内政・その3 農業
「そう言えば、この人誰だ?」
「初めまして、私はユーク王国第3王女のエリザベート・ルルベ・ユークと申します。その魔力量【黄昏の魔術師】様とお見受けしますが…」
松田が思いっきり嫌そうな顔をした傍で俺は平常心を取り戻して目の前の美人さんを何とも思わないようにしていた。
…いや、大人になればこんなもんどうでもいいとか思えてたんだが…やっぱ精神が体に引き摺られてるんだろうな……
「初めましてユーク第3王女殿下。知らずのご無礼をお許しください。何分、任務中ですから。」
「あら、お気になさらず。……それで、【光の英雄】殿。ここで立ち話も何ですし少し別の場所に……」
「失礼ながら現在、私は任務中ですので……今と言う訳にはいきません。宮殿の方へ向かわれていただけると…」
「なら任務先へ同行させていただきますわよ?」
「それは困ります。」
冷静なればまぁ他国の人間だもん。企業秘密なんて喋れるわけがない。いや国家機密か。
こっちが根っこが膨らんでる草を豊かな草原で探しまくって折角見つけ、松田の魔法で選んだそれっぽいのから厳選して選んで実験した成果をホイホイあげるなんてことはしない。
「……釣れないお方ですね。」
「えぇ。面白味のない者で申し訳ありません。宮殿には私より機知に富まれた方がおられると思うのでユーク第3王女殿下とお話が合う方もおられると……」
「むぅ……仕方ありません。ではごきげんよう。」
可愛らしくむくれるとエリザベートさんは身を翻してくれた。俺らはそれを見送って馬車へと乗り込んですぐさま移動する。
「……?何か違和感が…まぁそんなことより天使様。今回こそその愛くるしき小さなおしろばっ!」
揺れる馬車で尻が痛くなるのを防ぐと言う名の建前の下に松田がいつものようにフロワを自分の上に座らせようとして氷柱を撃たれるとフロワは俺の上に座る。
「はぁ……」
そして何か自分の体を探って溜息をついていたが俺的にはもう頭の中が農業と畜産でいっぱいだった。
(あぁ……根こぶ病みたいな病気の植物とか間違えて入れた鉢の植物たちよ君らの犠牲は無駄じゃなかったと思えるようなそんな世界が見られるのだろうか。というより俺は米が食いたい。何とかならないものか……ノーフォーク農業と保護助成金で農業は育つだろうが……小麦でもパンを食べれるからいいんだが…やっぱ米くいたいよなぁ……何を品種改良すればいいんだろうか。)
松田の呪殺せんばかりの視線に晒されながら馬車は農民が逃げて行った見捨てられた土地、現在俺たちが試験段階で運用している場所へと進んで行った。
馬車が向かう先には黄金色の大地が広がっていた。そして王宮の馬車を見た実験の手伝いをしていた農家の人々が俺たちの視界に入る前から平伏していた。
「この度はまっこと、ありがとうございます。儂らもこれで人並みな生活ができるのでございます。」
俺らがその場所に到着すると平伏していた男が下手な敬語で俺らに感謝の念を伝えながら成果を話し始めた。
元々、この土地は農地経営の「の」の字も知らないスゥド国の馬鹿貴族が休養地を空いている土地と断定して税率を設定。その結果連作障害などを起こして土地が死んでいたのだが……今は黄金色の大地へと変化している。
……これ、何?何で地面が金色に光り輝いてんの?
「……驚いた…」
意味が分からないで呆然としたままの俺の耳に先程聞いたばかりの声が届く。その声は驚愕に満ちていた。
俺らが声の主を反射的にみるとそこにはユーク第3王女エリザベートの姿が。
「土地の流れを変えた……の?人の身で?」
「……王女殿下?」
なるべく冷たい声を出しながら彼女を見ると彼女は何かぶつぶつ言いながら俺の問いかけを無視した。
まぁそれはともかく、この状態が何なのか分からないのに喜んでいる松田の方を見て説明を求めるような顔をする。
「お?……あー…もしかしてわかんねぇのか……」
「悪いか?」
「んにゃ…まぁ軽く説明すると死にかけてた大地を復活させたからここの土の精霊が土地の力をフルチャージしてこんなことになった。」
成程。わからん。
「まぁ要するに土地全体に魔法がかかった。代わりにフツキシ草は養分を全部吸い取られて枯れたが。」
「全部!?他の株は残ってないのか!?」
「大丈夫だ。種は残ってる。」
フツキシ草は元の世界で言うところの根粒菌と共生している草だ。ニード山脈北部しかないらしい。……まぁ、それでも結構広い範囲での植生だが…頑張ってやっと見つけたのが全部なくなっていたら俺は発狂していたかもしれん。
「んでさ~文献的にこの状態になったら小麦と引き換えに作物の種を得られるんだってよ。だから米!」
「マジか!?」
「マジだ!その光景を見せようと思って早く来いっつってたんだよ!」
テンション上がってきた!えーと待てよ?水田を作るには……ニード山脈の麓の大河付近がいいか?いや、折角この農法を見つけたんだし…
「早速種と交換するぞ!」
「おぉ!そうだな!栽培方法は後回しでさっさと選ぶぞ!」
この後正直者の樵みたいな話が起きて俺らは念願の米を5束分くらい手に入れて金の大地は元の色に戻った。それを受けて農民たちは俺らの許しを得てから農業に移る。
が、俺と松田はそれどころじゃない。
「どうする?多分品種改良とか必要だし各地で育てて特性出した方がいいか?」
「いや、大きさ的にジャポニカ米っぽいし、まぁ異世界だから分からんが一挙に育てて一回先に食べた方が…」
「だが目先の利益に釣られて先のことを……」
「でも多分俺らしかこれ食わねぇぞ?ここの人ら基本パン食だし。だったらそこまでこだわらなくてもやり直し効くだろ。一回全部作って先に食っちまおう。」
俺らがそんな感じではしゃいでいる間にいつの間にかエリザベート王女はいなくなっていたが、それに気付いたのはエリザベートがいなくなった後。ノリについて行けなかったフロワだけだった。




