むかしむかし。
昔々ある大きな国がありました。
その国を、ある一人の王様が治めていました。
周りの国々と争うこともありましたが、王様は家来たちの意見もよく聞き、よいまつりごとを行ったので、住民たちは平穏に暮らしていました。
周りの国との争いも減ると、それらの国々からも大勢人がやってきて、この国はますます大きく豊かになりました。
やがて年老いた王様は位を子に譲りました。
たくさんの大切な言葉、約束とともに。
周りにはたくさんの国々があります。
住む土地が違えば考え方も違います。
争いが減ったと言っても、哀しい事にそれらが完全になくなったわけではないからです。
王様はたくさんの国、人と交わした、守るべき大切な約束や契約などを、全て一つも取りこぼしがないように、引き継がせなければならなかったのです。
後を任された子は、全てを聞き届け記憶に刻み、全てを今までそうであったように行ってゆくことを、去りゆく王に約束しました。
そうして。
その後王様が変わるたび、定められた通り全ての約束や契約は引き継がれていきました。
それから長い長い時が経ちました。
ある一つの古い古い契約がありました。
今ではその契約の内容も更新され続ける意味も、誰からも忘れられたものです。
王様の代替わりとともに、かつてそうされたように全て引き継がれたもののなかに、ひっそりとそれは在りました。意味がわからないながらも、更新され続けてきました。
けれど、いつの頃だったでしょうか。
意味が忘れられてしまった契約ならば、既に無用のもの。
破棄してしまっても構わないだろうと新たな王様は考えたのかも、しれません。
古い古い契約は、存在も意味も忘れ去られたまま、静かに……ひっそりと消えていきました。
今では。数多くの約束ごと、契約に混じり、かつて在った古い契約のことを覚えているものは、誰もいません。
そんなものは初めから存在しなかったかのように、人々は日々の暮らしを続けていったのでした。




