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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
立身編
3/102

行きはよいよい帰りは…

「…着いたな。ここまででいいだろ?」

「もう少し見てやってもいいんじゃないか?」


 俺たちは街に着いていた。そこの門付近でこの後の事について話し合いを御者台で二人していた。

 因みに道中、何か賊がいっぱい来ていたが全部弱かったので俺が速攻で叩き潰した。馬鹿まつだはその時だけ御者台から馬車の中に入り、護衛という名の口説きを行っていた。…まぁ賊が来ない時はずっと御者を任せ続けているから文句はない。ただ騎士団けいさつを呼びたくなっただけだ。


「…大体ここに入るためには金がいるだろ。俺らに金はねぇ。」


 俺は植え込まれた知識から町に入るには通行料がいるということを確認する。松田は頷いた。


「…まぁそうだよなぁ…服装を合わせてくれてるのに金の準備はない所辺りあの人も抜けてるなぁ…」

「お前がアホな能力をギリギリのところで言ったからだろ!」

「…まぁお前の言うところのアホな能力の選択肢がアレだから今回は諦めるか…」


 松田はそう言って御者台から降りた。そして馬車の中にいる幼女たちに声をかける。


「じゃ、俺たちはここまでだから。後は大丈夫でしょ?」


 若返ったイケメンスマイルを浮かべる松田。…こいつ無駄に顔良いからムカつくよな…


「ん…そっちのはどうする気?」

「俺もここまでだ。…何故別に考えた?」


 人形姫が態々俺の方をじっと見て言ってきた。あぁ…こいつは悪くないんだがどうもムカつくな…いかんいかん…早いところ寝ないと正常な判断を下せないぞ。特に働き詰めの元凶のことを頭から消さないとな。


「…そっちのの動きはかなり良かった。城で…」

「断る。」


 ふざけるな。折角自由の身になったというのに何故好き好んでめんどくさそうなことをしないといけないんだ。さっさと退散に限るな。

 俺は松田に目配せする。どうやら察してくれたようだ。長い間友人やって来ただけあるな。


「…兎に角町に入ったらどう?聞いたところじゃお金がなくては入れないみたいだけど私それ位払うわよ?」

「いらない。行くぞ。」

「はいよ!」


 俺たちは風の様にそこから走り去って草原に出てしばらくすると二人で顔を見合わせた。


「…異常だよなこのスピード…」

「それに野盗と戦った時相手が異様に遅かったし…弱かった。」

「走っても全然疲れないし…」

「…宝玉の力…か?」


 俺がそう言うと松田は興奮し始めた。


「!よっしゃぁ!こうなれば幼女チーレム作ったらぁ!」

「…チーレムが何なのか知らんがろくでもなさそうなことは分かる。勝手にやってろ…俺はそうだな…一軒家のマイホーム作りたい。」


 俺のささやかな野望を言うと松田は口に手をやって引きやがった。


「うわっ!折角の異世界チート手に入れたのに発想が貧困!」

「うっせー…何気にこれは俺の目標なんだよ。後は…まぁずっとデスクワークしてたし久し振りに体動かしたいな。」

「あ!そう言えば効いたじゃん何とか式古武術。」


 古仙式古武術なぁ…これ名前に二回も古が入るから何かダサくてあんまり正式名称言いたくないんが…


「古仙式古武術か?まぁ思ったより身体能力が高かったしな…そんなことより眠い…」

「あ~そう?じゃあ見張っとくから平塚は寝てていいよ。」

「お、マジ?サンキュ。」


 この時俺はこのアホまつだがアホなことを忘れていた。ここから他人から見れば羨まれる俺にとってはもの凄い不幸な人生が幕を開けたのだった。



















「…ん?ここは…どこだ!?」

「お目覚めかい坊ちゃんたち。」


 目を覚ますと何か上に岩があった。そして聞こえる知らない男の声。そして臭う動物の体臭。ついでに俺は縛られていた。隣を見ると松田が健やかに眠っている。

 そんな俺の髪を掴んで臭う男の顔がドアップで迫って来た。


「さ、どこの貴族の坊ちゃんか教えな。家紋は入ってないが…小奇麗な恰好してるんだ。名の知れた貴族だろ?」


 口臭がキツイ。でも縛り方は緩いんだよなぁ…とりあえずどうしようか。髪を引っ張ってくれやがって…こっちは不健康な生活でただでさえ気にしてるのに…ってあ、今若返ってるんだった。…でも亡くなった毛根はどうしてくれる!


「早く言え!」


 おやおや、刃物を出したなこいつ。俺が刃物嫌いなのを知らんのか?…まぁ知らんだろうな。でも無抵抗の人間にそういうことする奴って悪い奴だよね。

 俺は縄を力任せに引き千切ると俺の髪を持っていた手を跳ね除けて一度体勢を崩しながらも立ち上がり、迎撃する。


「っらぁっ!『古仙式秘奥義:破壊傀儡衝』!」


 いっけね。つい継ぐ気もない道場の看板を盗られると勘違いしたクソ兄貴がダブって裏奥義出しちゃった。反省。

 体臭のキツイ男は肩、肘、股関節、膝、の関節を破壊されて操り糸の切れた人形の様に地面に転がった。(本当は首もやるんだけどね)

 そして俺は横で眠っている大馬鹿まつだを殴り起こす。


「ん~…あ、お早う。」

「殺すぞボケがぁっ!」

「ま…待て、何で俺は縛られて…そう言うプレイから始まるのか…?」

「何気色悪ぃこと言ってんだゴラァ!」


 俺は横になっている馬鹿の腹にローキックを入れまくる。スタンピングも入れまくる。アホは手を挙げて俺を止めた。


「ま…待ってくれ。ちゃんとした理由があるんだ!選択肢が出たんだよ!」


 ほう…それなら悪いことしたな…何かこいつなりに考えての行動だったのか…


「幼女を寝て待つって…」


 とりあえずぼっこぼこにしてやった。



















「…さて、そろそろいいか。」

「待て!まだ幼女がぁっ!」


 まだ足りてなかったか?俺は膝蹴りをぶち込んで黙らせた。


「…っかぁ…俺じゃなかったら死んでるからな…?」

「黙れ、野盗に捕まっても死ななかったのは多分俺のスキルだぞ?お前の選択肢は死んだ後あの世で出会うってことだからな?」

「…と言うことはお前が俺の出会いを妨げはぁっ!」

「…今から送ってやろうか…?」


 俺が裏拳を入れて本気で威圧してやるとアホはようやく黙った。その時足音がこちらに近付いて来るのが聞こえた。


「…野盗の仲間か?」


 ならばこの中を案内してもら「ドゴォン」おう…


「さっきの借りは返したぞ!」


 アホが野盗らしき人物をアッパーカットで天井に減り込ませていた。俺は頭を抱える。


「あれ?どうした?」

「こんのアホがぁっ!考えなしに動くな!あれに道案内させれば俺らは迷わず出れただろうが!」

「そ…その手があったか。あ!でも俺の選択肢のスキル使えば出れるんじゃね?」

「…あぁ…なんとなく嫌な予感が…」

「こっちに幼女だって!ヒャッハー!」


 何かこうなると思ったよ!選択肢で幼女に会うって出てたんだもんな!俺は疲れた体をおして馬鹿まつだに付いて行った。




「何だテメェらっぐおっ!」


 遭う敵会う敵全部薙ぎ倒していく。もう八つ当たりだ。ついでに金をいただいておこう。

 俺は低めの正拳でなるべく相手を倒し、そこから腰のベルトを引き千切ってベルトごとかかっている布袋の財布をいただく。松田のには手を付けない。マナーだ。


「おぉ~平塚もこっちの世界に来たか!幼女に会うためなら力も出るってだろ?…でも戦利品に男のベルトはどうかと思うぞ。お前そんな趣味なかったよな?」


 侵入者がいると分かって慌ただしくなってきた洞窟内部から湧き出る野盗を殴り飛ばしながら松田が俺に声をかける。

 そんな時、大音声だいおんじょうが洞窟の奥から響いて来た。


「貴様ら!王女を救出しに来たのだろう!?これが何だか目に入らないか!?」


 そこでは一際大きく豪華な装備を着た男がぐったりしているあの美幼女の首に小刀を当てて下卑た笑みを浮かべていた。…名前何だっけアレ。

 



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