悪い事してないのに…
「フロワ・ミゼリコルド・クリークたん!」
おぉ…この馬鹿流石だな。確かそんな感じの名前だった。
「はっはっは!王女を傷つけられたくなかったら大人しく降参するんだな!」
「くっ…なんて卑怯な…」
悔しがる松田。その横で俺はベルトが邪魔なのでポイッとしてちょっと試しにやってみたいことをしてみる。腰を捻って…出来るかねぇ…
「『古仙式秘奥義:風衝雷破』ぁ!…あ、マジでできた。」
二人の会話を無視して試しにやってみた元の世界じゃ使えなかった秘奥義が炸裂して衝撃波が豪華な装備を着た男を吹き飛ばし堅そうな岩盤に減り込ませた。
「オイ!女神様に何かあったらどうするんだ!」
「…いや、出来たらいいなと思ってたけどできるとは思ってなかったからな~」
それに嫌な奴には手加減しないのが俺が勘当された平塚家のDNAだからな。だから一家離散したんだよばーか。
そんなことは置いといて、あの人形姫は?あ、浮いてる。結構天井高いなぁ…あ、ゆっくり落ちた。
「…あれ…?私は…」
起きたか。で、何で馬鹿は跪いてるんだ?
「助けに来ました我らが女神よ!」
「オイ馬鹿。黙れ馬鹿。誰がアレを助けに来たんだ馬鹿。やるならお前だけでやれ馬鹿。」
こいつは馬鹿か?いや馬鹿なのは知ってたけど寝たら記憶がリセットされるのか!?
俺がそう思っていると何やらドヤ顔で松田は俺に言ってきた。
「…考えてもみろ…女神様があの上司と一緒なら…ずっと縛り付けてくれるんだぞ?」
「…もういいや。俺、お前のこと諦めるよ…」
真正の馬鹿だ。馬鹿は死んでも治らないって本当だったんだなぁ…張り切って戦ってるあいつの顔を見てると頭痛くなってきた。
「ぐはぁっ!お…おい…平塚!強いのがいる…」
あ、頭抑えて軽く目を伏せてると何か馬鹿が吹っ飛んできた。何かに負けたんだろうな。殴られたことだし頭治ったかな?
「いや!女神様が見ているんだ!平塚はここで応援頼む!」
あ、返事も聞かず特攻しに行きやがった。叩いても治らなかったか…旧式のテレビでも叩けば直るというのに…あ、また吹っ飛ばされた。…受け身とれよってあれ?気絶してる。
「へっへ…用心棒として雇われたときはつまらなさそうだと思ったが…面白くなって来たじゃねぇか…」
ドレッドヘアーです。褐色の肌です。ムキムキです。ハルペー持ってます。…何かムカつくなこいつ。何でだろ。
「動くなぁっ!今度は少しでも動けば王女を殺すからなぁっ!」
あ、縛られてる王女さんが別の野盗に捕まってら。ドレッド君も俺を見るのをやめて向こう見てる。王女さんはドレッド君を見て苦々しげに口を開いた。
「『凶剣のフォリー』…」
「ほう…俺みたいな下賤な輩の名前を知っててくれるのか…光栄ですなフロワ王女。…で、悪いな小僧…」
「そこのあなた。私の事は良いから逃げなさい!」
フォリー?は何か言ってる囚われの王女の方に歩いて行く。…別に俺は殺されるとなったらそれ見殺しにする位の決断力はあるから気にしなくてもいいよ?と思ってたらフォリーは野盗の首を一閃した。
「こんな愉しい戦いの前に水差しちまってなぁっ!」
「早く逃げなさいっ!」
幼女王女様…幼女様でいいか。の叫び声が聞こえる中、笑いながら肉薄してくるフォリー。これまでの奴らと段違いの速さだ。…まぁ、だから何って話だけど。
「うるせぇっ!黙って待ってろ!『古仙式:夜叉車』」
俺は一応逃げろ逃げろ五月蠅い幼女様の声に反応してやり、前方に重心を傾けているフォリーの頭に拳を落とし、足を払った。フォリーは一回転しながら俺の太もも辺りにハルペーを伸ばす。
「っちぃっ!」
俺は技をかけ終える前に足を引き戻してフォリーと対峙した。…中々強いな。クソ兄貴ぐらいは腕前あるんじゃないか?っと来た。少しは考える時間をくれないかなぁ~
「『マジックソード』!」
あ、しくった油断した。魔法とかあったんだ。
突撃してくるフォリーが構えたハルペーが妖しく光って俺の傍を何かが掠めた。その直後、後ろの岩が崩れる音がする。あっぶねぇ…じゃ、お返し。
「『古仙式秘奥義:風衝雷破』」
洞窟を壊すと崩壊の恐れがあるからちょっと弱め。避けられるかな?ってアレ?何かフォリーが体勢崩して…当たったか…結構強かったしもうちょっと戦いたかったなぁ…何で体勢崩したんだろ…?何かフォリーの居た地面が凍ってる…どっから…ベルトから…?
気になった俺は氷が繋がっている俺が捨てたベルト置き場の方に行ってどこが発生源か確認する。
「…何かの…種?」
(…まぁどっちにしてもスキルが発動したみたいだな…幸運か…何か不完全燃焼だけど…)
「…そこの人。その色違いのバッグ…ここの野盗の副長のバッグよね?鍵を頂戴?」
後ろから人形姫が声をかけて来た。縛られて芋虫みたいなのにその美しさは衰えない。ロリコンじゃない俺でも少し尻ごむのだ。気絶してる馬鹿にはさぞかし美しく見えるのだろうなぁ…
「鍵…これか。」
流石に俺も人なので縛られたままの幼女を放置するということはしない。鍵を見つけて錠を解いてあげた。
「ご苦労様。」
こいつ…上の奴が下に労をねぎらう言葉を態々…ふぅ…深呼吸して。うん。まだ小さいんだ。言葉を知らなくて当たり前だ。親は王様なんだ。聞いて覚えた言葉がこれでも仕方ない。
「あなた。名前は…?」
「ない。」
立ち上がって泥を払った王女様が俺を見上げて名前を聞いて来た。冗談じゃない。これ以上かかわる気は…
「おぉ!平塚ぁ!どうなった!」
馬鹿が起きた…
「…ヒラツカというのか。」
名前を知られた…よし、違う国に行こう。なるべく遠くの国だ。
「ではヒラツカ。あなたを…」
何を言おうとしてるのかは知らんがタイムリミットだ。
「姫様!ご無事で!?」
大量の人間の足音が聞こえて来てたからな。来るのは分かってたよ。さて、後はこの隊長らしき見た目好青年に任せて俺らは後ろからついて洞窟を出ようか。金入ったし町の中もみたいしな~あ、勿論松田にも金は貸してやる。利子はとるけど。どんな利率にしてやろうか…生かさず殺さず…ククククク…
「お…おい何か背筋が寒くなったが…」
「あー?何も企んでねぇよ…何も…な…」
「怖ぇよ!」
俺は好青年に事情を話している王女様から離れて松田の方に行こうとする。だがその袖が引かれた。
「待て、話は終わってないわ。」
「姫様?…そう言えばお礼がまだでしたね。私はクラーク王国騎士団3番隊隊長ミセリア・フルサーンと申します。この度は我らが姫君の救出に多大なる功績を立てられたようで、つきましては謝礼金として…」
「うるさい。」
王女。お前がうるさい。謝礼金くれるって言ってるんだからお子様は黙ってそっちのアホ相手に偉そうにしてなさい。
俺がそんなことを思っていると王女は急に俺の目の前に跪き俺の手を取ると口づけをしてきた。…は?おい松田、岩を置け、流石にそれで俺を殴ったらおれも死ぬ。で、固まってるけど騎士団の人たちこれどうしたらいいの?振り払ったら不敬罪でしょ?
あ、ようやく口離した。手に口紅ついてる。
「私はあなたを近衛兵…いえ。私の専属護衛に迎えたいと思います。ご同行を。」
え、めっちゃ嫌だ。誰か助けて。
周りを見ると松田は…お!岩を置いてくれたか…分かって貰えて嬉しいよ…でも何で倒れてるドレッド君のハルペーを岩で研いでるのかな?もう戦いは終わったよ?騎士団の方々いい加減何か言ってくれると俺も助かるよ?
「ひ…姫様!なぜそのような下々の者にそれを…?」
あ、嫌だ聞きたくない台詞の気がするぞ~?もう何も言わないでくれると助かるな!
「私を救ってくれたのだもの。親愛を表して当然よ?」
しれっと言ってるけど後ろの騎士団の方々の話を聞くところによると君城で氷の姫って呼ばれてるらしいね。王様にその美貌と魔法能力、頭の切れを買われてるんだってね。でもどんな相手でも見下して冷めているから氷の姫だって。ははっ!そんな姫様がいきなりどこの馬の骨とも知らない奴に親愛とか言ってたらこうなるよね?おい、幸運スキル今こそ発動する時だぞ?
「…とにかく。城で雇う雇わないは別として、謝礼金の事もありますのでご同行を…」
おぅ…発動してくれないのか。え?もう今日は使い過ぎだからなしとかそういうこと?
俺たちは悪い事してないのに連行された。
強さ的に裏奥義>秘奥義>奥義の順番ですね。