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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
スゥド王国戦~前編~
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ニード山脈北部地域 第四戦・後編

 どうする?自軍で敵に回ったのは何人だ?俺の軍は今、どれだけが使える?


「ちっ…埒が明かんか。」

「ご主人様!ディアが血路開くよ!」

「…いや、血路自体は俺が作る。退くぞ!」


 これはどちらにしろ形勢を立て直す必要がある。これじゃどうやってもスゥド軍の餌食にしかならない。


 とにかく俺に従ってもらうしかない。最悪、松田の城とこの城は後回しにして練兵をする必要が…


「危ない!」

「…っと。今考えることじゃねぇな…」


 俺は大してこの場所に居ても死ぬ気はしないが、農民は死ぬ。さっさと逃げないといけないな。


 一気呵成に力を入れると目の前の敵をまとめて5人位薙ぎ倒す。それだけで近くにいた農民兵たちの士気が上がったようだ。


 が、状況はそう生易しいものではなかった。どれだけ進んでも敵兵の先に道が見えないのだ。陣替えを済ませてある。それもかなりの速さだ。


「…これは流石に不味い…」


 士気が下がらないように誰にも聞こえないように言う。戦闘はかなりの体力と精神力を消耗する。いくら力があっても、それに変わりなく疲労が襲って来てその上恐怖から焦るともうドツボに陥るのだ。


「…不味い。」


 焦ってはいけないと分かっていても焦ってしまう。一度の失敗で多くの物を失うのだから当然だ。一時的に上がった士気も不安感に押されてきている。


(考えろ…考えるのを止めるな…打つ手を探せ…)


 どれだけの敵を倒したのか分からない。どれだけ時間が過ぎたのかもわからない。ディアが疲れ、周りも疲れ、それでも行動を止めれば死ぬことから動かされ続ける中、敵軍が急に変な動きを始めた。


「…え…援軍です…ご、ご主人様!援軍が来ました!」

「な…どこから?」

「わかりません!でも、麓の兵と一緒に押してくれてます!スゥド軍は崩れ気味です!」


 ディアが報告を受けたその直後、炸裂音が響き、敵兵が狼狽えだした。


「じょ…上級魔導師だ…」


 その後、麓と川辺の俺らクリーク軍に挟まれるようになったスゥド軍は城に退却して行った。



















 軍を城に最寄りの村に移動させた後、俺の所に別働隊を率いていた人物が馬に乗ってやって来た。

 その人物は俺を怜悧な目で見据える。


「…危なかったなぁ…お前が任せろっつったから送ったのに…」


 援軍に来ていたのは、フィロド卿と松田だった。二人はカジャルが私兵たちに裏切りを今日受けて、落としてからすぐにこっちに来てくれていたらしい。二人揃って立派な馬に乗っている。

 そんな二人に今の俺に何か言い返すことはできない。負けたのだ。惨敗と言っていい。


 カジャル領から連れて来た兵2000と俺が元々連れて来ていた兵4500は、今回の戦闘で合わせて5000となってしまった。


 敵兵2000は寧ろ少し増えたようだ。


「…こっちの計略は上手く行ったが…危うくお前が死ぬところだったな本当に。お前が死んだら小鳥ちゃんものっそい悲しむからな?」

「…あぁ…」


 実際、すでにあの世界じゃ死んでるけどな。そんなことを思っても口には出さない。


 …そう言えば俺の葬式ってどうなったんだろうな…小鳥が俺が死んだって知ったら泣くかね?今更元の世界が気にかかって来た。死にかけたからかね?


「…全く、俺の初恋の人を泣かせんなよ?」

「黙れロリぺド。うちの妹に何する気だった?」


 駄目だ。これにはどうしても口を挟ませてもらう。13歳年下の女に何する気だ?血が繋がってなくても流石に兄として止めさせてもらう。


 と、俺が睨んでいると松田はふっと笑った。


「それでいい。勝敗は兵家の常。次のこと考えようぜ?」

「…お前に気を使われるとか…あ~っ…最近何か幼くなってんなぁっっ…」


 恥ずかしい。いい年したおっさんが何ガキみたいなことやってんだよ…大人なんだから合理性で割り切んねぇと駄目だろ…


「大体、小鳥ちゃんはもう大人になってるから…」


 松田は遠い目をしていた。因みに、松田の後ろでファムさんが何かもじもじしてる。え?何コレ?


「あ、秋彦さま。私は、大人の体に…なりません…よ?」


 …おぉ。何か凄いぞこれ。席を外した方がいいかな。フィロド君。…何か頭抱えてる。松田…こっちの世界に帰って来ない。


「…あ、で、平塚。一応報告行ってると思うけど、カジャル領は落とした。それでおいて来た兵に開墾なんかは任せてる。それと、給与明細…じゃなくて、報酬の写しだ。」


 スルー!?あ、ファムさん落ち込んでる。


「…ファムさんは…」

「ん?ファムさ「秋彦さま?」…ファムがどうかした?」


 黙って首を振っておこう。何だこの鈍感。死ねばいいのに。…いや、この世界じゃそれは流石にいかんな…今日の夜に頭痛に悩まされればいいのに。


「…うぅ…あ…ご主人様…と、」


 ディアが起きたようで家の外にいる俺を見つけてこちらに来た。そして、松田を見て顔を顰める。


 …何か睨み合ってる。松田は若干得意げだ。ディアは何か悔しそうだ。


「ディア?何で睨んでるのか分からんが…助けに来てくれたんだし、礼でも…」

「…………………助けてくれてどうもありがとうございます…」

「いやいや、俺は平塚の右腕みたいなものだしね。これ位出来て当然だよ。」

「……………………………………くっ…………」


 何か松田は勝ち誇るし、ディアはもの凄く悔しがってる。…はぁ、こいつら見てると嫌でも気分が入れ替わるな。


「…あぁ。俺からも悪かったな。それと、ありがとよ。」

「おう。」


 さぁ、今度は雪辱させてもらおうか。





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