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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
立身編
12/102

初仕事だけど…

 とりあえずディアはずっとくっついていた。当然、風呂にも付いて来たし寝る時もずっとくっついていた。流石にトイレの時は許可しなかったが…

 本人曰く、ずっと気を張って生きてきたけどこれからは守ってもらえるから緩くなったらしいが…こいつ成長したら独り立ちするの分かってんのかな…?


 まぁ別れる時期の話は精霊と話し合っている。本人にすると泣くし…


「で、護衛にまで付いて来たということです姫様。」

「…気に入らないけど分かった。ヒラツカは保護者なのね?その子の…」


 見た目は大人、素顔は2歳の少女が本物の子供体型で実際にお子様…


「…失礼なこと考えてないでしょうね…」


 …お姫様に睨まれて俺の後ろに隠れている状態の説明をしてました。


「…それで?食事は私とあなたの分しかないのだけど…」

「うぅ…我慢します…」

「…俺の半分やるよ…」


 冷たい王女様の威圧でビビりまくりのディア。…買われたときの威勢はどこに行ったんだろ…


「…はぁ。私も鬼じゃないから何か準備してもらうことにしましょう。」


 王女様の計らいで何とかなったが…ディア…もうちょっと頑張れ…


 終始ビビりっぱなしのディアを見て俺は溜息をつきながら食事を終えた。












 食事後、砦へ移動することになっていたので松田も合流して移動を開始する。移動は馬車だ。ガタガタしているが体幹の問題で俺は動かなかったので特に問題はないし松田は…何か…浮いていた。

 そんな松田を見て魔法について教えてもらう約束をしていたのを思い出し、移動中に教えてもらうことにした。


「…まぁ要するにここの魔法ってルーン文字っぽいんだよ。姫様のはイーサ。縦線一本で意味は氷だったから俺も簡単に分かった。…でもアレなんだよ俺もあんまりルーン文字には詳しくないからゲルマン共通のフサルクしか知らないし、文法とかも分からないんだよな~」


 …が…何言ってるか全くわからん。


「でもアレっぽいしなあの人から貰った常識からすると魔法使える人の方が少ないみたいだし、使えても戦争に利用できるまでじゃないってことだから大丈夫じゃないか?」


 全く理解できていない顔をしていたのを察してかフォローを入れ始める松田。


「…とりあえずルーン文字ってのを覚えればいいんだな?」

「まぁ…今まで見てきたやつがそうだっただけかもしれないが…一応そうだと思う。」

「じゃあ頑張るか。」


 俺はとりあえず道すがら松田に色々なルーン文字を教えてもらった。


 一時間くらい経って砦に着く。このクリーク王国は王国というのは名だけで、実際は小さな自治区だ。5000人ほどの手勢で本当に騎士、貴族なのは100人に満たない。

 これから向かう砦は騎士団ではなく、農民兵が義勇軍として働いている所で、彼らが周辺国と戦争になった時に心を掴んでいなければ戦争になった時に困るので定期的に巡回に回っているのだ。


「…えーと…王女様。私は何をすればよろしいのでしょうか。」


 食事時に喋るなどぬかしておきながら俺の身元確認してこなかった王女(名前は忘れた)に俺のやるべきことを尋ねる。


「…私の後ろで立って、警護をすればいいわ…ただ立ち方に気を付けること。」

「わかりました。」


 それなら任せろ。上司の後ろに立っておくのは得意だぜ!


「…それと、フロワ様って呼びなさい。」


 すっげ~やだ。子供を様付けで呼ぶのは何か抵抗がある。こう…可愛げがあって年相応な子が耳年増で様付けしろ~とか言うならまだしも見下されてる気がする奴相手に様付けはムカつく。


「…不敬ですので。」


 断った。役職に様付けはまぁいいからそっちでやってるのさ~小さい男というなら小さいと言ってろ!


「…そっちの子は名前で呼んでいるのに?私よりそちらの子が重要なの?」

「…何言ってるんだこいつ…阿呆か?」

「…アホ?」


 あ、いっけね声に出てた。てへ。


「おい平塚男のテヘペロに需要はない。キモいからやめろ。」


 怒れる幼女様相手にテヘぺロを敢行した俺を松田が微妙に間違った方向に訂正を求める。


「…はぁ。まぁいっか。免職くびにしたいならどーぞ。」

「…しない。ヒラツカ…何で私をアホと言った?」

「べっつに~自分で考えろ~」


 いかんいかん…どうも肉体に精神が引き摺られているみたいだ…クソガキみたいになってた…


「…とりあえず。フロ…ワ?様仕事しましょう。」

「…名前すら覚えていなかったの…そう…そうなのね…?」


 なんか怖い雰囲気で幼女姫は馬車から降りて視察して回った。


「…何気に人気あるんだな~」


 俺は巡回していると農民兵たちがフロ…ワ。フロワを見てびしっとした後小声で言いあっているのを後ろから付いて行きながら聞いてそう思った。

 因みに俺を見て何だあいつみたいなことがよく言われた。警護してるのにディアがべったりなのだからそう言われても仕方ない。


(ふむ。嫌われているのは貴族たちからだけか~)


 そんなこんなで仕事を終えた時に微妙に誇らしげな顔でこちらを向いた時に褒めて欲しそうだったのを見て俺はこいつまだ子供なんだなぁ…と実感することが出来た。

 そう思って帰りの馬車の中でふと気づく。


(…あ、免職になっても別にいいし無理に敬語使う必要なくね?…あぁでも一応王族としてのメンツはあるし、人前でこの口調は止めておくか。うん。ストレスはためると体に悪いから無理は止めておこう。)


「…ヒラツカ。何を考えているの?」

「ん?お前との接し方。」

「…どうする気…?」

「必要以上に面倒なことをしないという方針に決まった。」

「…そうか。」


 まぁ行動方針を決めて行動すれば後々楽だしな。俺は本日十回目となる松田の暴走を止めながらそう決めた。


「…それにしてもヒラツカは凄いな。」

「ん?」

「皆が私を守る力があるのか?と言って襲い掛かって来たのに怪我一つさせないで勝つのだから…流石…」


 あー…怠かったから半分意識とんでたなそん時…その戦いの後に「俺が活躍してない!見ててねフロワたん!」とか言って折角怪我一つ無しで倒したのに無駄に傷つけた阿呆がいたからそっちの制裁の方しか印象に残ってない…

 ってか、こいつの奇行こっちに来てから酷くなってるよな。これがこいつの日常だったら確実にお縄だし…こいつも肉体年齢に精神を…?

 そうなればこいつの高校時代はおっそろしいな…


「…秋様はやんちゃですぅ…」


 ファムロリババア外面バージョンが実にあざとい口調でそう言って松田を膝枕してあげる。松田は意識がない中で苦悶の表情を浮かべつつ俯せになり…これ以上は見るまい。


「ひゃっ…くすぐったいですぅ~」

「…ご主人様も膝枕する~?」

「いらん。護衛中だ。」

「…じゃあ…その…私…なんでもない。」


 なんか王女が言っていたが何でもないそうなのでいいことにして城に戻った。


「…では、これからは部屋での護衛になるけど…ヒラツカは私の名前を覚えてないみたいだから。はいこれ。」


 400字原稿用紙を5ミリ程束ねた紙を渡された。


「…これは?」

「これに私の名前を全部書いて。…覚えたら別に書ききらなくてもいいけど…」

「…要するに姫様の名前を覚えればいいんだな?」

「姫様は止めて。…フロワって呼んで欲しい。けど!その…今の無しでフロワ様って…」


 俺は黙って用紙を受け取ると用紙にフロワのフルネームを書き始めた。


「え…えと…」


 あまりの速さにフロワは何も言うことができない。


(様付けは嫌だっての…自由になったのに何でそんなことをしないといけないんだ…)


 俺はその一念で紙に文字を書き綴る。姫さんが出した課題は用紙に全部名前を書き綴る。か、名前を覚える。

 つまり書き終えて名前を覚えていませんなら別に問題はない。様付けはしなくていいのだ。


 そして俺が書き終えてその旨を告げると姫様は非常に悲しげな顔をして俺を下げさせた。


 …なんだってんだ。




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