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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
立身編
15/102

一応戦後だけど…

 …さて、次にこの農民兵の持っていた土地を奪い取らないとな。糧秣は焼き払ってしまったし…まぁ短期的にはここにいた糞貴族が貯め込んでいた金で何とかなるが長期的なことを考えないとな。


「おーい平塚ぁ斥候放ったけどこの先しばらく敵いなかったぞ~」

「…そうか。とりあえずこの辺の村の領主を集めてくれ。内政の事で話がある。」

「りょーかい。」


 そう言うと松田は闇の中に消えていった。…何か進化してないかあいつ…


『ねぇ…ご主人様ぁ…ディア構ってもらわないと死んじゃう。』

『戦争中だから後でな。』

『はぁい…』

『ファムと遊んでろ。』


 ディアはいつもやる気がない平塚が何かにやる気を出してるのなら仕方ないか…と離れて行った。


(…さて、捕虜の話によるとスゥド国のここから一番近い軍事拠点はここから20キロほど離れているらしいが…どこまでを支配下に置くかがポイントだよな…)


 その辺は微妙な所だ。門前町として守る範囲が決まっていない。クリーク王国がここまで攻め込んだのは初めての事だというのだ。


(全く…ただ防衛のために兵を出すなんて阿呆か?何も得られないなら戦争なんかするんじゃねぇ…)


 当初の目立たないとかいう考えはすっかりどこかに飛んでいる。あまりにも戦時下のことを分かっていないので腹が立っているのだ。


(戦争するなら確実に利益を見込んだ戦を!領地内で戦争は下の下!攻め込まれるくらいなら攻め込め!戦う気概なしに何が騎士だ!)


 平塚は前世の影響からか、自分の仕事をきっちりこなさないのがムカつくのだ。巡り巡って現在騎士になっている自分に仕事が回ってくる可能性があるので先に叩き潰すことにしておく。


(…スゥド国は息の根を止めない程度に潰してさらに南方にあるジャヌーブ国の防波堤になってもらうか…いい塩梅に潰せるだろうか…)


 ジャヌーブ国は結構な強国なので今は事を構えたくない。できることなら同盟を結んでおきたいところだ。


(…だが、今のクリーク王国では属国扱いにしかならないだろ。友好関係にある北と西は侵略できないから東のエスト国にいちゃもんつけて呑み込みたいなぁ…)


 近衛騎士の仕事からかなり逸脱しているのに気付かない平塚。


(まぁ妙な動きを見せたら北も西も食うけど…どうしようか。北の異民族…俺らの方がよっぽど異民族だが…彼らと同盟を組んでおくべきか?この国では評判が良くないが情報によると気さくらしいし…まぁ言葉が違うらしいが俺は通じるだろ…)


 そこまで考えて平塚は止まる。


(いや、今動くと妙な考えを持たれて攻め込まれるか…うちの国力じゃスゥド相手で精一杯…綱渡りでギリギリ勝てるかどうかって所だしな。今は様子見で…)


「おい平塚。」

「わっひゃう!何だ?」


 おぉ…考え事し過ぎて気配に気付かなかった…敵意ならすぐに気付いてたんだからな!ほんとだぞ!


「…いや…何かその…斥候がね。」


 何か言い辛そうにする松田。いいからさっさと言え。


「…戦渦に巻き込まれるのが嫌だから結構な村人の数が逃げたって…」

「…そうか。」


 まぁ考えられない話ではないな。寧ろよくある。季節は秋の終わりで、収穫も終わってるし金になる荷物もある事だろう。財政にゆとりが出たからスゥドの馬鹿貴族どもは戦争吹っかけて来たんだろうし…


「まぁその辺はいいや。うちの兵は基本農民兵だし、農業ならお手のものだろ。」

「…そういう問題じゃないと思うんだがなぁ…」


 松田は微妙な顔をしている。俺はそんなことよりと言った。


「この辺りの領主はいなくなったんだな?」

「へ?…あぁまぁ…」

「そうか。じゃあ良いことができるな。」


 俺は快活に笑ったつもりだが松田の引きようから見てろくでもない笑みだったことは想像ついた。



















 とりあえず俺は捕虜の農民兵を解放した。金はあるが飯はない。一応金を配っておいたから積極的に裏切ることはしないだろう。

 そして空白の席になった領主の座に農民兵のリーダーをしていた誰かを付けた。本人は恐縮しまくっていたがその親は喜んで受けることだろう。この辺りの地域は中央貴族にめちゃくちゃにされてきたらしいからな。そこに金を持って領主としての権利まで渡されれば尻尾を振ること間違いなしだ。


「ふぁぁ…」


 うん?この程度の徹夜なら余裕だったんだが…あぁ、精神が肉体に引き摺られてるのか…

 そこに幼女様が勢いよく入って来た。


「ヒラツカァっ!何をしておる!」

「あぁ幼女様…俺眠いんで…」

「この戦いは形式だけのものだったのに何戦渦を拡大させておる!えぇい…私の所為だ…」

「あぁ…俺の所為っす」


 幼女様が何か言ってるみたいだ…眠い…ベッドベッド…暗くてよく見えん明かり明かり…


 ―――何か非常に不本意な呼ばれ方をした気がする…―――


 おぉ明かりだ…ベッドこっちか…うん?幼女様が驚いて固まってる…


「せ…精霊様…」


 ―――そう!これが普通の感覚!あんた自分がどれだけ偉大…寝る気!?―――


「そうだね。タンパク質だね。」


 ―――はぁ!?とりあえず寝るなら帰るわよ!―――


「お休み~」


 ―――えぇ!―――


「…ヒラツカ…こういう訳だったのか…?」

「そーいうことで…お休み…」


 幼女様の言葉の意味が分からないが、俺は睡魔に負けて眠ることにした。その後幼女様が何かやっていたがまぁ気にしないことにしよう…




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