異民族…?
「…ん?兵が増えてね…?エスト国って残り後2000もない位だったよな…」
ファムからエスト国についての報告書を貰ってモノエイゾの城でリーゼとジャックと松田、それにディアで軍議をしていると、松田が疑問の声を上げた。
因みにド・マーゾは城下街の治安取締り、親方は城の復旧。カシザワは兵への軍備や規律遵守の徹底。ゴンザレスは物資確認中だ。
「…あぁ、それは異民族に援軍を頼んだらしい。」
「異民族…ってあっ!」
女神様から貰った一般知識を思い出して松田が声を上げる。
にしても…一般知識って何か思い当たる節がないと考えに出ないってのがちょっと厄介だよな…
「アヅチ族!…って、え?」
「…やっぱりお前も同じこと考えた?」
「そりゃ…ねぇ。」
カシザワって名前があるくらいだし…俺らの名前もそれなりに受け入れられてるし…外国人の名前もあるから…
やっぱ転移者って昔から居たんだろうなぁ…安土に関しちゃ…うん…織田信長をリスペクトしてるのはいいけど…
「…おい。ちょっと待て。色々思い出したがアヅチ族って確か100年くらい前にそこ彼処にいた少数部族を集めて出来たって…」
「ん?そうなのか…?俺は知らんが…」
多分俺と松田にも知識の差がある。リーゼを見ると首を振ったが、ジャックの方が頷いてくれた。
「まぁ…結構昔からいますけど…クリーク王国が小国連合国家から今の形になったころにはすでにありましたよ。」
「ってことは…あぁ後で考えようか。今は軍議だ。」
松田はジャックの言葉を聞いて何か考えたようだが、途中で切った。まぁ何となく察しが付くが…
時間の流れについて考えたのだろう。色々と時間的に矛盾していることがあるから地球とこの世界の時間の流れはおそらく異なっている。
一例としては先程挙げた名字の問題だ。
クリーク王国で戸籍を作ったのだが、これに名前を書かせたところ一部地域に集中して「カシ」と言った名前や、「アメ」、「ベニコ」などの日本の富山県に多い名字の読みが出された。
これらの名字は昔からある名字ではなく明治時代に名字義務化で自分が取り扱っていた店の商品などから取られたと考えられている名字だ。
しかし、彼らは大分昔の代から…それこそクリーク王国の前身の小国連合国家が成立する時の庇護下に入る事の時点(270年位前)でその名前を名乗っている。
これについて少々松田と戦争前に書類の山と格闘しながら議論を交わしたのだ。
まぁ、一緒と思ってた方がおかしいけどね。物理法則も若干違うし。黒色火薬だけでも御の字だ。
…それにしたって黒色火薬も若干違ったけどな…アレ圧縮したところに一気に火が点かないと爆発しないのにこっちの世界じゃ火が点いただけで爆発だもん。取り扱いが危険すぎるだろ…
それはさておき、侵略の話に戻ろう。
「で、アヅチ族の援軍が500だ。それとアヅチ族に加えてエスト国は国民全員で迎え撃つ構えだから放っておこうかと思うんだが。」
「まぁ…アヅチ族は小数でも恐ろしい蛮族だしね。それが賢明だと思うよ。」
リーゼが賛同してくれた。住民とまで争ったら統治とかが面倒だ。ここは兵糧攻めで内部から瓦解して行くのを待った方がいい。そういった案を言うとジャックも頷いてくれた。
「ですね。力攻めは非効率的です。親方がこの城直したらここで十分に相手を抑えることも出来そうですし、アヅチ族に関しては次は自分たちの勢力が圧迫されるというのを恐れての援軍ですから何もしなければ帰るでしょう。」
「じゃあここに残る人物がいるな…」
「あたしが残るよ。しばらく中央は戦争せずに内政だろう?」
リーゼが手を挙げた。今回は一応全体方針の確認という事で他の面々にも話を通してから決定会議を行うので保留しておく。
「じゃあ…一応誰も何も言わなければリーゼってことで。」
「何かあったら自由に戦闘してもいいんだろ?」
「食料の強奪とかに来たんだったら追い散らしていい。」
俺の言葉に無言でガッツポーズをするリーゼ。それを見て一応釘を刺しておくことにした。
「あくまで何かあったら。だぞ?」
「何もないわけがない。睨み合ってる状態でも戦争だろう?」
「…まぁ…」
楽しそうだな…リーゼを見ながらそんなことを思っているとドアがノックされた。
「入れ。」
「はっ!」
中に入って来たのは戦役中の使者対応係のトップに任命しておいた男だった。
「アヅチ族の部長から密使が訪れています。敵対の意思が本当にあるのか。その確認に来たいとのこと。」
ほう…大きく出て来たな…
「分かったすぐ行こう。お前は下がっていい。」
「はっ。失礼いたしました。」
男はすぐに退出していなくなった。それを見計らって俺もこの場にいる全員に終会宣言をしておく。
「軍議はここまでにする。解散だ。」
「おう。じゃ、行くか。」
「ディアも。」
退出しようとする俺に続いて松田とディアが付いて来る。片方が来るのはいいとして…流石に魔導師2人も連れてたら警戒されるだろ…
「…ディアはちょっと別行動で頼む。」
「何?何するの?」
何か悪だくみをしてる?みたいな顔でディアが俺の顔を見て来る。…でも特に何もないんだよ…
「ちょっと警戒されるから…魔導師は一人で…」
「何にもないの…?…それで二人で行って…その後は…やっぱりディアよりそっちの人がいいの?」
ディアが何かわけのわからないことを言ってる…
「ディアだってその人…に魔法はまだ負けてるけど…今日来てるのはそんなに実力が必要な人じゃないよね…やっぱりまっつんと別の…でもディアだって頑張るもん!」
「はっは。まだお子様には早い。ファムさ…ファムと訓練でもしてな。平塚行こうぜ。」
松田…何故煽る…ディアがむくれてるじゃん…ってか何か色々話の節々が間違ってる気がする…
「まっつんの変態!ご主人様を変な道に連れてくな!ディアが目を覚まさせるんだから!」
「ちょ…おい!何か酷い誤解してないかディア…」
「ご主人様待っててね!ディアの方が強くなって頑張るから!」
ディアは俺の言葉に聞く耳を持たずに走り去って行った。…後でじっくりと話し合う必要性がありそうだ。
「…変態?俺は紳士だが…なぁ?」
松田ぁ……もう…何か想像の余地があり過ぎてディアにどんな勘違いされてるかわかんねぇや…仕事しよ。うん。
俺はもう黙ってアヅチ族の密使が来ている場所へ無人の廊下を歩んで行った。




