王宮に戻る
「で、どうしようか。」
「……どうするって……どうするんだ?」
平塚と松田はスゥド国からの侵略に対して立ち上がったはいいが少し困っていた。
「……現王朝がある限り追放令とかどうしたらいいんだ?」
「さぁ?内政官の何とかさんが何とかしてくれるかもしれないが……あまり借りを作っていいタイプの相手じゃなさそうだしな……」
周囲や本人たちにやる気があっても現状、平塚達を追放した勢力の内、貴族院たちはほぼ権力を剥奪されたものの、王は健在で平塚達を追放している。その状況で動けば実情はどうであれ謀反と見做されるのだ。
「……ん~……じゃあいっそ俺らで取った部分で本当に独立するとか……」
「板挟みに遭うだろ……と言うより、外五月蠅いな。」
考え事もまとめられないと思いつつふと外のことを話題に挙げると急に外が活気づいた。そしてとうとうインターフォンが鳴らされる。
「……失礼いたします!【光の英雄】様ですね!?私はクリーク王国第2王女のマゼンダ・ミゼリコルド・クリークと申します!」
「……インターフォン……」
インターフォンが鳴らされた後、それが全く意味をなさない位の良く通る大きく、凛とした声が外から聞こえてきた。
「この度は、不肖の父が誠に申し訳ありません!今、縛ってここに転がしております!」
「……は?」
聞こえてきたのだが、少し理解が出来る内容から逸脱していたので平塚は取り敢えず、松田と顔を見合わせた。近くでフロワの溜息が聞こえる。
「……マゼンダ姉様……これはまた……面倒な……」
「何だ?どうしたんだ……?」
「……真面目な人なんだけど、行き過ぎと言うか……多分、会えば分かるわ。」
フロワの溜息の意味が気になるが取り敢えず気になるワードが幾つかあったので危険かもしれないから松田と俺だけ外に出ると言い残して外に出る。するといつか見たとても見覚えのある人物が縄で縛られて地面に転がされていた。
「……え?王様?」
「くっ……やはり国を乗っ取るつもりガハッ!」
「え?」
王が呻きながら平塚を睨みあげて言い募ろうとしてその上に筋骨隆々な……だが無駄毛の一切ない足が置かれた。
「ゴンザ……じゃないよな。」
平塚は真っ先に見えたもののそれとなく視界から外していた……ドレス姿の筋骨逞しい誰かを見上げた。
「おや、恥ずかしい。私としたことがはしたない真似を……」
そう言ってドレスの裾を押さえる誰か。付いて来ていた松田が屋敷に戻ろうとするのを抑えて小声でこの場にいるように頼み込み二人はその誰かと対峙する。
だが、その正体は分かっている。先程の凛とした声の持ち主なのだ。
「改めまして、マゼンダ・ミゼリコルド・クリークです。……お二方とは初対面ですね。一人の武人として、そして王族としてお会いしたかったです。」
「あ、あぁ……」
分厚く、大きい手が平塚の手を握る。結構、痛かったが我慢して握手を受けた後、少し離れて松田に耳打ちする。
「……何だろう、笑えばいいのか?松田どうしたらいい?お前高校時代モテてたよな?女性の扱いには慣れてるだろ?何とかしてくれないか?」
平塚は超小声で松田にそう尋ねると松田はきりっとした顔で頷いた。
「情報収集してくる。」
松田はそう言って周囲の兵たちから話を聞きに行った。瞬時の出来事に取り残される平塚。結果的に残された代表二人、平塚とマゼンダは二人で話し合いをすることになる。
「ふむ。流石【光の英雄】様ですな。握手をすれば力量を測る目安が得られるのですが……かなり、強い。私では歯が立たなさそうです。」
「アハハ……マゼンダ様もかなり鍛えているようで……」
笑うしかない。こちらもそう言ったことは出来るが、一介の姫に求められている物とは思えない技能を持っているのだ。前世のブラック企業に勤めて緩くなった体の平塚であればいかに体が技を覚えていても、秒殺されるだろう。
(……まさに姫騎士。漫画とかゲームとか……あんなものじゃない。これがある意味史実に基づく正しい姫騎士だ……ファンタジーなんだからそこはもう少しどうにかしてほしかったと思わないでもないが……)
そんな内心の平塚と違い、マゼンダは頷いて平塚の鍛えたという言葉に対して満更でもなさそうに頷く。
「えぇ。鍛えております。生憎、父は女は屋敷の中で結婚するだけの存在として戦場へと出させてもらったことはないですが……そこらの兵より遥かに強いと思ってもらって構いません。」
「はは……」
上腕二頭筋をアピールしてくるマゼンダ。それを見ても平塚は乾いた笑みを浮かべるしかない。そんな場面にフロワが危険はないと見做したディアとファムを伴って現れる。
「おぉ、フロワ!」
「マゼンダお姉様……その、クリーク王を足蹴にするのは……」
「今の王は愚父ではないぞ?タイラー兄上だ。」
マゼンダの一言にフロワは頭を抱えて蹲った。
「……なら、この計画はネイトお姉様立案ですね……」
「その通り。ネイトがこのままでは国が亡びるから今こそ立つべきだと姉上とか私たち皆を説得してだな!……そうだそうだ。【光の英雄】にして大元帥ヒラツカ閣下。そして【黄昏の大魔導師】にして大魔導総監マツダ閣下。前王の非礼を詫び、ここに謝罪の意を示しますので我が国にお戻り願いたい。」
用件を思い出したマゼンダがいきなり平塚の前で跪くと周囲の兵士たち全員がこの国での最敬礼のポーズを取り、平塚達の前に跪いた。
(……王の上で……)
そんな中、マゼンダは元王とでも言うべき人物の上に足を置いたまま跪いており、その100キロ近そうな巨体の足に踏みつけられている元王は非常に可哀想なことになっていた。
「……引き受けさせていただきましょう。」
元王の呻き声以外は聞こえない沈黙の中ですでに出ていた結論を平塚が述べると囲んでいた兵たちから歓声が上がる。
「皆の者!ここに天下の鬼才!ヒラツカ閣下と深淵の鬼謀を持つマツダ閣下が復帰された!スゥド国との戦は勝ったも同然!皆の者!戻って戦の準備だ!」
意気軒昂と言った声と共に波が引くように人々は去った。残されたのは平塚達と縛られてうち捨てられた前王だけだ。
「……何か、変なあだ名が増えてたな。」
「……あぁ。」
戦いの前から二人は疲れた声を出し、それはそれとして屋敷に繋いである馬を駆って王宮へと戻って行った。




