この辺を平定する手始めに…
俺はへクドとギヨームの居る下へと足を運んでいた。この辺りを治める領主たちの詳しい話を聞くためだ。
一応地理的なことは頭に入っているが、一般常識の範囲内なので軍用に使えるほどではなく、どこの城がどうなっているかも聞いておくことにする。
(…ところで俺の方が多分偉くなっているが…見た目15歳が偉そうにしていいものか…)
そんな葛藤を少し心に忍ばせつつギヨームに充てた部屋をノックし、入った。へクドにも別室を充てがったが、彼女は自分の君主の元を離れるつもりはないと拒否しているので二人ともここに居るだろう。
その時のギヨームの顔は見ものだった。
「…どうなさいましたか?閣下。」
「…なに。少々周辺の領地を治めている貴族たちの情報をと思ってな。」
へクドが受け答えをするが、俺の目は何故か正座させられているギヨームに向いている。
…何で上半身裸?…まぁいいけど…
俺の視線に気付いたのかへクドがこの場の状況を紹介してくれる。
「あぁ、そこのゴミ屑は今更スゥド国に戻りたいとかぬかしやがりましたので反省してもらっています。」
「そ…そうか。」
え?こいつら一応主従関係だよね?部屋を割り当てた時の忠義云々はどこに行った…?普通に窘めればいいんじゃないのか…?
(…まぁいいや。)
深く考えないことにした。それよりも優先することがある。
「へクド辺境伯爵。」
「あ…俺が辺境伯なんだけど…」
上半身裸の男が反論して来た。俺はわざと間違えたんじゃないよ?みたいな感じを出してギヨーム伯に質問した。
「ニード山脈から北側にいる主な将軍とその性格。そして能力について詳しく教えてほしい。」
「え~と…へクド~どんなんだっけ?」
へクドがもの凄く顔を顰めてギヨームの代わりに説明し始めた。
「まずそこの馬鹿です。今はクリーク側に寝返りましたが、ある程度人望があります。一つの城を管理するのであればこれ以上ない程の才能ですね。」
「おぉ…へクドがデレた…」
…目が全く笑ってないし、表情にも感情が出て無いけど…?
「ですが、ある程度の土地を管理するのは不可能かと。器が小さいので。性格は馬鹿ですね。私が元本国で馬鹿貴族に半ば無理矢理妾にされそうだった時に自分より身分が上の侯爵に対して喧嘩売って左遷されるぐらい馬鹿です。」
「いや。それはさぁ…あんな奴にへクドを渡したくなかったし…それでここに来たけどへクドの方が大事だったんだからいいじゃん。」
「っ!一々恥ずかしいこと言いますね…私一人に対して城一つ何てこと普通しないんですよバカ…」
何か見てる方が馬鹿馬鹿しくなりそうなやり取りが始まりそうだったので止めた。ニード山脈以北を取った後なら多少は余裕があるからいいけど今は急ぎだからだ。
…勿論後で詳しいことを聞くけど。
「…まぁ、領地は取ってから考えることだ。今は相手のことを知ることが先決。城はこちらの方に16個あったはずだよな?」
「ゔぅん…はい。」
興奮していたへクドも落ち着いてくれたようだ。
「主な治めている人物が7人。その内訳が民と国を憂い、讒言して飛ばされた者1人。親のコネやら辺境地でやりたい放題したい屑が4人。家柄だけの無能が1人。自ら国の為に防衛とか言い出してこんなとこにいる超忠義の人が1人でいいよな?」
「…否定はできません。」
平塚の言葉に苦々しげな表情を作るへクド。色々思うところがあるのだろう。因みにこの情報についてはファムが調べた。
…何気にもの凄いなあいつと思っていろいろ話を聞こうとした結果、何か顔を赤らめられ買われた身として松田の役に立つためだとか…
まぁ直感的に言わせてもらうと奴隷だからとか言う単純な話じゃなさそうで面倒事ではない面白そうな匂いがしたけどね。後でこっちも要チェックだと思った。
閑話休題
俺が常識として知っていたこっちの場所は左遷者が治めている説はもう古いみたいだった。実際には讒言した者は任地に向かう途中で殺されていたり、酷い時はその場で処刑らしい。
ここで好き勝手やってる奴らがニード山脈辺りで自動的に処理してくれるらしいので向こうさんの王様は気軽に気に入らない者を殺せるってことだ。
「とりあえず俺が扱える兵は2000。それで今回の目的になっているスゥド軍の全体数は15000だ。まずは近くから攻め込みたいところなんだが…」
ここは無能が治めている。因みにその無能は野心家の側近がいるらしい。俺はこれを利用して1700が立て籠もるその城を落とそうと思っている。
その側近はファム情報に依るとウチのアホ王が宴とか言って呼び戻してた時に無能に攻め込めと何度も提言したが「他の者に任せておけ。余の軍隊が減るのは嫌じゃ。」と棄却されて不満たっぷりという事だ。
…このことから以下のことがわかる。
①無能はすっごくアホ。
②おそらく大事に至るまで側近の提案が受け入れられることはない。
③不満があるという事はそこに付け込む余地があるという事。
以上の点は簡単に分かるものだが、重要なものだ。籠城は裏切り者がいれば最悪の戦法。
しかも屑の方は屑たちで勢力争いをしているので他の城(今回攻め込むのは館のような場所だが気分的に城。)を助けて私兵(元はと言えばスゥド国のものなんだが)を減らそうとは思わないイカレた状態だ。
忠義の方は無能が治めるところと逆方面に城がある。真面目くんはもっとニード山脈の方の領地なのでまだ気にしなくていい。
「…で、へクド卿はギヨーム伯が一城を守るに値する将だって言ってたな?ならば留守を任せるぞ?」
「…何名を率いられるのですか?」
「…1500だな。松田を連れていくが…」
「こちらに残るのが900ですね。それならばおそらく何があろうとも2日は持ちます。」
「…あぁ、ここに元からいる兵たちか。…ん~まぁいい。」
一瞬何故か増えた兵士数を訝しく思うが、ここに元からいた兵で自らの意思で志願している者のことを思い出し、切り替える。
…因みに彼らはギヨームにしか従わないつもりらしい。なら俺がギヨームを使えば勝手について来るってことになって結局は俺に従うってことになるんだが彼らはそれをわかっているのだろうか?
その辺も含めてまぁいいか、だ。
話が逸れたが時を逃しては勝てるものも勝てない。宴とか言う物の所為で十分に時を逃した気もするがまだこの城塞都市が落とされたことに動揺がある内に次の行動に移らなければこっから厳しくなりそうなので俺らは急いで行動を起こした。




