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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
スゥド王国戦~前編~
34/102

ニード山脈北部地域 最終戦・後半

 ブックマークが100人を超していたので嬉しいです。ありがとうございます。

 計略は成った。ディアの魔法と、農民兵たちの力によって下流を堰き止め、ベルフェナンド領最後の牙城はは水害にあっている。


 もう冬が近いこの時期に水に晒され、戦意も下がり続けているだろう。


「…で、そろそろ2週間くらいになるが…いつまでこれやるんだ?」

「敵が出て来るまで。」


 松田の問いに俺は答えた。そもそもの問題からして城攻めなんてものは本来そんなに10日やそこらの短時間で出来るようなものじゃない。今までが異常だったのだ。

 松田がその辺をわかっているのかどうなのか分からないが頭を掻きながら俺に向かってぼやく。


「ん~…敵さんの間諜も全く出て来なくなったしなぁ…もう、攻め込んでもいいと思うんだが…」

「駄目だ。それじゃ勝てない。」


 どれだけ戦意が下がったとしても地力が違う。農耕と戦闘じゃ使う個所もやることも心の持ちようも全て違う。


 それに、相手が間諜を出さなくなったのも完全に防備に徹しているという所作の表れだろう。


 …とまぁこんなことを言っているが、実際は大詰めの為に打つ手は打っている。もし成功すれば攻め込も…


 そう思っているとディアが俺の下にやって来た。


「ご主人様!出来たよ!」

「来たか。…じゃ、松田。攻め込むぞ。」

「はぁ?さっき…ん。こんな人が悪い笑みを浮かべてるってことは何かあるんだな?」


 失敬な。誰の笑顔が人が悪いって?まぁいい。早く行かないとな。


「出陣だ!今日で落とすぞ!」


 さぁ、潰してやろうか。



















 城壁の上には大勢の兵たちがまるで海鳥のように群れて俺らを魚の群れと見做しているかのように見下ろしていた。

 俺はこの場で俺が突っ込む後に指揮させるフィロドに最終確認を取る。


「レノウから送られて来てる木の加工は済んでるよな?」

「はっ!丸盾に仕上がっております!」


 フィロドも俺の前での初戦闘という事で盛り上がっているようだ。俺も前回、辛酸を舐めさせられたことからか戦意が高揚しているのが自覚できる。


 …そろそろか…


 俺がそう思ったのとほぼ同時だった。


 雷が鳴り響くかのような轟音。


 それに伴い、城壁の一部が地面の方から砕け、土台が砕けることで城壁全体への影響が訪れる。


「な…何だ!?」

「かかれ!」


 混乱の最中に陥ったベルフェナンド軍にこの機を逃さず自軍を突っ込ませる。爆発の余波を受けて、下流を堰き止められていたことで行き場を失っていた水が急激に流れる。

 それは城壁の崩壊に拍車をかけ、更なる被害を生み出す。


 そこに突っ込ませたのは松田だ。


 水の水流を多少なら操れると言っていた奴を使って城内に水害をばらまかせながら自軍への被害を抑え、更に攻め込むルートを作らせる。


 ヤバい。マジ松田有能。俺が言ったことをほぼ完全に呑み込んで指揮出来てる。


 …っと、そんな事考えてる場合じゃねぇな。俺の方も動かねぇと。俺は敵兵を遠視で見る。


「じょ…上級魔導師が城内に侵入したぞ!」

「もう一人が外から攻めて来てるぞ!」

「城壁を崩すなんて…まさかまだ上級魔導師が!?」


 混乱は格好の餌食だよ?


 こちらから敵が迫っているというのによそ見をする兵たちを前に俺はこの世界では馬位のスピードを誇る健脚で城壁まで一気に掛けるとロッククライミング(高速)の要領で城壁をよじ登る。気分はトカゲだ。間違ってもゴキカブリさんじゃない。


「き!来たぞ!撃てぇ!」


 はっ!真下を狙って弓が正確に撃てるかっての!そんなちゃちな攻撃じゃ俺にゃ掠りもしねぇよ!


「に…逃げ…!」

「古仙式:刀術 夜叉烏やしゃがらすぅっ!」


 一刀両断。


 悲鳴を上げる暇も与えずにこの一角を切り開く。するとこの辺りの弓の攻撃が止むことでここに戦力が集中して更に激戦となる。


「らっぁあ!」

「じょ!城門の方に援軍を!」

「何言ってんだ!こっちこそ援軍を寄越せ!」


 相手の伝令が怒声を上げながら情報を送り合っているのを小耳に入れつつ、ファムさんとディアの直下の間諜が俺の後によじ登り、垂らした縄梯子を上ってくる味方に指示を出す。


「ご主人様!フィロド卿たちの手によって城門開いたよ!」

「よっしゃ!攻め切るぞ!」


 俺の言葉に周りにいた兵たちの士気も上がる。戦況は完全にこちらの流れだ。


「将を探せ!ベルフェナンドを捕えろ!」


 戦争は将を殺すか捕えるかするまでが戦争。ベルフェナンド軍が降伏し始めている中を突っ切って、何か重要そうな建物を目指して走っていると歓声が上がった。


「と…捕えちまっただ…」


 異世界補正のおかげか、やけにはっきり聞こえるその呟き。彼はこの最終戦における陰の功労者のファンテ君じゃないか…

 っと、その前に居るのは………ベルフェナンド!親友1()が地面に落とされ、親友2()は折られてる!


 そうか、唯一無二の友人たちは負けたのか。ザマァ!


「ファンテ!」

「っひゃい!」

「良くやってくれた!最終戦における第一の手柄はお前だ!」

「も…ももももも…もってぇねぇですだ!」


 土下座スタイルで平伏するファンテ。


 いや、でも実際土木工事するための木の追加をこんなに早くやったのはこいつだし、日本式土木工(戦史を習うときに教授に教わった)の指揮もさせたし、その上敵将まで捕まえたとなったら…


「…少なくとも、兵を率いる立場には就かせよう。」


 実際、こいつに率いてもらってた部隊は基本的に効率がいい。俺の言葉に口を開けたまま正座してるけど、人を動かすことにおいては光る才能を持っている。


 まぁそれはそれとして、


「我が軍の勝利だ!勝鬨を上げよ!」


 よっしゃぁ!勝ったぞ!今日は宴だ!雑務は後だ!飲むぞ!ひゃっはぁ!


 勝利による心地よい酩酊感の中で俺がそう叫ぶとクリーク軍の雄叫びのような勝鬨がニード山脈に響くかの大音量で上げられた。




 ファンテくん…最初の砦戦でぎっくり腰の父親の代わりに戦ってた人です。

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