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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
スゥド王国戦~前編~
33/102

ニード山脈北部地域 最終戦・前半

「…ファムさんは密偵。ディアはうちに来ている密偵の排除。フィロド卿は兵の統率、松田は俺と計略について煮詰める。」


 改めて陣営を見ると役者が揃っていた。これで動ける。…まぁさっきも陣営内に不満はある物の、負けるはずないと思ってたのに負けたけど。


 切り替えよう。


 そんな中で松田は俺をじっと見て何か言いたそうにしている。その周りではディアとファムさんが色々指示を出して忙しそうだ。フィロド卿はすでに兵たちの所に移動している。


「…何か久し振りに会った気がするな。」

「…まぁ、あの会社に行ってから基本的に3日以上空けることなく一緒だったしな…」


 …だから独り身だったんだ…畜生め…余暇とか合コンに行く時間もない上、勤務ばっかり…それに勤務中も、飲むときもずっとこいつと一緒…

 …まぁ、下手に外食しに行くよりこいつの作る飯の方が美味いんだが。


 …畜生っ!餌付けされてる…そんなんだから社内で変な噂が立ったんだ!…っとそれは今は置いといて。


「んじゃ、今回も同じ手で行こう。今度は大丈夫だ。」

「…え?それでさっきは…」

「あれ自体は問題ない計だったんだよ。ただ、馬鹿がいただけで。」


 今回はフィロド卿がいるから要部分に楔が打てるだろうし、一度痛い目に遭ったのだからそうそう変なことはできないだろう。


 …それに、この世界で上級魔導師ってのは本当に恐れられているみたいだしな。松田こいつがいるのに命令違反ってのはないはず。


「ふーん。まぁいいや。とりあえず俺は何すればいいんだ?」

「俺の隣に居て、何か…ほら、レーダーみたいな魔法あっただろ?アレやって戦況を教えてくれ。」

「ん?戦わなくていいのか?」

「あぁ。居るってだけで脅威になるし、化学マジックをご覧になってもらうからな。…ん?物理マジックか…?」


 俺の言葉に松田は微妙な顔をして口を挟んできた。


「あー…何て言うかな、この世界って若干法則が違うぞ?多分…」

「え?」


 初耳だ。


「元素が何個か違うものになってるっぽいし、それに性質も違ったりする。ってか考えられないことが起きてた。…持って来たけど見る?」


 何を?と訊く前に松田は懐を漁り始め、そして球体の何かを出した。


「…何だそれ?」

「ファムさ…ファムが言うには磁石らしい。」

「…浮いてるけど?」

「…その辺は俺にもよく分からん。ファムの言い分じゃこの星は磁力を帯びてるからって…」

「…いや、そう言う問題じゃ…」


 そう思ったが、この世界には魔法もあるのだ。法則云々が通じるかどうかなんてわかりやしない。

 最初の案は止めた。不確定要素が多すぎる。


「そう言えば松田。お前さ、川の流れって変えれる?」

「ん~…規模に依るな…まぁ一応、やって出来ないことはないと思うが…」

「ディアは?」

「…多分、出来る…けど、その人より出来ない。」


 よし。出来るなら問題ない。じゃあ…行きましょうか。


「じゃあ明日松田は俺に付いて来て。ディアはにこの戦闘の要になる作戦をやってもらう。」


 ということで、作戦は2つ目の物に決定した。この後もの凄くディアに反対意見を言われることになったが、まぁ10中9位は大丈夫だから大丈夫だよ。って宥めるのに苦労した。

 この戦争が終わったら俺…何か奢らされるんだ。これって死亡フラグかな?


















 そしてディアを説得して添い寝までしてから機嫌を取った翌朝。松田は何か朝から不景気な顔をしていた。

 こいつには今回なるべく偉そうに、怖さを持って存在をアピールしてもらわないといけないからこんな感じの面じゃ困るんだがな…


「…どした?」

「…いや…何か昨日の夜頭痛くてよ…まぁ今は大丈夫なんだが…」


 あ、やべ。祈りが通じたのかもしれない。


「大丈夫か?」

「あぁ。朝起きたらなんともなかった。…もしかしたらあっちの世界に残してきた俺の嫁たちが悲しんで…」


 妄言は聞き流しておこう。さて、移動移動。


 そんなこんなで俺たちは今、軍勢を率いてベルフェナンドが治める城の城門前に来ていた。昨晩戦っておきながら今から今更ながらの口上を叫ぶのだ。


 門の前で見張りの兵に俺らが来たことを大声で告げると城主を呼んできてくれるらしい。何て親切なんだ。殺されるかもしれないというのに…


 それはともかく、もうすぐベルフェナンド君は城門の上に来るらしい。…あ、来た。

 さぁ、昨日頑張って考えた口上を言うぞ。


「ベルフェナンド卿!スゥド国に最早大義は無く!悪戯に民を苦しめる腐敗国家に成り下がった!何故我が軍に降伏しない!?」


 …うん。多分こんな感じ。めっちゃ恥ずかしいけど。


 俺の声に反応してくれたベルフェナンドくん。…お、昨日はよく見えなかったが結構男前じゃないか。

 何か不敵な笑みを浮かべている。生意気な。


「確かに貴殿の言う通りだろう!しかしな、我が軍にも都合と言うものがあるのだ!俺がずっと戦場を共にしている家臣二人がどうしても戦えといってくるのでな!」

「家臣の言うことに左右されるのが貴殿の言う騎士団長としての姿か!?」

「仕方あるまい!両者とも唯一無二の我が友であり、我が体の一部と言ってもおかしくないのでな!」


 …もしかして、そっち系の方?


「…これが我が友よ!喰らえ!」


 そう言うや否やベルフェナンドは俺に弓を向けて矢を放った。…結構速いな。まぁ取るけど。


「お…おぉ…」


 何だ?化物を見る目で俺を見やがって…まぁ慣れてるけど。


「これが返事か?」


 低く、通る声で睨みながら殺気を混ぜてそう告げると少々怯んだようだ。


「ま…魔術師…そうか、二人目の魔術師がいると聞いていたが…貴様か。邪道の主め!我がもう一人の友!この槍に誓ってただで降伏はせんぞ!」


 そう言うと狙撃を恐れてかベルフェナンドくんは隠れた。…まぁいい感じに勘違いしてくれてお兄さん嬉しいよ。


 ここに居る奴等って殆ど松田が動かしてる鎧と服なんだ。じゃ、睨み合いしてお仕事が終わるのを待ちますか。


 あ、後一つ言いたいことがあったな。


 …唯一無二の親友が弓矢と槍って悲しくない?





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