだけで話を進める。
「山を越えて来るスゥド軍は軍備の進行から考えておそらく2週間後にこちら側の山の麓へと進んでくると思われる。数は2万。厳しい山越えの為、兵種は主に軽装歩兵だと思われる。ただし、予定より遅く来た場合はおそらく道を作ってから来ると考えられるから騎兵や重装兵などが考えられる。」
だが、今回はその線は捨てていいだろう。平塚達がいない間主導権を握っていた貴族のモーガラッハが貴族院の一人がスゥド国と繋がっており、その者から巻き上げたと自称している書状にはクリーク王国の内部が混乱している為、電撃作戦が有効だと伝えていたからだ。
(……まぁ、内政官閣下自身が大分怪しいが……松田の魔力鑑定じゃおそらく正しいスゥド国のインクで書かれた物だって言ってたから内容自体には誤りはないだろうな……)
他にも泳がせていたり、埋伏の毒としてわざと向こうと繋がりを持たせている者たちへとスゥド国から命じられた内乱の指示との情報も一致している。
「密偵が帰って来るにはもう少し時間がかかりそうだ。なので、兵種や兵站などの詳細はまだ不明だが、追って詳しい情報は来るだろう。」
次にクリーク王国の状態についての説明を開始する。
「クリーク王国の動員可能な兵数は最大でおよそ1万5000。」
旧エスト国とヴォラス国を併呑したお蔭で最大兵力は2万を超しているが内部の状況を鑑みるに最低でも5000はここに残しておきたいのでこの数になっている。
「今から移動可能な兵種は軽装歩兵1万。騎馬兵2000、重装歩兵が1000、工作兵が800、輜重兵が600、戦車が400、魔導兵が200だ。」
輜重兵が少ない気もするが、基本的に工作兵も手が空いている時はそちらに回る上、糧秣は今回の騒動でも真面目に働いていた貴族との連絡を密接に行うため問題はない。
「そして、飢饉への備えとして備蓄されていた物が残っている為、こちらへの兵糧詰めは効かないと思ってもらって構わない。」
その辺の大前提を語ったところで平塚は戦略から入る。
「まず、敵兵は主に軽装歩兵だと仮定して話を進める。少し前まであの辺りは敵地だったため、地形等は既に知られているだろう。」
兵棋の下にあるニード山脈とその付近を流れる大河の図、そしてその横にある考えられる敵軍の行軍ルートとその付近の内、隠れやすい地形などを示してある図を指してそこから駒を退かした。
「だから伏兵はしない。今回は元ベルフェナンド領に立て籠もる。」
平塚はそう言いつつ松田に目配せして術で「新しい」と文字を浮かせる。
あそこの城は城下町と一体の城塞都市に近い物だったので以前、水攻めが可能だった。だが、軍事拠点として川辺から少し離れた所に魔導師と親方の軍を使って新しく城を作り直しているのだ。
なのでこの場にいる面々には新しいの文字だけで最近作り直した方の城だということが伝わる。しかし、王女が平塚の口答ではなく急に松田の文字になったことに対して疑問を抱く。
「?何故わざわざ……?」
「第2王女殿下。申し訳ないがこれは軍議ですので軍部の者にお任せいただいて発言は控えて頂きたい。殿下の言葉で既に決まった軍略が揺らいでしまう可能性がございますので……一応ご説明させていただくのであれば『高陵勿向、背丘勿逆、佯北勿從、鋭卒勿攻、餌兵勿食、歸師勿遏、圍師必闕、窮寇勿迫。』と言う言葉があります。」
マゼンダの言葉を遮るかのように平塚が勢いよく喋り始め、そこまで言ったところでディアが可愛らしくくしゃみをして頷いた。
「……第2王女殿下、申し訳ない。一応申し上げておくと、先程の言葉の意味は高い所にいる相手に攻撃せず、丘を背にした相手に逆らわず、わざと逃げる相手の行動には乗らず、士気旺盛な相手と争わず、おとりに飛びつかず、帰国する相手の進路を塞がず、包囲しても逃げ道を開けておき、必死な情況に追い込んだ相手に攻撃を加えない。と言う意味です。」
「そうですか。……ただ、私が訊きたいのはそうではなく何故……もしや、盗聴されていたと?」
可能性として挙げられる物をマゼンダは小さな声で答え、この場にいた全員が頷いた。
「はい。幸いにも盗聴のようでしたので偽情報を持って帰ってもらいましたが、第2王女殿下がいらした頃には既に盗聴が始まっていたようでしたので……」
盗み見までしていればこの場で始末する手はずだが、ディアの合図でそうではないと分かっていたのでそのまま続けた。
「ふむ……それは、私の方が失礼した。父に嫁ぐことだけ考えておればよいと後宮に閉じ込められておったのでな……興味本位で急に来てしまったのだ。」
さっきも聞いたと思ったが取引先の娘さんに会ったとでも思って曖昧な笑みと共に流して軍議を続ける。
「では、本会議を始めさせてもらいます。まず旧ベルフェナンド城まで一線陣地を複数築き、陣前消耗を狙います。また、戦い慣れていないと思わせるために伏兵を山の中に忍ばせて……」
この後の本会議は2時間に渡って行われた。




