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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
地盤固め
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色んな確証実験

「松田…そろそろ俺らも有休貰って少し休まないか?」

「………………ゆうきゅう……?あ、あぁ有休ね!あーあれ?俺らでも取ってもいいのか?」


 有休何それ美味しいの?と言い出しかねない顔をして一瞬本気で意味を掴みかねていた松田を本気で心配しつつ俺は頷いた。


「まぁ、大まかに統合も内政も軌道に乗って来たし。良いと思う。つーか俺等働き過ぎな気がする。上が働き過ぎると下が休み辛いしたまには休まないとな。」

「ん~まぁ確かに……働かないのもアレだが働き過ぎるのも問題か。」


 そう言って松田は立ち上がると体を伸ばした。


「んじゃあ、ちょっと色々実験したいな。異世界と元の世界ってどれくらい違うのか気になってんだ。」

「ん~まぁ大っぴらに異世界人って言えないし、ここじゃ色々制限されるからいいかもな。何する?」

「そりゃ、休み貰うまでに決めようぜ。」


 こうして俺と松田は休暇手続きを行った。


















 そして1週間が過ぎて比較的に早く休みを貰えた(尤も誰も文句は言えないのでやろうと思えば勝手に休むことも可能だったが仕事に区切りはつけた)俺たちは王宮を出て黒杉の林の近くにいた。


「ご主人様~ディアもお休み貰ったよ!」

「秋様。いかに休暇といえども護衛は必要ですよ?」


 ディアとファムを連れて。黙っていたのだが人事部の書類を描いていた時に見たらしい。個人的に一緒に外で市勢を見るようにアピールしていた幼女様への警戒に気を張り過ぎたせいでこっちは緩んでいたところに付いて来られたのだ。


「……撒くか?」

「あんまり時間もないし、いんじゃね?」


 松田は色々な危惧よりも実験がしたくてたまらないようだ。色々な器具を持ち出していそいそと準備を進める。


「まずは物質の構成が元の世界と同じかどうか……」

「ねぇご主人様~何するの?ピクニックと思ってたんだけど違うの?」


 松田が金の棒やそれにガラスの容器や水を出しているのを見てディアがお弁当を出しながら首を傾げる。俺は説明に困ったので適当に誤魔化した。


「まぁ、錬金術みたいなことをする。」

「…ふぇ~……何でお城でしないの?えっちな禁制品でも作るの~?」


 小悪魔のような笑顔でそう言って迫ってくるディア。ファムもなんかいつもと若干異なる気がする顔付で松田のことを見ていたがぶつぶつと色々言いながら作業を進める松田の真剣さに手は出さないようだった。

 俺は何か手伝えることはないかと超小声で呟いている音を拾う。


「ちっ……こういう時にロリッ子研究員とか見習いロリータ錬金術師が出て来ない辺りこの世界の不条理が……」


 訂正。聞こえてきた言葉は全然真面目じゃなかった。そうこう言いながら松田の準備は整った。


「んじゃ、始めるか。」

「おう。」


 松田はそう言って水を溜めて左右に分けて袋をかぶせているガラスケースの中に入った金の棒に繋がれている銅線を持って電気を流し始めた。


「魔法って便利だよな~」

「お~…一応何かしらの物質は電解されてるな。」


 左右の金の棒の周辺に泡が盛んに出来て立ち上り、上部に備え付けている袋が膨らんでいく。繊維の荒い袋な為、重ねて隙間を小さくしても大部分は逃げていくだろうが今回は確認のため、問題はない。


「んじゃ、こっちの袋に火を点けるか。」


 ある程度袋に空気が溜まったところで松田はそう言って火を放った。すると勢いよくその袋は燃え上がりディアとファムを驚かせる。


「…酸素っぽいな。」

「まぁ、多分。あっち的に考えるとそんな気がする。」


 確信はないが取り敢えず水の電気分解はそれっぽい成功に終わった。これで水素が小規模ながら生まれたので次の実験に移る。


「んじゃ次いってみよう。ハーバー・ボッシュ出来るかな?」


 ハーバー・ボッシュ法は空気中の窒素を酸化鉄を主体とした触媒にある程度の高温と高圧力で水素と反応させることでアンモニアを作るものだ。


「個人的に微妙な心情だな。出来たら楽だが戦争的にどうかとも思うし、出来なかったらできなかったで何か…」


 そんなことを言っている間に松田は土魔法で何となくそうだろうと思われる買って来た金属たちをセットした隔絶した場所を造り、そこに風魔法と火魔法で熱と圧力を加えて行く。


「因みに平塚。俺ちょっと試したいことがあるんだが言ってもいいか?」

「言うだけなら言ってみろ。」


 準備中に何となくくだらないことを言われそうな予感を感じたのでぞんざいに扱ってみると俺の反応自体は結構どうでもよかったらしく勝手に続けた。


「この世界の尿ってアンモニア入ってるのか知りたいから天使様…」

「この土の部屋の中に捻じ込んでやろうか?」

「秋様?」


 くだらないどころかいろいろと問題がある事だったのでぶちのめそうか考えたが後でファムに何とかしてもらうことにしてしばらく放置することにした。その間にディアがピクニック気分で持って来ていたお弁当を食べる。


 匂いも漏れないようにきっちり閉め切っているので安心して食事を摂ろうと思っていると俺の分も持って来ていたらしいディアがにこにこしながら俺の方に焼いてある鳥を向けて来た。


「ハイご主人様~あーん♡」


 どうしようか、非常に恥ずかしい。だがディアのこの笑顔、守りたい―――行くしかない。そう決めて食いつこうとするとふいっと下げられた。


「えへへ~今度は本当にどうぞ♡」


 今、精神年齢40近い俺は非常に恥ずかしい思いをした。他人様に顔を見せられない状態だと思う……


「もが……」

「いつもいつも変なことを仰る秋様にはお仕置きが必要ですよね?」

「もが!もがぁ!」


 あっちもあっちで大変そうだなぁ……そんなことを思いつつしばらくすると土の部屋の温度が下がり、開いた。


「……刺激臭。」

「多分、出来たな。」


 食後しばらくして腹もこなれてきた時間だったからよかっただろうが、ファムが酷く嫌そうな顔をしていた。そんな刺激臭も松田が一瞬で風魔法で収める。


 そして本日最後の実験に移った。オストワルト法だ。アンモニアを酸化させて硝酸にする。


「じゃ、最後……勿体なかったけど、このためだ!」

「研究費で貰っとけばよかったよなぁ……まぁあんまり使ってないからいいとは…言えないな。流石に大金だし…」


 俺等の給料である白金貨を鋳潰して作った触媒に今結集させているアンモニアを風魔法で空気とよくかき混ぜた気体を集め、火魔法で一気に高温にした。


「……何か実験の主体の熱風地帯と普通の空気の境目に違和感を感じる。これ何気に疲れるぞ…?天…ふぁ、ファムさ…ファムの膝枕で休みたいなぁ!」


 空々しい言い方で何か言っている松田は超大雑把な感覚で過熱を止めると冷却し、勝手に空中で酸化させた後、風魔法で空気の流れを完全に止め、ガラスケースの中に少量だけ汲んである水の中にぶち込んだ。


「あー危ないから近付かないようにね。」

「下手したら大変なことになるからな~」


 そう言って二人を下げた後、俺と松田は出来上がった赤褐色の澄んだ液体からを見て顔を見合わせて頷いた。


「気体が立ち上ろうとしてるから押さえつけてる。」

「…んじゃ発煙硝酸か。出来てしまったなぁ……どうする?」

「今は多分必要ないから放置で行こう。取り敢えずこれは凍らせておくか。」


 ということで、この世界の空気は元の世界と同じことが分かったので何となく安心し、それとは別に火薬を無尽蔵に作る目途が立ってしまったことに若干の恐れを覚えつつ王宮に戻ったところ、フロワ様がお出迎えしてくれました。


 とても、怖かったです。




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