内政しましょそうしましょ
「…何か色々間違ってる気がする…」
「…何でまた俺らは馬鹿みたいに書類に埋もれてんだろうな…?」
戦後処理の後、細々したことを取り決め、そして税制の改革やら戸籍の作り直しやら遺族への手当てやら何やらかんやらやっていると、俺らはまた前世みたいに仕事。
仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事
「あああぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁっ!何で俺は異世界に来てまでこんな事してんだぁっ!?」
「そりゃお前が戦争とかしたから…」
全く以て返す言葉がない。
「ヒラツカ!?何やら叫び声が聞こえたが大丈夫か?」
「おぉ…天使様光臨…過労死か…悪くない…」
「ふざけてないで仕事しろ。」
「へーい。」
前世と違うのは後進の人材を今ディアが育てている所だ。俺らの仕事は今だけで後は育った文官がやってくれるはず。
「だ、大丈夫か?何か持って来させようか?」
「労働力を…労働力をくれ…もしくはこの書類群を速攻で片付けられる何か…」
因みにクリーク王国の文官は自分の仕事に加えてこれらの仕事を勿論引き受けてくれていた。
ただ、皆領土が何倍にもなったので死にかけてるから彼らの分まで働くことになっているだけだ。
「わ、私も手伝うわ。」
「無理。改革してしまったから。この阿呆が。」
こんな中で松田が政務官に新しい技術の公布をしたのが止めだ。
黄昏の魔導師(笑)と光の英雄(爆)の俺らの命令だからはりきってくれましたよ彼らは。えぇ。忙殺とはこのことか。と知らしめてくれる程度には。
「…フロワ様…俺のこの仕事が終わったら膝枕してくれませんか…?」
「嫌よ。旦那様の前で何を言ってるのか…」
ここで俺は考えた。
幼女に膝枕してもらうことでおそらくこいつの仕事能力は飛躍的に向上するだろう。
ただ、俺の口からそれを許可する旨を伝えれば、俺と奴の人間性の著しい後退が見られる上にファムの恐ろしい何かが待っていることは間違いない。
「…ダメだな。きちんと仕事しよう。元々うま過ぎる話だったんだから…」
給料の割に仕事内容が簡単過ぎたんだ。それにこれを乗り切れば問題ないはずだから大丈夫だろう。
そんなことを思って、ごちゃごちゃの執務室内で一度伸びをして休憩に入るとノックされた。
「…どうぞ?」
俺の返事と共に幼女様の雰囲気が【氷の姫】モードになる。入って来たのは俺のパレードを成功させるために余計なことをしてくれ、痛々しい二つ名を教えてくれた門兵君だった。
「失礼します。元帥閣下。士官希望者が来ております…怪しい風体の壮年の男性と少年ですが…いかがなさいますか?」
「…怪しいのであればここに通す必要はないでしょう?別室でもいくらでも仕事は出来るわ。」
幼女様がばっさりと斬り捨てる。
「それが…二人ともディア様のお墨付きで…」
「…士官希望って…今募集してるのは文官しかないけど?」
「はい。その文官です。」
よし来た!
「通せ。なるべく丁重にな。フロワ様。よろしいですか?」
「…いいわ。許可します。」
「はっ!」
門兵君は元気に出て行った。…むぅ…それでも礼儀をしっかりとやってのける辺り流石…
「…松田は万一に備えて書類守っててくれ。」
「…フロワ様を守る!」
「そっちは俺がやるからいい。」
守れる範囲が違うだろうが。ボケ。…ついでに少々下心も。だって、正直将来が真面目に楽しそうな子供じゃん。
いや、手は出さないよ?流石に30過ぎたおっさんが10歳位の少女になんやかんや思ってたら犯罪じゃん。
結婚も形だけ…になりそうだよな。うん。聞いたところによると魔法使いは寿命が長いらしいし。
多分、俺が今いる中じゃ一番最初に死ぬんだろうな~まぁ戦乱の最中にいるんだから何とも言えんが。
「連れて来ました。」
ノックと共に気配で察していた俺らが入るように促すと入って来た男は少し目を見張ったがすぐに表情を立て直して跪いて自己紹介を行った。
「ノイマン・キルヒホッフです。」
「シュリーファ・キルヒホッフと申します。」
黒髪に白髪交じりの壮年の方がノイマン。ショートボブ位の髪に切りそろえられた方がシュリーファか。
「…さて、ディアの直言を貰えるという事は…即戦力と考えてもいいのか?」
この辺はあえて偉そうにしておく。大将軍から元帥になったからまぁ更に国を代表する!みたいな感じになっているので舐められてはいけないのだ。
「はい。」
「…思い出した。そなた、エスト国で革新的な技術を出した…」
「夢破れた者どもでございます。」
幼女様の言葉に一層深く頭を下げたキルヒホッフ親子。ディアがまとめた資料では俺が今やっている戸籍の統制をしようとして脱税をしている貴族に目をつけられて追放されたらしい。
ここじゃ脱税しても微々たるものだしなぁ…大体、俺自体何かもう扱いが王族みたいなものだし…
「おい…」
俺と彼らのやっていることと立場を鑑みていると松田が俺に耳打ちして来た。
「何だ?」
俺も相手に聞こえないように小声で返す。幸いといっていいのか、彼らは下を向いておりこちらを見ていない。
「…シュリーファたん…少年じゃない。幼女センサーが反応してる。」
幼女センサーとは、12歳までの少女にのみ反応する松田が前世でも持っていた不気味な能力だ。
因みにこの世界に来てからは具現化できるようになったらしく、見せてくれた。何か細長い円錐みたいなもので、身の回りの少女に近付けてみた結果、ディアの時は少し元気なさげに、酔っ払いの時は潰れて、幼女様の時に元気よくもの凄く振動。
そしてファムさんの時は何やらうねった。
「…とりあえず今は関係ない。」
「お前が雇わなくても俺が雇うぞ…」
どうでもいいことを思い出しながら実際の問題について考える。作業能率は上がるだろう。但し、犠牲者が出そうだ。
「…まぁいいだろう。雇うぞ。報酬は出来高制だ。」
「はっ!ありがとうございます!」
こうして内政の方にも人手が入った。
が、仕事の量は減った訳ではないので俺たちは半死半生の目に遭って増援を待った。




