夏のおわり、虫の音
初投稿です。短編扱いで宜しいでしょうか?
拙い部分が多いですが、最後まで読んで頂ければ幸いです。
もう何日目だろう。今日も私はこうしている。またこうして、一日が過ぎていくのか。いや、それが一日なのかどうかも最早定かではない。
今は、朝か?その強い陽射しに、やけに目が痛む。今まで感じた事の無い陽射し。
熱い。身体が焼けるように熱い。初めて感じる温度、湿った空気。
『動け…るか?』
脚を一歩踏み出す。もう片方の脚も。しかし進まない。いや、進めないのだ。
そうだ、助けを呼ぼう。この陽射しにこの熱さ、到底耐えられるものではない。
『だ、誰か!助けて下さい!脚が動かない、歩けないんです!』
私は必死に呼び掛けた。いや、泣き叫んだと言うべきであろう。しかし、その声を聞いて駆け寄る者、その腕を掴み肩を抱き抱えてくれる者は居なかった。
『まだ、動く』
立ち上がる事は諦めていた。しかし、この熱さ、幾分和らいだ様に感じるが、それは“慣れ“なのだろう。
この場から移動したい。いや、逃げ出したい。私は、無意識のうちに全身を使い、這いずる動きをしていた。
世界が回る。身体の周りを風が包み込み、流れて行く。つい数秒前までとは違う場所。熱さは無い、身体を焼く様な陽射しも。
代わりに訪れる暗闇、冷たく湿った空気。
光が無い。それだけで、ここまでの不安と恐怖を感じるなど、誰が想像出来たであろうか。
しかし、同時に感じる安堵、快感、幸福。
“黒“が深くなる。
“闇“が濃くなる。
『そうか、私は此処までなのか。』
思えば、今日は初めての事が多い。陽射しが遠かった。しかし、この身体に突き刺さる様だった。遮る物は無かった。声も思うように出なかった。
そう、私は逆さまの世界を見ていたのだ。しかし、もう不安に感じる事は無い。今はもう、闇の中だ。
独特の、ひんやりとした感触や、身体を包まれる安心感は無いが、どこか懐かしい“黒“
『これで、8回目』
私は数えていた。数える毎に不安が募る。しかし、7回目の闇を数え終わった時、それは消えていた。
私は、そっと目を閉じる。
もう、この闇を数える事は無いだろう。
延々と続いた“黒“と8回の闇を数えた。
“黒“に比べ、闇は明らかに少ない。しかし、闇の合間には陽射しがあった。光と闇の繰り返し、そのお陰で数える事が出来たのだ。
初めて音を聴いた。いや、それは声であった。繊細で、どこか懐かしい、夏の終わりを告げるかのような、微かに響いたひぐらしの泣く声であった。
如何でしたでしょうか?
その虫の一生は、人間のそれに比べるととても儚いものです。
地上では7日間前後の命。しかし、その虫にとっては、とても長い時間に感じられると思います。
拙い文章、表現力でしたが最後まで読んで頂き、ありがとうございました。