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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
スゥド王国戦~前編~
21/102

お呼び出しのようだ…

「第1王妃様が参られよとの仰せです。ヒラツカ様は至急向かわれてください。」

「…どこに?」


 宴が終わってやっと帰れる…と思っていた所にこの報告がお付きの老紳士が平塚にこう伝えた。

 平塚の反応に老紳士は勿論ご案内申し上げますと言って平塚を連れて移動した。ついでに松田を連れて…

















「…来たわね。…何で来たの?」


 老紳士に連れられて来た平塚を見てフロワが頷き、その後に続いて来た松田を見て首を傾げる。


「ふぉぉぉぉっ!可愛いっ!ごべっ!」


 興奮した松田を老紳士と平塚がきっちり黙らせて説明を入れる。


「あ~何かこの人が言うには魔法に詳しい人が居れば何か…」


 平塚のその言葉だけでフロワは理解したようで、老紳士に一瞥をくれると下がっていいと命を下した。


「それじゃあ…くれぐれも失礼が無いように。それに、お母様はご病気だからあんまり騒がしくは…」

「おい、はしゃぐなよ?」

「サー。イエッサー!」


 了解したみたいだ。そして俺らは部屋の中に案内された。



 中には優しく微笑む太陽のような女性がいた。一目見て俺は思わず息を吞む。横のアホは小声で「よかった。もしこっちにもロリババアが居たらどうしようとか思ってたぜ…」とかぬかしてたが聞こえてないみたいだったのでスルーしておく。


「お初、御目にかかります。フロワ姫のお付きのヒラツカと申します。」


 とりあえず礼儀として叩き込まれた儀礼に則って片膝をついて挨拶しておく。それに対して目の前の慈母はコロコロと笑った。


「まぁ…南征大将軍様でいらっしゃいましょう?」


 悪戯っぽいその笑みに俺は頬に朱が入るのを自覚した。


「そして…この子の旦那様…ですよね?」

「っ!お母様!」


(うわ…この人ヤバいな…)


 自身の日本語の語彙力の無さに驚くが、そうとしか言い表すことが出来なかった。目の前の女性は笑いながら続ける。


「ヒラツカ様。初めまして。私はジョルジュ・クリークと言います。ここでは堅苦しいのはなしで構いませんよ?」

「そ…それは…」


 流石にまずいだろうと思う。前の俺より若いとはいえ、この人には何かよく分からない圧力があって自然と敬語にした方がいいと思えるのだ。

 だが、彼女は目元を抑え、泣く真似を始めた。


「酷いですわね。娘婿との円滑なコミュニケーションを求める義母とはいえ母親のいうことを聞いては下さらないのですか?」

「えぇと…」


 改めて言おう。ヤバい。面倒臭い人だ。それを全面に出しておきながら何故か人から嫌われないような魅力を持っている。


「フロワからいつも話は聞いてますよ?素に戻って下さい。」

「…はい。」


 俺は折れることにした。そうするとジョルジュ様は泣き真似を止めて松田が簡単に挨拶をして会話に入ることになる。


「…それで、本日はどういった要件ですか?」


 これ位の堅い言葉は見逃して欲しい。その思いが通じたのかジョルジュ様は頷いて本題に切りだしてくれた。


「あなたがどのような方か、拝見させていただこうと思いまして。」


 その目は俺を刺し貫くかと思えるほど鋭いものになっていた。だが、その程度の視線で狼狽えるほど弱くはない。

 俺は真正面から視線を受け止め、無言の時が流れた。その沈黙を打ち破ったのはジョルジュ様だ。


「…この方なら任せても大丈夫でしょうね。成程…フロワがあれだけ言うだけは…」

「お母様!」

「あらあら…」


 一転させて和やかムードになるこの場。柔和な笑みを浮かべるジョルジュ様に年相応に怒った顔をするフロワ。

 ふと、隣の松田アホがこの年相応の顔をしていたフロワを見て幼女幼女言い出さないか気になったのでそちらを見た。

 だが、予想に反して松田は険しい顔をしていた。俺は心配になって小声でどうかしたのか訊いたが、後で話すとだけ言って会話を打ち切られた。


「それはともかく、南征大将軍様は娘のことをどう思っていられるのですか?」


 ジョルジュ様はしばらくフロワをからかっていたが、いきなり矛先を変えて俺の方に向けて来た。

 どうと訊かれても俺に幼女趣味はない…が、本人の前で言う事でもないし、あれだけ大々的に言われて困っている子供を突き放すようなことも言えず。とりあえずお茶を濁すことにした。


「将来が…楽しみな方だと。」


 色んな意味で。とは心の中で付け加えておく。だが、この発言でフロワ喜んだしジョルジュ様もそれでいいのですよ。と言った感じの笑みを浮かべていたので成功という事にしておこう。


「けほ…」


 しばらくの間話していたが、ジョルジュ様の体調がもたなくなったところでお開きとなり、俺らは今度こそこの城を出て行くことになる。

 その前に松田に訊いておきたいことが出来ていたので尋ねてみる。


「…で、どうしたんだ?」


 ジョルジュ様の部屋で明らかに様子がおかしかった件だ。松田は言い辛そうに口を開いた。


「…あの人はもう長くない。おそらくスゥド国の呪いだな。ファムさんが見つけてくれた城塞都市の禁図書にあった本に載ってた…」

「なっ!」

「解呪方法は術を執行した人間を皆殺しにすること。それ以外にない。」


 そう言った松田の顔は真剣で、ふざけて言っているのではないということがすぐに読み取れた。


「じゃあ、早く行かないと…」

「あぁ…」


 すぐに倒しに行かないといけない。少なくとも今日話して仲が良くなった人だ。死なせたくはない。

 そう思って準備を急ぐ平塚を松田は何とも言えない視線で見ていた。


(…考えすぎかもしれないが…平塚にとっての幸運があの人の死かもしれないよな…フロワ様と結婚を嫌がる平塚は結婚推進派で強い勢力を持っているあの人が死ねば大分結婚反対派が優位に…)


 平塚が成り上がる第一歩目の馬車襲撃。それは彼らが成り上がるには幸運としか言いようがなかったが、殺された御者にとっては不運以外の何物でもない。

 ファムが仕入れた情報から松田は不気味な予測を立ててしまっていた。


「おい。早く行こうぜ。」


 だが、目の前にいる友人はそれに全く気付いていないようだ。松田は戦争をするというだけで手一杯な友人の余計な重荷になるかもしれないその情報を伝えることなく、付いて行った。




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