仲間内の打ち上げ的な宴
祝勝会だ。
平塚は現在南征大将軍と言う訳のわからない職についているので、今回、最後に落とした城で大規模な宴会を行うことになった。
それに当たって大将軍として、労いとその他色々なスピーチをしなければならないのだ。
「…嫌だなぁ…話が長いと面倒だし…短いと悪印象だろうし…」
大体スピーチは場合によるが1分30秒以内が目安。これで死んでいった者たちへの追悼の念とその念を吹っ切って今日は楽しめと言う挨拶を作り上げなければならない。
時間は迫っている。あまり遅くに宴会となれば何となく熱が冷めるし、色々と心の方に支障が出る。その為、今日の20時までに作り上げたいのだが…
「後、20分位か…」
今朝の早くに混乱と疲弊させるために攻めて、城が落ちてから4時間ほど経っていてもまだ平塚は原稿をまとめ切れていなかった。
というか、戦争の宴の挨拶など作ったこともないので何を言えばいいのかよく分からない手探りの状態なのだ。
折角の宴で楽しみたいのに、こんな憂鬱なこともやるのか…最早手抜きでもいいかな?とも思えたが、前世において労がきちんとした評価を下されないという事は平にとってイラッと来るものだということは自分の身で実感している。
なので、彼は真剣に考えるのだ。
…まぁ、結局時間切れで褒め言葉と労いの言葉が長くなった上、追悼まで行くのに3分くらいかかったが…
それでも会は進んで行く。とりあえず、スゥド国の連中は勝った平塚の下へ酒を注ぎ、媚を売ることに専念していた。それに対する平塚はその流れが止まるまで一献、また一献と飲み続ける羽目となった。
それが終わったのは、かなり後のことになる。農民兵たちも真似をして平塚に酒を振る舞ったからだ。
それらが済むと、基本的に堅苦しい宴と言う概念は崩れ果て各々がやりたい放題城内を闊歩し始める。
勿論、略奪行為は禁止。強姦も禁止だ。
それを徹底させた後は平塚達も自由の身だ。自室に帰って静かに飲むことにする。
「…はぁ…」
「辛気くせぇなぁ!飲んだらパーッと騒がねぇと損だぜ!」
自室に戻ったところでやっと素に戻れる。
そんなスピーチの失敗に落ち込みながら酒を傾けていると松田が新しい酒を持ってやって来た。もう片方の手には酒の肴のようなものが持たれている。
炒った豆に塩が添えられているモノと、燻製肉。あと宴会時に出て来ていたよく分からない肉っぽい何かしらの物体。
もう一方の手に持っている酒を見て、平塚はそちらを開けてみる。
残念ながら全ての酒の醸造技術が低いらしく、アルコール度数の高いものがないため先程の宴では二人はもの凄い量を飲んでも酔えなかったので気になったのだ。
ただ、そのお蔭で一献攻めの酒大量摂取にもかかわらずアルコール中毒にもならなかったとも言えるが…
それでも新しい酒の方が幾分か酒精が強く、それを量飲んだおかげで多少は酔った平塚は松田を隣に座らせると愚痴り始めた。
「あぁ。…だがなぁ、俺は基本的に人とかかわるのはなぁ…馬鹿みたいに騒ぐのも面倒だし。」
松田も松田で平塚とよく飲んでいるのでそういう風にハイテンションになる平塚は見たことがない。
「知ってる。でもまぁ、大将が、騒がなかったらちょっと部下はやり辛いぜ?」
「…羽目を外すのと暴走は違うだろ。」
元々、平塚はかなりの蟒蛇だ。日本に居た時でもそこまで酔ったところは見たことがない。
「ま、それでも…楽しめたか?」
「…………まぁ、死んでいった奴には申し訳ないがな。」
「辛気臭ぇっての!」
松田がことさら明るい雰囲気で平塚の背中を叩いたと同時に平塚の部屋が勢いよく開け放たれた。
「!」
「っとぉ?」
すぐさま戦闘態勢を取るが、それは杞憂に終わる。
「ごっしゅじん!っさまぁっ!」
「何だ…」
入って来たのは現在の平塚達と同年代の体を持つ2歳児。ディアだった。
「えへへへへへ~~~~えっへっへ~」
「え、…あ、酔ってんのな。」
どう贔屓目に見ても様子のおかしいディアはベッドに飛び込んで寝た。
「…何だったんだ?」
「かきゅぅ…んおにゃ?おぅ…秋彦さまぁ…ファムは頑張りましたよ~」
開け放たれた扉の向こうからファムがドピンクな服を着た状態で酒瓶片手に現れた。そしてフラフラ部屋の中に入ってくる。
「ディア知らんかの~?あ、秋彦さまだ~わ~い。」
ファムはそう言って秋彦こと松田の胸に飛び込んだ。
「死ねリア充。」
「うっぎゃぁぁああぁ!」
平塚は松田の顔面に酒をぶちまけた。松田はアルコールが目に染みて悶絶する。それを見て平塚はケラケラ笑った。
「…むぅ?ご主人様楽しそう…」
ディアがベッドで目を覚まして平塚の方に少し移動する。そして隣で悶絶している松田を見てディアは呟く。
「成程、ご主人様、嗜虐趣味。…ディア痛いのやだな…」
「…あ~ディアちゃんの頭の中に変な情報が入るといけないから言っておくけど、酒が入るとこいつ少々Sになる。嗜虐趣味自体はな…ぎゃぁぁああぁぁっ!」
「アハハハハハ!」
折角説明している松田に平塚は少々火が入ったのか酒の肴についていた炒り豆用の塩を追撃に使った。
「アハハハハハ!おっと、よっと。アハハハハハ!」
松田が攻撃され続けているのがムッと来たファムがお返しとばかりに平塚に攻撃を返すが、平塚は笑いながら避けてファムの目に指弾の要領で炒り豆をぶち込む。
「アハハハハハハハハハ!は~面白かった。」
平塚はそう言って謎物質をつまみに酒をかっくらう。そして扉が開いていたことが気になり、それを閉めに行く。
「…随分楽しそうね?」
が、その目の前にいる人物を見て平塚は止まった。そして松田も勢いよく立ち上がった。
そして、二人とも酔いから完全に抜けきった状態になる。
「…その状態はないんじゃない…?私、あなたのフィアンセよ?」
そこにいたのは幼女様こと、フロワ・ミゼリコルト・クリーク。その人だった。




