表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/41

三十八章 赤き舞



 グギャアアアアッッッッッ……!!!


 絶体絶命の次の瞬間、屍の巨人が突然苦しみ始めた。退いた腕が天を仰ぎ、鮮やかな緋の光に包まれる―――飛来する数羽の鳥の炎が引火して。

「な……これは、一体……ぐはっ!」

 胸を押さえて蹲り、込み上げてきた生命の証を吐いた。肺からの出血はどす黒く、いよいよ危ない。

 振り返ると皆が教会を見上げていた。痛みを堪えつつ視線を向けて、信じられない光景に目を見開いた。


「“炎の……魔女”?」

「えっ……!?」


 恐怖に閉ざされていた瞼が開き、黒く澄んだ瞳で屋根に立つ母親を捉えた。

 炎纏う長斧を構え、彼女は空いた左腕を優雅に回して新たに数十羽の下僕を召喚する。―――何て綺麗な女だ。

「あれが……“炎の、魔女”」

「かあさま……?」

 進行方向を大きく変えた怪物達へ炎の群れが一直線に飛ぶ。死肉の塊共は脂が乗っているせいか良く燃え、苦悶の断末魔を上げながらブスブス……次々と黒煙を立ち昇らせた。


「ウィルネスト」


 名前を呼ばれ驚く。

「こいつ等は私が始末しておくわ。あなたはまーくんを連れてこの星を出なさい」

「え?」何、だって……?

「リュネ。あなたの船で彼等を送ってあげて」

「はい。ですが宜しいのですか?」意外な命令に、冷静な研究者も思わず訊き返す。

「私も同意見です、王よ。十把一絡げの下賎共はともかく、坊ちゃまは」

「いいの」

 彼女は半分の背丈になった息子を食い入るように見つめた。ツーッ……目尻から一筋伝う光る物。

「まーくん……こんな怖いお母さんの事は早く忘れるのよ……?折角生き返ったんだもの。いつも笑顔で楽しく、ね」

「かあさま!あなたは……!」

 伸ばした母子の指が、数メートルの空気越しに交差する。が、次の瞬間、


「あぁ……駄目、早く行って!」不死王は右腕を押さえ絶叫した。「ウィルネスト!お願い……また狂ってしまう前に、私の視界から逃げて!!」


 額から冷汗を流し、赤い髪を振り乱して頬を紅潮させる。余りの切羽詰った様子に、俺は呆気に取られつつ黙って従うしかなかった。

「行こう、まーくん」

「離して!かあさま!今のは一体どう言う意味ですか!?」

 抱き抱えた誠が発した問いにも、苦しいのか母親はキツく唇を噤んだままだ。まるで一言でも発したら最後だと言わんばかりに。

「こっちよ」

 リュネに先導され、俺達はメインストリートから研究所へ。途中、俺は一度だけ教会の方を振り返った。“炎の魔女”は同じ場所でたった一人、機械的に異形共を殲滅している。弟念願の魔術機械船に乗り込む間も、ずっと一人で……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ