さて、凱旋といこうか…
まぁ王の命令とあれば仕方がないので宴の為だけに帰る。打てる限りの手は打っておいたからまぁ大丈夫だろう。
「はぁ…面倒だなぁ…」
「俺は楽しみなんだけどお前色々考え過ぎじゃないか?」
「考えるのをやめたら死ぬぞ。思考を止めるなってよく言うだろ。」
「…よくは言わないと思うが…」
因みに馬より走った方が早いので、現在疾走中だ。そこまで遠い所にはないので俺らも疲れる前にクリーク王国の首都の門前に着いた。
「…何かこうやって見ると城塞都市スゲェな…」
「あっち栄えてたなぁ…」
城壁だけで見れば王城と同じ規模の城塞都市、ルノティアのことを思い出しよくあんなところ奪えたなぁ…と今更ながら感じ入って門兵のところに向かって、城の中に入ろうとすると止められた。
「ヒラツカ様!マツダ様!何故徒歩で参られたのですか!」
「え…そっちのが速いし…」
実に合理的な考えだと思うが、何がいけなかったのか…
「確かに早かったですが!少しお待ちください!パレードはもう少し後の時間帯を予想してましたので住民が準備できていません!」
住民の準備…?待て、嫌な予感しかしない。
「馬は王家の方から軍馬を借りて来るとして…あ、【光の英雄】様方はここでしばらくお待ちください。」
「ひ…【光の英雄】…?だ…誰がかなぁ…?」
俺は松田でありますようにと念じながら引き攣る顔を必死に押さえつけて門兵君に訊いた。
すると何を言ってるのかよく分からないといった顔で尋ね返された。
「ヒラツカ様の事ですが…?何を仰っておられるのでしょうか…」
『お前こそ何言ってんだこの馬鹿が!「いかんつい日本語が出た…」
八つ当たり良くない。日本語でまだ良かった。結果オーライだ。待て、現状は全くよくない。松田何笑ってやがる。殺すぞ。
俺は思考がまとまらないまま門兵君に導かれて詰所の中に連れて行かれた。後でサインを書いて欲しいと言われたが、サインなんか持ってない。
「はぁぁぁぁ~」
「落ち込むなよ【光の英雄】殿。」
「黙れ。」
大体何故に【光の英雄】?やったことは砦で敵兵に扮して侵入し、不意打ち。それに軍勢の数と魔導師の実力をペテン。それで戦争のトリガーを引いた…何か冷静に自己分析すると最低だな俺。
あぁ…決意なんて簡単に挫けそうになるものだね…そんな感じのことをぐるぐる考えているとまた溜息が出て来た。
「はぁぁぁぁ~」
「溜息つくと幸せが…」
「黙れ。」
ルノティアに帰りたい。まだ事後処理終ってない。後の分はディアがやるって言ってたけど、書類もほとんど残ってないけど、心配だから帰…
「お待たせいたしました!それではこれにお乗りのなって威風堂々とメインストリートを真っ直ぐ行ってもらえれば結構です。あ、途中手をお振りになれば民衆の心を掴めるかと…」
俺に任されたのは白馬。真っ白です。松田のは栗毛。乗り方は常識の中に入れてあったので乗れますが、今から常識と羞恥心に抗ってきます。
「それではよろしくお願いしますね!」
門兵君がそう言って扉を開くと大きく息を吸い込んだ。
「【光の英雄】様の凱旋なりぃぃいいいっ!」
わぁっ!という群衆の声、鳴り響く楽器。表面には出さないものの完全に引き攣った俺の心の顔。
そこで付けられた従者に馬は引かれてゆっくりと進んでいく。さっさと進め!鈍いんじゃわれぇっ!
隣で松田が手を振って民衆ににこやかに接している。馬鹿な…あり得ん…と思ってたら松田の顔がほんの僅かな時間だけ引き攣った。
何か面白い単語が入ってきた気が…
「【黄昏の大魔導師】…?」
(これなら条件は五分だな。)
俺にも少しだがゆとりが出て来た。その後はまぁ個人的には大変だったけど、結果平凡な感じには出来たんじゃないかと思う。
「おう【光の英雄】」
「何だ【黄昏の魔導師】。」
「…お互いこの名前は封印しようぜ…」
「了承だ。」
宴会前の会話だ。これから宴会が始まるのだが、俺らは挨拶なんかをしなければならないそうだ。乾杯の音頭なんか会社でやった時と同じノリでいいのだろうか…
「俺が乾杯の音頭で、お前が締めくくり。」
「…まぁあの会社の時と同じでいいか。」
結果、まぁ特に問題はなかった。
「良かったな。」
「…終わりはお前だからな?」
「いや、何かキリが良い所で王様がなんか言ってその後は自然解散らしい。」
「あ、ずるい。」
宴は立食式。最初の方は一度王様が俺らと話をしたが、その後は貴族たちが王様の下へ向かい、俺らは安全…と。何か来た。
「ところでヒラツカ殿。側室の方がおられないとのことでしたが…」
ん?てめぇ確か俺の騎士入りに反対だった貴族じゃ…何の用だ?まぁ挨拶ぐらいはするが…
「えぇ…まぁ。」
「そうですか!それならば丁度よかった。私の娘がですな。今年で15歳になるのがおってですな。」
「ヒラツカにそれは要らない…」
…あ、久し振りに見た幼女様。…久し振りに見たって専属護衛としてどうなんだろ…?あ、貴族がそうですかって言った後逃げてった。
「…ヒラツカ…ああいうのはきっぱり断る。」
「そんなことしていいのか?」
相手は貴族。こっちは成り上がりで疎まれている得体の知れない何か。立場的に断ったら…
「いい。私が許可する。」
「つってもなぁ…ってあ、しまった。」
公の場で王族にため口きいてた。…誰にも聞かれてないな?ふぅ。幼女様がおっかなくて誰も近付いて来ないのが幸いしたな…
「良いに決まってる。…もうすぐその理由も分かる。」
「ん?それはどういう意味です…」
か、という前に王様が突然何かの宣言を行った。それで何か紙が捲られて「ヒラツカ・ハルキ王族入り、及び南征大将軍に任命」とあった。
へー平塚君タイヘンソウダネ…
松田が何か変な事してやがる。そしてこっち向いて笑った。
『ふざけんなぁぁぁぁっ!』
日本語で叫んだが、周りの目はこちらに来ない。静かになった場で王様の声だけが聞こえてくる。
「此度の戦功、並びに【光の精霊】により選ばれておること、そしてこれからの期待を込めてフロワ・クリークの婿に…」
(【光の精霊】?だからなんだ?)
―――何?またあんた私のこと思い出したわね?毎回毎回出て来ると目立つのよ。なにもないなら思い出さないで!―――
辺りに光が満ちてくる。…ここまで俺を追い詰めるか…ざわめく周囲に力なく笑う俺。
周りは精霊様の祝福だ~ってよ。アハハハハ…
―――あら、気が利くわね。信仰心は美味しくいただくわ。―――
何か満足したら出て行った。もう好きにすればいいよ。知らんよ。
「これより宴に入る!目出度き日に相応しい賑わいを!」
うん。すぐにルノティアに帰るね。待っててね。
そんな俺の心境なんかガン無視で宴は3日続いた。途中ファムが敵の斥候捕まえたりして至急帰りたいですって言ってもフロワとの結婚で嫉妬に狂った松田にばらされて帰れなかった。
八つ当たり良くない。知ってる。…でもちょっと泣いたっていいよね?俺はただ一戸建ての家を買いたかっただけだったのに…どうしてこうなった…
何か書いてて自分でも終わりっぽく感じましたが、続きます。




