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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
地盤固め
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ロジスティックス

 王宮に戻るとすぐに任命式が行われ、そこで現王から正式な形で謝罪が行われた。


 フロワの兄であるタイラー・ミゼリコルド・クリーク王は任命を終えた後すぐに全権を平塚に委託してその場から退場し、平塚と松田は首を傾げながら外に出た。


「……あの人が今回のクーデター……のようなモノを実行した人なのか?……の割には何か、こう……覇気がなかったというか……」

「まぁ、うん。あれならまだマゼンダさんだっけ?ウチまで来てた姫騎士さん。そっちの方がまだ分かるよな……」


 一応、前に与えられた執務室で仕事をしながら二人はそんな会話をする。二人がいなくなっていた間の書類は積もりに積もっていると言うほどではなかったがそれでもかなりあるので顔を上げずに会話を続ける。


「この終わってる書類って誰がやってたんだろうな?文官たち皆逃げて来てたよな?」

「……内政官閣下の派閥だろ。多分。それより早い所現在までの決算を出して兵庫寮にどれだけ動員できるか確認しないと。……まぁ最悪の場合は無理にでも出るけど目安は欲しい。」

「今日中に終わるだろこの程度。」


 ブラック企業に勤めていた時から考えると目の前の作業なんて楽な物だ。確かにパソコンなどの機器がない分大変だが、パソコンがあるからと言う理由で無茶な量させられるよりも何十倍も楽である。


「……ここで働いてるので良いのはさ、早く終わらせたらそれで終わるってことだよなぁ……あそこだと早く終わらせたら他の奴のまで……」

「やめろ。思い出すとイライラしてくる。……あ~パソコン使えない全部手書きの無能上司のこと思い出したじゃねぇか……データ入力全部やり直しとか……」


 心が荒む話題はそこで打ち切ることにしてしばらく黙って作業を行っていると松田の方にお目当ての書類があったようだ。


「……うわ、貴族院の奴らよくこれだけの短時間でこんなに堕落して……」

「ん?どんなのだ?」


 松田の声に平塚が反応して席を立ち、顔を寄せて資料を見る。


「……まぁ、ムカつくが……でも何か微笑ましいな。誤魔化した借用書の使用用途が賄賂とか装飾品じゃなくて飲食に一番費用掛けてる辺り……」

「いや、まぁ……分からんでもないが……小心者すぎるだろ。厳罰は止めておこうかな。勝手に怯えて何も出来なさそうな人たちだし……にしても、そんなに金に困るような経営してないんだけどなぁ……」


 平塚がそう漏らすと松田は別の書類を出して平塚に見せながら説明した。


「何か俺らが去った後王家御用商人が動いたらしい。『商人の道は利のみに非ず義を重んじてこそ正しき商い』とか言って去年の麦を大特価で売って、浮いたお金を募金しませんか?という店内キャンペーンを行ってお金を溜めて王家に直々に上奏したんだって。」

「……在庫売り切りの口実になっただけじゃね?まぁいいんだが……」


 平塚は自分の席に戻って書類を片付け始める。しばらくするとしばらく休んでいた後に働くことによる倦怠感が体を襲ってきた。


「……エクセル欲しいな……そしたらもっと楽なのに。」

「あー……何か通貨価値が地球のと混ざって来た。もういいか、適当で。」

「お前の適当は本当に適当な値だからな~適当でいいぞ。」


 休みの間に手にしたフレッシュ感を徐々に失い始める二人。彼らを監視する人物は特にいないのだが社畜として長年生きていたので沁み付いた同じ体勢で連続した作業というものを思考停止して続けている。


「……ご主人様、ディアお茶持って来たよ?まっつんも、休憩したら?」

「あ、どうもです。」

「……おい、ここは会社じゃねぇぞ?」


 しばらくしてディアがお茶を持って来た時に二人はようやく7時間ぶりに休憩に入った。


「……おい、松田~こっちは半分は終わったぞ。」

「俺はあと3分の1だな。」

「ディア終わった。……ご主人様の手伝う?」


 進捗を話しつつ休憩を入れると機械化していた心身が人間に戻る。そんな状態に戻った平塚はディアを見て首を傾げた。


「……ん~いいのか?」

「うん。」


 平塚は何となく遠い目になった。取り敢えず頭を撫でると喜ぶので撫でておいて給料から一部ディアに渡すことを決めて手伝ってもらうことにする。

 その様子を眺めながら松田は少しニヤニヤした後、口を開く。


「いいな「秋様、こちらの書類は私の方でやっておきますね?」……ありがとうございます。」


 だが、天井からファムが降って来て途中で会話を終えることになった。天井から舞い降りてきた彼女は松田の書類の一部を持つとじっと目で松田に何かを訴える。


「……あ、ありがとう?」


 さっき言ってなかったか?と思いつつ松田は再度繰り返すがファムはいえいえとだけ答えて再び目で何か訴え、頭を少し出してきた。


「あ、あぁ……そういうことか……」


 そこでようやく松田も気付いてファムの頭を平塚同様に撫でた。そしてふと横を見ると平塚と目が合う。


「…………」

「…………」


 無言の時がしばし流れた後、満足したらしい女性二人が仕事に取り掛かるのを皮切りに二人も書類整理に戻った。



 そして、その日中に書類整備による通達と軍備の兵站は整えられ、後は現場とのすり合わせだけになった。




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