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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
立身編
10/102

せっかく買ったけど…

「…ところで平塚。選択肢が城に戻ると町を探索するなんだが…」


 宿を探していると松田が不意に俺にそう言ってきた。


「城に戻るねぇ…何だろ?あんまり関わりたくないんだが…」

「仕えておいてそれは無理だろ。」


 くっ…アイデンティティが一度崩壊して常識人モードになってるとはいえ松田に馬鹿にされるとは…

 因みに常識人モードは本気で疲れている時などこいつがピンチの時に起きる事象で例としては徹夜での仕事が3日連続続いたときくらいに起きる。(6日を越すと壊れるのでまた別のモードになる。)


「…まぁ宿に泊まるって選択肢がないし…城に戻るしかないだろうな。」


 松田が出したまともな案に俺は従った。



















「…戻って来たが…どこに行けばいいんだ?」

「何か俺らに部屋が与えられてるらしい。こっちみたいだ。行こうぜ。」


 おぉ…何か選択肢が役に立ってる…馬鹿にして悪かった選択肢!


『ね~ご主人様って本当に城に仕えてるの~?』


 松田が先行して進んでいると飯を買ってやってからべったりな悪魔少女、ディアが後ろから俺の袖を引いて訊いてきた。


『まぁ不本意ながら。』

『奴隷買ってていいの?この国じゃ表向きは禁止されてるはずだよね?』

『…え?』


 俺の知識にはこの世界は奴隷オッケーって…


『もしかして知らなかったの?』

『…あぁ。』

『えっ!それじゃどうするの!?なんでオッケーされたのか聞きたくて訊いたのにそんな答えは聞きたくなかったよ!』


 そんなこと言われても困る。…結構損したなぁ…だが…2歳の女の子を奴隷としてテイクアウト。それを王家に見せびらかす。…国の恥どころじゃねぇ…俺の人生が終了する。


『よし、え~と…奴隷解放はあぁ【リベレ…『ダメ!』イション】?』


 …発動しない。発音が駄目だったか?それともRの発音の問題か…あとディアは何事?

 そう思って見ると涙目で首輪を守っていた。


『…どうした?』

『捨てないでよぉ…頑張るから…』


 ―――オイ、そこの外道。―――


 あ、悪魔。さっきから静かだったな…そういえば天使の方は?


 ―――キィーッ何か用!?―――


 あ、いた。


 ―――何か用なの!?用があったから私を呼んだんでしょ!?何か言いなさいよ!…まさか何もないのに呼び出したとかはないわよねぇ…―――


「どこにいたんだ?」


 ―――実家てんに帰ってたのよ!野獣のような人間に無理やり契約結ばれたから!泣き寝入りよ!それで何の用!?そこの泣いてる子をどうにかすればいいのね?―――


「おぉ出来るのか。」


 ―――『天は身を焦がし我が下へ全てを焼き尽くす怒りの雷を捧げん!【天雷】!―――


 ―――殺す気か!『闇は身を包み我が下へ全てを遮断する闇の衣を捧げん!【闇衣】!―――


 光っ…その次の瞬間俺の目の前は真っ暗になった。


 ―――テメェあんまり好き勝手やってると神降臨するぞ?―――


 ―――あの方なら絶賛書類整理で来れないわよ!よくも邪魔したわね…―――


 ―――お前…契約者から解放されてないのに契約者が死んだらお前も死ぬって覚えてるか?―――


 何か口論が始まったので放って置くことにして完全に泣き出したディアの方をどうにかすることにした。


『…さて、ディア?』

『ご…ごわがったよぅ~何で晴れてるのに雷がぁ?』


 ディアは泣きながら俺にしがみついた。爪が立っててかなり痛い。だが怖がらせた原因の雷は俺の所為なので甘んじて受け入れる。


『もう大丈夫。アレは理不尽なものだからね。』


 ―――何よあんたの所為じゃない!―――


 光の精霊の言うことは無視だ。


『…大丈夫?』

『大丈夫だ。』


 元凶だから心苦しい部分もあるが…落ち着いてから話そう。今はディアを落ち着かせることが先決だ。

 その考えが功を奏したのかディアは落ち着いて来て泣き止みながら言ってきた。


『ディ…ディアはね?悪魔だからね。1歳でね。悪魔として生きるための祝福を【闇の精霊】様から貰うの。』


 確認の意味を込めて悪魔の方を見る。悪魔は頷いた。…あれ?天使がまた消えてる…


 ―――何よ!また呼んだわね!?嫌がらせでもしたいの!?焼くわよ!?―――


 成程。帰っていたようだ。気にすると出て来るらしい。ぎゃあぎゃあ喚く天使を無視してディアの説明に耳を傾ける。幸い社畜時代のスキル。長話の要点だけ聞き取るが発動していたので話に問題はない。


『それでね。急に色んなことが分かって怖かったの。それで精一杯来る人を脅かすようにして睨んだりしてたの。』


 あぁ、だから初めて見た時に目つきが悪かったのか…あの時のギャップってのは俺も軽い衝撃を受けたが…今みたいな顔もかなり…ってはっ!違う違う!


『それでも買われちゃったから何とか逃げようと思って契約の時に隙を見つけようとしたけど無理で…』

「おい、、何で止まってるんだ?行こうぜ?」


 先行していた松田が戻って来た。その背にはファムロリババアが乗っている。だがそれで逆に平静を保っているのだろう。


『…歩きながら話そうか。』

『雷ぃ…』


 俺から離れようとしないので俺は仕方なく抱っこした。


「…おい犯罪者。その子に何した?」


 やべぇこいつに言われるとか世も末なんだが…だがこの状況では仕方ない。とりあえず弁明しておこう。


「…急に雷が降って来たんでな。腰抜かしてるんだよこの子。」

「へぇ…」


 全く信用してない目だ。


「おいおい気付かなかったのか!?」


 ―――あー…【精霊魔法】は基本契約者と対象にしか見えないぞ。俺らってのは人間に干渉すると簡単に国なんかがひっくり返せるから制限が厳しいんだ―――


 成程。俺が社会的にピンチなのはわかった。


「…そういうことにしておくよ。…まぁヤるなら合意の上でな…」


 こいつの生暖かい目腹立つ!


 まぁそれはそれとして話も終わったし誤解を解くか。

 要するに【悪魔語】が分かる人と分かって少し安心したけど奴隷だから弱気に出たら何されるか分からない。

 【悪魔族】と言うことを生かして酷い事すると何されるか分からないぞと思わせようと生意気キャラ演じてたけど飯ちゃんとしてたし言葉も通じるし何か【闇の精霊】様からお告げみたいなのがあったから俺に付いて行こうと思ったと。

 で、さっき急に捨てられそうになったから怖くなったし、お告げを破ったから酷い目に遭うと思っていた所に晴天の雷…と。


 …とりあえずお前の所為か!と悪魔の方を睨んでおく。


 ―――オイオイ、買ったのはあんただろうに。それに言葉も分からない土地に知識はあるとしても2歳児を放って置くって人としてどうかと思うけどね。―――


『違う違う。捨てるわけじゃない。別に奴隷じゃなくても連れていけるだろうが…』

『え…?』


 ―――ほう!これは早とちりしてしまったかな?―――


「…さっきから何言ってるんだお前等…」


 一人言葉の分からない松田が困っている。が、とりあえずはディアを何とかしないといけないしな。


『まず、言葉も覚えてないのに捨てるなんてしない。とりあえずは大きくなるまで俺が養うから安心しろ。』

『ディアもう大きいし…言葉覚えたら捨てられるの…?』

『あー…いや。ディアが出て行きたいと思ったら出て行けばいい。それまで俺がずっと面倒見るからさ。』


 ―――養う宣言か。…ところでそれじゃお前損ばっかりしてるな。いいのか?―――


『いいの…?』

『いいよいいよ。結構な金が入るみたいだし一人分の食い扶持位どうとでもなる。』


「ついたぞーくっ…ファム…ばあ…たん。くっ!ファムさん…?いや…この姿にさん付けは…」


 何かと闘っている松田が目的地に着いたのを教えてくれた。そろそろディアとの話も切り上げないとな。


『…奴隷条例なくてもご飯くれるの?ディアお金ない…』

『子供は黙って大人に甘えてろ。これで終わり!ほれ』


 俺は金貨15・・枚が入った袋を投げ渡した。


『それが俺の今のところの全財産だ。それ預けとくからな。』


 これで信用されてるって思うだろ。…本当はあと金貨3枚持ってるけど。いや、まぁあれだけ言っといて何だけど逃げられるかもしれないじゃん。3万あれば何とかなるし…

 まぁそんなこと考えてるとはバレずに素直にディアは受け取って俺は正式に奴隷解放を行った。




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