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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
立身編
17/102

どうするか…

 スゥド王国。


 重装歩兵が主戦力で3000。全体戦闘兵は農民を合わせておよそ7万。


 クリーク王国


 戦闘の為に集められている兵は騎士と呼ばれ、騎士は85名。農民兵を合わせて全軍5000。



 さて、ここで問題です。クリーク王国がスゥド王国に喧嘩を売ったらどうなるでしょうか?


「…改めて考えてみればおっそろしいことやろうとしてるな…」

「…まぁ兵力差だけで戦争の結果が決まるわけじゃないし…斥候部隊が欲しいな」


 まだ、スゥド王国の主力は南征の最中だ。こちらに攻めてくることはないだろう。その間に兵力差を出来るだけ無くしておきたい。


(…それをクリーク王国から本気で文句が来る前にやってしまわないといけない…なんて無理なことを…生きてるだけで本当に奇跡だよ…)


 冷静になってみると本当に幸運補正があってよかったと思う。なければクビどころの騒ぎでは済まなかっただろう。死んでいるのは間違いない。


「斥候か…でもあの女神様からもらった基礎知識の中に今のスゥド国の内情は微妙に入ってるよな。」

「情報は鮮度が命だ。…今回はまだ何とかなるが…次からの戦がどうなるか…」


 一応今ここに居る100名の人間だけで次の目的地の城塞都市一つ落とす算段はついた。しかし、まだ引き返せるかもしれないと思うことが俺の指示を引き留めようとする。


(…松田にあんだけ言われたのに情けねぇ…街を落とすには正しい情報が向かう前に流言を流して進まないと…早く行かないといけないんだが…)


 この世界には通信機器なんかもない。それに移動手段も馬より速いものはない…特殊な人間を除いて。


(この世界の魔法は大したことないが…大魔導師とかいうのには気を付けないといけないし…まぁスゥド国には一人しかいないし、南征中だけど…)


 100人しかいないことを踏まえ、色々なことを考える平塚だったが、松田にしてみれば急に黙られて暇になって困る。


「おーい。だんまりしてても伝わんねーぞ?俺は何すればいいんだ?」

「…こっから一番近いスゥド国の城塞都市を落としに行く。昨日降伏して来た農民兵にもう一働きしてもらいたいな。」


 松田が五月蠅いので平塚は仕方なく策の一部を教える。それと今のうちに質問も加えておく。


「良くわかんねーけどわかった!」

「…それとお前今どれくらい魔法使えるんだ?」


 平塚の問いに松田は少し考える。


「…多分大魔導師ってのが情報通りならそれ位はいけると思う。」

「よし。勝った。」


 平塚は勝利を確信した。それならばすぐに進軍をしなければならないと腹を括る。


「松田急げ!今回は農民兵の働きにかかってる!」

「へ?あ、うん。」



















「さて、君らは一時的に城塞都市に逃げて欲しい。その時に噂を流して欲しいが、城門の兵に『クリーク王国は今回本気で侵略しに来た。』ということと、『大魔導師』がいること、『降伏者は優遇され、解放された。』この3つを話すことは絶対で、後は聞かれた時に言うぐらいでいい。」


 前回の降伏した人々が来て砦の大広場(俺らが占領する前は貴族が前線に連れて来た踊り子たちが舞ったり、宴会をしていたらしい)がいっぱいになると俺はこう指示を出して、解散させた。


 それが終わると松田が俺の所に来る。


「噂流すならそんな消極的なのはどうかと思うが?」

「アホ。そんな不自然に話しまくると怪しまれるだろ。何もせずとも戦渦から逃げた人の話は色んな人が聞きたがる。それで十分だし、門兵に話せばそれはもちろん上に行く。元々こっちが果たせればそれでいいんだよ。」


 大体からして俺が一夜の過ちをしてしまった時点で噂はすでに流れている。憶測が飛び交うその状況に新しい、しかも戦争が起こった場所にいた人物たちがほぼ無傷で俺が言ったように言えば圧倒的兵力で攻め込み、降伏した後の処遇についての信憑性は上がる。


 …もっとも、上の人間は怪しむかもしれないが…まぁ考える暇は与えないがな。


「松田。使者として俺とお前、あと…あ!」


 俺はここで重大なことを思い出した。


「…幼女様のこと忘れてた…」

「ん?あの方なら自国に戻られたぞ?何でも大事なことが…」

「不味い!もう動いてたか!面倒なことになる前に…」


 俺がやっぱり逃げようかと思ったところで松田から思いもよらない言葉がかけられた。


「あ~…大騎士叙勲の準備って…」

「…は?」


 とりあえず訳が分からなかった。罰される前に功を大量に上げて、うやむやにしようと思っていたのに何故か叙勲されるというのだからこれはしょうがないことだと思う。


「何で?」

「…そりゃ軍の全権を任せるためらしいけど…」


 What?


「I cannot understand what you said.」

「大丈夫か…?いや…お前が寝てる間に俺の所に来て『いただきます!?』って思ったらお前に【精霊】が宿っているのは知っているか?って話で、【光の精霊】が宿ってるって話をしたら矢のように飛んで行った。」


 …【精霊】関連か…これに関してはマジでよく分からんからな…情報とだいぶ違うし…


「…まぁ首が繋がったんならいいか。それより松田。今日の午後に城塞都市落とすけど準備しとけ。大魔法を行使する予定があるからな。」

「ん?どんなの?」

「なるべく派手なの。」


 すると松田は何かぶつぶつと呟いていたが頷きながら去って行った。


『…もういい?』


 ディアは俺にずっと黙らされていたが、そろそろかまってほしいようだ。


『そうだな…3時間は相手できるな。』

『…忙しいの?』

『かなり。まぁ…一緒の時間は少なくなるな。』


 ディアは少し暗い顔をした。


『…戦争続けるの?』

『じゃないと殺されるしな』


 俺は特に隠し立てもせずに答える。ディアは心配しているみたいだが…まぁ理由も知らずに保護者に死なれたら大変だろうしそうだろう。


『死ぬ気はないから安心しろ。国とか関係なく逃げる』

『…死なないでね。ディア…もう一人はやだよ…?』


 がっはぁっ!上目遣い+涙目の美少女いただきましたぁっ!…落ち着け。変態か俺は…


「…お前ずるいよなぁ…俺の方には色々言ってくるのによぉ…」

「うっせぇ。ロリババアの腕に抱かれて寝てろ。」

「うっ…」


 俺の舌鉾に松田が息を詰まらせる。


「ファムさんの…ファムさんの腕枕はな…ミルクの匂いがしてな…とっても落ち着くんだよぉ!」

「いいじゃねぇか…」

「何か負けた気分になるんだよぉっ!」


 何か不思議な感じに切れている松田は置いておいてディアを甘えさせる。色々柔らかいものが当たって嬉しかったです。



















「…それはそれとして、そろそろ始めるか。松田。」

「…準備は出来てるぞ?」

「何の魔法を使うかとかは今から道中で決めながら行くからな?」

「魔力の方は大丈夫だ。」

「勝負は一瞬だ。いいか?基本的に喋るなよ?」

「へいへい。」


 半日が過ぎて切り替えを済ませると俺たちは砦を後にした。




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