地理的な考えをしよう…
俺が城塞都市に戻るとディアが一目散に俺に飛びついて来た。周りの目がきついが俺はディアを受け止める。
「お帰りなさい。」
「…うん。」
別に家じゃないけどな。とも思ったが、何か言うのは無粋だと思ったので素直に返しておいた。
それはともかく、俺がいなかった間に何かなかったか尋ねる。
「何もなかったよ。」
「…というか、俺が突っ込むのもなんかおかしな話だが…ディアちゃん普通に言葉話せてるね…」
松田に言われて俺は初めてその事実に気付いた。俺にはどちらも普通に日本語に聞こえるからよく分からなかったが、簡単なことではないだろう。
俺はディアを撫で、褒めた。
『えへへ。ディアもっともっと役に立つからね!』
「…そんなに頑張らなくてもいいが…『まぁよろしく。』」
俺がそう言ったことでディアはやる気を見せた。
『じゃあ、今から戦うスゥド王国とどう戦うか教えて!』
俺はその言葉に少し黙った。
(正直言ってディアに血生臭いことは教えたくないし…万が一考えを話されたらもの凄い困るんだが…どうするか。)
ディアは俺の目をじっと見て訴えかけて来ている。…まぁ他言するにも【悪魔族】の言葉じゃ誰にも伝わらないだろうし…いいか。
『じゃあ、まずはクリーク王国とスゥド王国の戦力差は知ってるか?』
俺の問いかけにディアは頷いた。
『うん!クリーク王国の総人口は今2万人ちょっとで、そのうち兵隊に出来る人たちが6000人くらい!スゥド国は総人口20万人ぐらいで、兵隊が7万人位!』
改めて数字に直すと最悪レベルの戦力差だ。兵力差が大体11倍もある。…だがこれは総人口とスゥド王国すべての兵隊だったらという話だ。
『さて、ディア。なら何でスゥド国はクリーク王国から倒さない?普通後方の憂いを無くして前面の敵に当たるだろ?』
『え~と…スゥド国は南の…何だっけ?何とか国と仲がもの凄く悪いからだった…はず…』
ディアが少し自信なさ気にそう答える。俺は少し微笑んで頷いた。
『確かにそれもある…けど、それだけじゃない。』
スゥド国がこちらに攻めて来ない理由。それは…
『ニード山脈があるだろ?それで兵を送るのが難しくなってるからだ。』
山脈があるからだ。その山々は険しく、大昔スゥド国がまだ南方にあるユーク国と戦争状態じゃなかった頃、山脈のこちら側にあった小国がスゥド国に攻め入った時には兵の疲労も凄まじく、逆に領土内にまで攻め込まれたらしい。
尤もそれによってスゥド国が北方を全て平定して自国に並ぶ大国になるのを恐れたユーク国がスゥド国と敵対することになったのだが…
『そう簡単に兵の輸送ができないし、兵が減れば当然ユーク国が来る。だから、こちら側には攻め込んできたときの領土分しかスゥド国は持っていない。』
当時の小国のあまりにも悲惨な負け方は勝っている方のスゥド国が山越え後の戦争は出来るだけ避けようと思ったほどの戦争だったという。
主戦力がやられた小国はその後、こちら側に攻め込んだスゥド国に大半が吸収され、残る部分はクリーク王国に吸収された。
『えっと…それは分かったけど…ご主人様は何を考えてるの…?』
『問題です。ニード山脈からこちら側にあるスゥド国の人口と兵力はどれくらいでしょうか。』
勿論普通は誰も知らない。神のみぞ知るというところだろう…が、その神から俺たちは常識としてこの情報を渡されている。
『総軍1万5千。殆どは元小国軍。それに治めているのは中央の腐敗に嫌気がさして讒言して左遷された人たちだ。』
まぁ、それでも俺が動かしてる軍勢に比べればもの凄い数だけどね。なんてたって俺の軍は2000なんだし。…ま、向こうさんも全軍投入して一気にぶつかってくるわけでもないし、将軍たちも何とかできるはず。
その後は色々不安要素を並べてくるディアに俺の作戦を余すところなく説明していった。
勿論うまくいくとは限らないので臨機応変には対応したいと思っているけどこの場で考えられる範囲のことは考えて準備しておきたい。
ディアに説明することで自分でも再確認ができ、少々修正を入れることも出来た。
(後は、この城塞都市の領主…へクドだっけ?に各地の情報と将軍の情報を聞いて回らないとな。)
領主はギヨームだが、傍から見ていると主従関係は逆転しているようにも見えるので仕方ない。
平塚は勝つために奔走する。
少なくてごめんなさい。
…代わりと言っては何ですが、今週中にもう一話上げたいと思います。




