晴耕雨読できずに暇
平塚は念願のマイホーム(巨大)を手に入れて健康的な生活……時々女性関係において不健康な物が見られた(最後までは行ってない)が基本的にはそんな生活を行っていた。
ただ、暇だった。思いの外、やることが無くて暇だった。
歴史が浅く、神話などの物語はあるものの口伝であり、書物は基本的に記録しかないため、読書できるほどの本はない。
歌も、どちらかと言えば歌物語と言った感じのモノしかない。
口伝を聞いても既に王国で編纂した物であるため飽きている。
ゲームなどあるわけもない。
体を動かすのも限度がある。やり過ぎは体を壊すので決められたメニューをこなす以上のことはしない。
魔法は使えない。
外出は基本監視付きの為、羽目を外すことなどできない。
「…………成程……いざ、働かなくてもいいとなると……ものっそい暇だな……」
「膨大な金があることだし、商人に娯楽作らせるか?劇とか」
暇だったのでその件について松田と喋る。松田は劇や創作物をつくろうと提案してきたが平塚は難色を示す。
「……多分、自意識過剰じゃなくて俺らが主人公にされる……」
「……土産物とか作られてるしな……つーか、戯曲家の中にはもうそう言う話作った奴とかいそうだな……」
「ありますよ?」
どこかで警護をしていたらしいファムが突然現れると二人に小さな木簡で作られた物語を見せて……二人は題名だけでもうお腹いっぱいになった。
「……腐ってやがる……早過ぎるだろ……」
「どの世界のどの時代にも一定数居るんだな……って、何でファムがそんなの持って!?いねぇ!」
小1時間ほど話し合いをしたい内容だと思われるモノを見せられて二人は騒ぐがそこには既にファムはいなかった。代わりに間違えましたという音声と別の本が残る。
「……松田。」
「おう。」
後で何とかするように言っておいて、平塚は取り敢えず目の前にある本を手にとって読んでみる。そうしていると横からディアがやって来た。
「あ、ご主人様の本だ。」
「ディア、知ってるのか?」
「うん。」
物語の内容は地球でもよく見られた英雄譚のような物らしい。とある村に生まれた幼馴染の松田、ファム、そしてディアと平塚が精霊の加護を受けて王国を救い、悪の王国、スゥド国を倒して平塚が英雄になり、お姫様と結婚してめでたしめでたしと言う本だった。
「……あながち間違いと言うわけではないからな……」
「道中に色々誇張とかあったけどな……もしかしたら英霊とかになった人たちが日本で全員女体化してる本を見た時の気分ってこんな感じなのかもな……」
取り敢えず、読んでいて背中が痒くなるものだった。読み終えた後にディアがその本を持ってどこかに行ってから二人は顔を見合わせる。
「…………あれは……あんまり読みたくないな……別の暇つぶしを考えよう。」
「こうなりゃ執筆でもするか?ある程度まで地球の話を原作通りに書いて、それだけだと俺らの自己満足になるだけであんまり面白くないからそこからどうするかはアレンジしてもらおう。」
「いや、睨まれるだろ……」
確かに楽しそうだが変なことをしていちゃもんつけられても困る。松田はしばらく宙を見て諳んじた。
「……トランプとか、オセロ、あと囲碁と将棋……チェスに麻雀。」
「作らせるか?」
「でも多分飽きるよなぁ……俺らそこまでそう言うの好きじゃなかったし……研究でもするか?大学の続きでも……」
「戦史だよ。続けたら戦争だろ。」
2人揃って溜息をつく。
「じゃあもう仕方ない。穢れ無き純白の乙女の蕾たちを観察しよう。」
「黙れ、それは許さん。」
「じゃあ何があるんだ?言ってみろよ。お前は良いよなぁ?可愛い幼女が身の回りに居てよ……最近じゃ俺が来るだけで奥の部屋から出て来ねぇし……」
「お前が来る度に暴走するからだろ……初対面から距離が開いてるのお前だけだからな……?」
フロワは城の中で氷の姫と呼ばれていたころに比べて格段に穏やかになった。ただ、氷云々以前に松田だけは避けている。
「愛が重すぎたのか……」
「……取り敢えず、幼女と呼ぶのは止めた方がいいぞ?変態っぽいし……」
「何で急に褒めたんだ?」
「……手遅れか。」
松田のことは諦めるとしても暇を何とかすることは諦められないので平塚は空を仰いで考える。
「盆栽……でもするか?」
「食獣植物混入事件をもう忘れたのか?」
松田の言葉に平塚は顔を顰める。食獣植物混入事件とは、米の種をノームから貰った後、品種改良をしようとして畑に食獣植物が芽生えて指先が少し大変なことになったのだ。
「異世界の植物は知識なしに手を出すもんじゃないしな……」
あれから米に関しては畑のプロに大まかなやり方を直接指導してその後は普通の農作業でお願いしますと丸投げするようになった。
「じゃあ何するんだよ……」
「もう、寝るか?畑仕事して、体鍛えて……お前はアレだろ?夜は使用人たちと運動会だし……」
「あ?そんなもんしてねぇよ。フロワの目がマジで怖いからな?寝室に飲み物を後で持って来るように頼んでおいただけなのに現場を目撃した時の冷気とか本気で身が凍るかと思った……」
平塚が思い出すように身震いすると松田も同情の声を上げる。
「俺もだ……興味ないと言っているのに、少し長めに話をすると気付いたら背後でニコニコしてる……そして言うんだ。『仲が良い事は大事です。側室も持たれていいですよ?……ただ、その回数以上、私としてくださいね?』って……」
平塚はなんだこいつ自慢か?と見るが、松田は普通に怯えていたのでその線は捨てて一応同情しておく。
「あー……何しよう。」
「……取り敢えず、やることないし……トランプとかボードゲームのボードと駒の開発、やって貰っておくか……」
この後身内だけでトランプ大会をやった。何気に好評だった。




