ニード山脈北部地域 第二戦・中断
悪徳貴族カジャル1200 VS クリーク軍南征隊2500です。
「…最悪だな。籠城されたか…」
逃げた悪徳貴族は俺らが今から攻める予定だった町を放棄して手勢を連れて自分の領地へと逃げ込んだ。
ファムさん調べではその領地は前小国の防御拠点として使われていた城で、悪徳貴族が悪政で貯め込んでいた財や兵糧もあり、力攻めでも兵糧攻めでもかなり時間がかかると思われる。
「さて…どうするか…」
各個撃破では戦力は自軍がかなり上回っているが、時間を与えてしまうと連携される恐れがある。そうなってしまえば形勢は一気に逆転だ。
「籠城戦はなぁ…面倒臭いんだよな…」
一応パターンは色々考えている。が、どれも結構面倒なことになっているようだ。
まず、最初の案は味方を潜入させて攻め込むと同時に門を開けさせる。これは鉄板だが、今回の城門は開かないようだ。
出入りしようとする者は問答無用で斬り捨てられるらしい。実際、今俺が居る見捨てられた町の住民を城に逃がしてあげた(自軍の兵士も含む)時も問答無用で射殺された。…悪政だからできること。
まぁ、このおかげで住民と軍の間に溝が出来てスゥド軍がこれ以上増えないのは嬉しいけど…
…そんな中ファムさんは城壁を越えて侵入したらしい。凄いね!いや、ホント何者だよ…何で奴隷に甘んじてたんだよ…こんな人がいるならもっと奴隷を買おうかな…?
それはともかく次の案に、ここは後回し。誰かにここを任せて別地点を落としまくる。これは…その誰かが問題なんだよな…
順当に考えてフィロド君か…それか松田。ただ、フィロド君には申し訳ないけど俺は彼に軍を完全に任せて放置できるほど信用してないんだよな…まだ手元に置いておきたい…
松田は…兵は従うと思うし、相手も魔導師相手では攻めて来れない。…ただ、松田はこれまで一回も指揮をしたことないからなぁ…相手が精神的に追い詰められて急進してきたら困る…
…待てよ?何で俺は一人だけ残すことに拘ってたんだ…?両方とも残せばいいじゃないか!アッハッハ。両方とも残せばいい!フィロド君は松田を警戒して変な真似はしないだろ!松田がにらみを利かせている間に攻められたらフィロド君に対処してもらいましょ!
「…おい、急にニヤニヤしてどうした…?何か良い幼女でも思い出したのか…?」
「テメェじゃねぇんだからそれはねぇよ。あと、フィロド卿、そんなに引き攣った顔をしてどうした?」
「…いえ…」
何だよ!俺の笑い顔はそんなに変なのか!?…まぁ今はいいや。
「さて、考えが纏まった。」
「お、どうやって落とす?」
「お前ら、俺が別地点を潰して回るからここで睨み合ってろ。」
…そんな変な顔して…まぁ詳しく教えてやるか…
「いいか?まず…」
あんまり納得してくれなかった。
でも俺頑張った。
不承不承ながら納得してくれた。
こんな感じ。向こうの反論として、「総大将が死んだら負けだろ」とか何とかあったけど何とかなった。
松田が俺の母親より優しくて不気味だった。…まぁ、俺母親に優しくされたことないけど…可愛がられたことしかない。
そんな過去は置いといて、ターニングポイント的に微妙な所で落ち着いたな。ここは楽に行くところじゃないってわかってたから別にいいけど。
で、問題点としては斥候。ファムさんは秋彦様(前は秋坊だったのがいつの間にかかなり進展してる。これは松田流されるか?と思ったのはどうでもいいこと。)
と一緒がいいという事で付いて来てくれない。
ここは、俺がどちらでもいいと言ったからこうなった。
実際、あの城の中に入れるのはファムさんだけだし、斥候が居なければ軍として終わっていると思う。情報命。
だからと言って俺の方に斥候が居なくていいと言う訳ではない。優秀なのを付けると言われたが…正直ファムさん並に役に立てるレベルはいないんじゃ…?と言ったところ意味深な笑みを浮かべられた。
で、現在その斥候と城塞都市の援軍300を待ってます。
松田たちに命令は下しておいたし、俺がどうするかも伝えておいた。伝令は松田の魔法でやり取りできるらしい。(無線機的なものを創った。)準備は大体オーケーだ。
「…そろそろか…?」
「…あ、これは…」
「松田。探査にかかった?」
「あ…うん。成程…それでファムさんは…」
「さんは不要です。秋彦さま…」
…あっまい。塩が貴重なのにここでこんな甘い空気出すなロリババア。松田はどういう顔していいのか分からない状態だぞ?
「フム…足音が聞こえてきましたな……ん?一人だけ…速いものが…?」
「…軍紀が甘いな~…まだ軍として作って時間が浅いから仕方ないけど…」
俺が渋い顔をしていると松田は苦笑。ファムさんは何が面白いのか笑いを堪えている。
「…何ださっきから。」
「…いや、何でもない。ってか、見えて来たな。」
「お…ん?先頭はあの小さいのか…子供だからといって甘くしてるのはいただけない…な…ってか速っ!」
明らかに一人だけ行軍スピードが違う。…あれ、俺と松田の早歩きより速いんじゃ…?(要するに馬より速い)
「ご主人様~!」
「…オイ、ロリババ。今おかしな声が聞えたぞ?」
「…はて?ロリババとは誰ですか?」
「しらばっくれんな。反応してる時点で分かってんだろ。何で戦場にガキを連れて来てんだ?舐めてんのか?」
「…あの子を舐めない方がいいですよ?あの子…本当に天才ですから…」
俺はファムを睨みつける。…ってあ、目線が低いから思い出したが…俺も今ガキの姿か…戦場にガキを連れて来るなとか言っても説得力の欠片もねぇ…
そんなことを考えて何か微妙に凹んでいると松田が顔を引き攣らせて呟いた。
「…【魔力】の気配がする…」
「教えてその日の内に習得しましたからね…忍びの技も…というか、言語に関しても本当にビックリするぐらい天才ですよ…」
は?
「ご主人様~!」
「ってうわっ!」
もう俺の所に来てたし!…というか…
「えへへ~ディア頑張ったよ~」
「あ…あぁ…そうみたいだな…」
今…俺の警戒を普通に潜り抜けて来たよな…?マジかこいつ…今は普通に気配があるが…
「ご褒美にギュッとして~…ん?どうしたの?ディアの顔に何かついてる?」
「泥とか。」
「え!取って!」
ヤバい。これマジヤバい。語彙が思い付かないくらいヤバい。ターニングポイント(笑)ってできるレベルでヤバい。
「…まだ俺の方が魔力は勝ってるな…よし。」
「む~!すぐディアが追い抜くもん!」
…そんなレベル!?もうヤバい。あぁ…俺の頭もヤバいみたいだな…アハハハハ結構考えてたのがいい意味でぶち壊されたよ…
そんなことを考えながら俺は兵1000を連れてこの町から出ることにした…




