ニード山脈北部地域 第一戦・終了
しばらく進軍をしてレノウの町が目前に迫った時のことだった。
後方で轟音と共に火柱が上がった。それに伴い俺は松田の拡声魔術を通して大声を張り上げた。
「…さぁて!行くぞテメェら!」
後方で火の手が上がり、レノウの町が大混乱になっている中、俺らは町の人間を無視して館に一直線に向かった。陣形は一点突破型、紡錘の陣もどきだ。(町のメインストリートを通る組が先に出て、若干迂回したものが…的な感じで自然とそうなった。)
因みに言うまでもないが、後方の火は俺がさっき命令を下した奴らの仕業。この町の特産である木を使って作られた防具だからこそ行った火計だな。
森のこちら側に3層状に火を放った。どうやってかというと…硝石を使用した簡易爆弾だ。
これを見つけたのは砦。長年糞貴族が逆らった者を殺して糞尿と一緒に捨ててた場所があったみたいで、案内してもらうとその近くに「ん?」って思うものがあったから拾って粉末にして…話をどっかから聞いたらしいディアに軽く引かれて…「ご主人様…不浄に興味が…?ディア…頑張…頑張るよ…」って軽く涙目で言われて…おっと、戦前の涙は不吉だ。この話題はもうやめよう。
まぁ、要するに
「援軍が来る前に沈めるぞ!」
「「「オォーッ!!!」」」
ってこと。頑丈にしてるけど木だからね。火には弱い。伏兵には森の中で黙っていてもらおう。もしくはもの凄い迂回して来てもらおう。
「って…ん?」
館の門が開いてる…?で、あの30代半ばの太った禿ちょろ髭は多分…
「ようこそ御出で下さいました。クリーク王国南征大将軍様。レノウ領はクリーク王国に降伏いたします。」
…無能領主だな。うん。ふっざけんな。この勢い何処に持っていけばいいんだ?兵たちがあんまり楽して勝ちすぎると全能感に浸って勘違いするじゃねぇか。
まぁ…戦わずに済んだから本当は大歓迎するべきところなんだが…
「レノウ卿か?俺がクリーク王国南征大将軍、ハルキ・ヒラツカだ。」
俺が名乗るとレノウの領主は愛想笑いを浮かべて俺に近付いてきた。それとなく松田がそれを警戒し、俺の方に近付く。
「あなた様が!若いのに大才にあふれた空恐ろしい方ですなぁ!敵対せずに済んでよかったです!」
うっわうっざ。兵を差し向けておきながら敵対してないってどんな思考してんだこいつ。
そんなことを考えてながら共に館内に入って行く。特に騙し討ちもなく和やかムードで相手は長々と降伏したんだから森を燃やした分の財産も保障しろと遠まわしに要求している。ので俺はそれに確約しないお勤め言葉で応じつつ館内を案内されて辺りを観察した。
…兵が少ない。アレ?
「…松田。」
「…この館内くらいはギリギリ探査内に入るんだが…200人ちょっとしかいないな…」
松田は俺が何を言いたいのかすぐに察知してくれて俺が聞きたかったことを教えてくれた。
それで俺は知ったが…この館戦う気なかったのかよ!
「それでは…歓待の宴という事で…」
…うぉう…こいつら宴の準備までしてやがったぜ…馬鹿か?いや、馬鹿なんだな…そんな感じだが、俺は少し相手の勘違いについて気付いていたので宴を辞退した。
兵たちにも同様の命を下し、不満げな兵もいたがそれでも待たせた。
…そしてその時が来た。
「敵襲です!スゥド軍800がこの館に向けて進軍中!」
「うぇ?大将軍様はそれを見越して宴を…?」
レノウ領主が間抜け面を晒している。俺はこの後のシナリオを考えて笑った。…だから!何でそこまで皆引き攣った顔になるんだよ!
「斥候。敵はどこの所属だ?」
「はっ!元レノウ軍かと!」
「何!?」
レノウ領主が驚愕の声を上げる。俺はそれに対して冷静に言ってやった。
「おや…先程降伏されたはずでは…」
「う…嘘偽りなどではありませんぞ!?」
「そうか。ならば、門前に迫っている兵は一体何事か?」
俺は領主と共に櫓に上る。そして狼の顔をした軍を率いる将と領主の話に耳を傾けた。
「フィロド卿!すぐに武装を解け!武器を収めろ!」
「レノウ様!この兵は何という事ですか!?もしや降伏なされたのではあるまいな!?」
そのもしやですよ~
「その通りだ!スゥド国の腐敗ぶりは知っておろう!ここはもうクリーク王国に組した方が…」
腐敗の原因の一部が偉そうにしてんじゃないよ~
「ですが!この領土はあなた様に任されたもので!そこに信頼と…」
「えぇい!周りの者は何をしておる!その愚かな獣人風情を縛り上げろ!」
見事な逆切れ!そして哀れな狼さん!
その周りにいた兵たちが狼人間を縛り上げて武器を捨てた。それにより館への扉が開かれ、この戦いが本当に終了した。
…で、問題の処理といこうか。
「レノウ卿…これはマズイですぞ?」
「いやはや…あの獣人風情がご迷惑をおかけしたこと誠に申し訳ありませぬ…ここはあ奴の首でことを収めて頂きたいのですが…」
「…俺がそれでいいとしても周りの反応はどうでしょうか?」
営業トークのノリになると敬語になってしまうんだよな。まぁここは勢いとノリが大事だからいいや。
理解していない顔のレノウ領主に俺は説明を行う。
「宴で酔い潰したところを狙って攻めて来たという噂が立てられればあなたはこの国でも裏切りの可能性ありとして権力を持てないのでは?」
「うっ…ですが、それはあなたが…」
何となく痛い所を突かれたという顔をする領主に俺は間を置かずに言葉を連ねる。
「私はまだこの国で新参者です。周りの方々を収めることはできないでしょう。そうなればあなたの進退は飼い殺し。」
苦々しい顔をして黙り込んだ領主。そんな領主に俺は笑いかけた。…だから何で引き攣る!?
「ですが、私にいい案があります。それは今噂になりそうだと言ったことを事実にすることです。」
「…どういう事ですか?」
喰いついたっ!
「つまり、あなたはスゥド国に帰るという事ですよ。数で負け、私を殺そうと起死回生の一手で謀略を用いたが失敗。それで国元に帰られるのでは誰からも責められないのでは?」
「…ですが…戻ったところで…私の行く当てが…」
「財産の一部を持っていかれたらどうでしょうか?」
その言葉を聞いて一瞬領主の目が光った気がする。
「…良いのですかな?」
「えぇ。ただ、あまり持って行かれると怪しまれると思うのでそこは考えて持って行かれるとよいでしょう。」
「………………かたじけない。そうさせていただこう。」
堕ちたっ!
その後、領主は館から出て行った。いや~要らないものが消えて嬉しいよ。さぁて、次は要る者の方に会いに行こうか。




