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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
地盤固め
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内政・その1 学校

 その日はクリーク王国にとって記念するべき一日となりそうだった。いや、記念するべき日だ。日時計で時間を確認すると俺はすぐに身支度を整えて自室から出る。


「おはよう。ヒラツカ。」

「おはよう。フロワ。」


 最近では慣れてきたフロワの呼び捨てと挨拶を行うと彼女と同じ席に着いて食事を開始する。今日の朝食は若干硬さがマシになって来たパン。北部と交易を行うことで入って来るようになって来た海水魚のムニエル。それによくブイヨンスープだ。


「今日はクリーク王国初の公立学校創立の記念式典よね?」

「あぁ、うん。」


 フロワから確認される事項を聞いて思わず頬が緩みかける。苦労して必要性を説いたものが形になったのだ。嬉しくないわけがない。


「民草に学なんて本当に必要なのかしら……」

「これまでくらいの国家運営なら要らなかったかもしれないが、目下人手不足なのは知ってるだろ?優秀な人材育成も国には必要なんだよ。」

「……それで他国に流れられたらどうする気か…」

「その議論は散々やっただろう?」


 溜息をついてフロワはこれ以上何も言わなかった。実際の所、フロワとしては自分も学校に通わされるのが気に入らないだけなのだ。


「貴族院から行って、次が庶学院。実際に開校する前にまずは教員の指導から入るとして……あーやることいっぱいだな。」

「そう言う割には嬉しそうね?」

「まぁな。色々頑張って来たしな。」


 思い出されるのは松田との授業監督。まず松田が庶学院の商人向けの「経済学」について教育指導に入る前段階で俺の腹心たちにどういうことをするか教える時の光景。


『喉が渇いて死にそうな時に出すコップ一杯の水が多少高くても買うだろ?だがもう一杯まで手は伸ばさない。伸ばす物がいるかもしれないがその人でも3杯目まではどうか?―――こういう風に人は物に対して使える値段は決まってる。これを限界価値と言って、一般的に限界価値は1つ買う時より2つ買う方が低い。そしてそれは続き買う個数が増えるにしたがって逓減していく。』


 図を用いて需要と供給の話をする松田。真面目な顔をして教える姿は何気に様になっており、聴き手側だった者からも質問の手が挙がる。


『失礼ながらそれには例外があるかと。』

『ふむ。よく気が付いたドエスノ君。よければその例を言ってみてくれるかい?』

『はっ。王女殿下に置かれます。そのおみ足でふみふみされるのは全て極上。なればこそ最初のふみふみから幾度過ぎようとも全てのふみふみに同価値がつけられるのでは?』

『そう、例外とはロリータ。幼女は全て等しくご神体。なればこそ、この世の理からがぼぉっ!』

『真面目にやれ。』


 また、魔導学など、研究者理念においての教育者指導要綱作りでは。


『いいか。全ての研究が何らかの可能性を秘めている。明らかに外れた値をチャンピオンデータとして取り入れるのか、それとも理論値から外れていると切り捨てるのか、それは研究者に掛かっている。そして多くの人々はそれが本当のことであるかどうであるかなど知ることもない。』


 松田は一呼吸おいて続ける。


『そう。あなた方がどう頑張っても大衆は知ることもないが、結果が出せなければ研究費は貰えない。ならば明らかに外れた値も入れて、数少ない実験で取った平均値をそのまま出そう…そう思う者もいるだろう。そんな時には心の中に幼…はい。自分の娘を創り出そう。そんな汚いことをして、将来生まれるかもしれない幼…娘が真実を知った時にどう思うか。それと君たち自身の研究者としての誇りも…』


 何とか睨みを入れて真っ当なことを言わせきったかと思えば最後は可能性を大事に皆が研究に誇りを持つこと。つまり可能性って大事。可能性の塊である幼女がとか何とか言ったので潰しておいた。


 これとは別に困ったのが親方だ。見事な建築技術を後の代に教えてほしいと依頼したところ、見て覚えさせる。との返事。図面なども本気で何となくで覚えさせるつもりのようだ。


 これには不安を覚えたが試しに弟子を一人取らせたところ素直でいい子だった弟子の子が3ヶ月で元の世界で言うところのべらんめぇ口調になってしまったのでその威力は計り知れないとのことで了承した。


 一般的な教養に関してはどこまで教えるか検討中だ。歴史、国語はいいとしても数学、化学、物理、生物、天文学、地学などは当たり障りのない程度からどこまで教えていいのかと手探り状態だ。


 しかし、民度を上げるのはいい。正直に言うと自分の常識が通じない世界は住み辛過ぎる。会話が微妙に成立していないことが多々あるのだ。自己中心的だが、そう言う理由である程度の教養は持ってほしい。


「まぁ、即戦力とはいかないまでもある程度は人材が入ってくれるだろうし、そうすれば時間も取れる。」


 既に内部講義で王宮商人たちには経済学・経営学・商学・簿記などを叩きこんであり、その繁盛ぶりは国中の商人が知る所となっており、その繁盛の根幹となった教育について話は国中に流布されている。


「……そうね。仕事に余裕が出来れば私とも、時間がとれるわよね…」


 俺が違うことを考えていると食事を終え、幾度か頷くフロワ。確かに仕事ばかりでこの幼女に掛ける時間が少ないとは思っていたので俺の方からもアクションを掛けたいとは思っているが、学校が終わると次は農業指導。その次は新統治箇所の見回りとまだまだやることはある。


「…まぁ、でも。偶には何かやるべきだよな…これだけ想われてるんだし。」

「?何か言ったかしら?」


 俺の呟きは聞こえなかったらしく、フロワは可愛らしく小首を傾げていた。そんなフロワを見ながら俺は近々もう一度休みを取って今度は二人きりで何かしようと心に決めておいた。




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