三人の弱点~Girls in the water~
茶番だ、まさに茶番だ。
超大型新人 南雲美桜 306票
台本を書いたやつは出てこい。
最強御令嬢 麻生伊織 306票
なんと底の浅い結末だ。
台風美少女 香取理名 306票
これを茶番と呼ばずに何を呼ぶ。
三候補者同率一位
「茶番だああああああ!!」
もちろんのこと生徒会長と言うのは、一人しかなれない。バラエティでは有りがちな同率優勝なんてあるわけがない、はずだった。しかし有り得ないことが有り得ないとは良く言ったもので、そんな天文学的な確率にも関わらず、まさに茶番と呼ぶに相応しい結末が待っていた。
「会長さん、どうするおつもりで?」「分かるかよ! こんな事態になると思わなんだわ!」
三郎丸会長も、
「江原だ!」
こんな事態は始めてらしくオロオロしている。
まあそれに関しては、教師達も同じだ。古参の藤堂先生らもどうしたらよいか考えあぐねているようだ。長い長い教師人生でも、三人の同率一位なんか聞いたことがないだろうに。
「今日欠席していたのは何人だ?」
「えっと…、一年二人、二年一人、三年三人です」
「よりによって三の倍数か……。アホになるではないか」
なりません、あれはギャグです。
「彼女達には悪いが、その六人の票を持って決定するとしよう」
理事長の鶴の一声で、その場は収拾する。
けど六人って嫌な予感しかしないんだけど……。
――
「茶番だ……」
僕の嫌な予感はなかなか的中するものらしい。見事にそれはやって来ました。
南雲美桜 308票
麻生伊織 308票
香取理名 308票
各々二人ずつ投票されてしまった。薄々そんな気はしないでもなかったけど、ここまで見事にやられるとアッパレだ。
「どうしたものかね……」
理事長もこれには苦笑いを見せる。こうして、御崎原史上最大級の会長選挙は、同時に史上最悪の泥沼に陥ってしまったというわけだ。
「じゃんけんは流石に出来ないぞ……」
もちろん職員達も荒ぶる。事件は職員室でも起きている。
「麻生以外にいない! 後の二人はこの学園を間違いなく破滅に向かわせる!」
人の姉さんに酷い言いようだな。担当生徒、身内を悪く言われたら良い気がしないぞ。
「藤堂先生、落ち着きたまえ。先生が決めては何のための生徒会選挙か分からなくなる」
「しかしですね、理事長! 麻生はともかくとして、香取と南雲はあらゆる問題を引き起こしてきた!」
起こしてましたねぇ~。フォローしきれんわ。
「彼女達が起こした問題に私達は不利益を被ったか?」
激昂する藤堂先生に対し、理事長は落ち着いて冷静に問う。
「学園の品位が下がった!」
「品位? そんなものを気にしていては、良くなるものも良くならない。私は生徒達の自主性に期待している。彼らも責任というものを感じはじめる年頃だ。教師がああこう言う必要はないと思うが? むしろ私達は彼らに道を印すだけだ。教師の操り人形になるだけの学園生活など送る価値がない」
「クッ……」
理事長に否定され悔しそうにする藤堂先生。いつもは沸かないが、彼に同情の念が生まれる。
「そこまで品位を気にするのなら、悪いが藤堂先生にはうちの校風は合わないのかもしれない。ここ御崎原高校はどちらかと言うとアウトローなのでな」
理事長は冷たく言い切る。
「青二才が……」
「すまないが、私は自分の意見を曲げる気はない。子供達に期待しようではないか」
理事長は、峰子さんは誰よりも子供達に期待をしている。だからこそ、彼女は無理にこちらで決めるなんてマネはしないだろう。
「もう一度選挙するわけにもいかんしな……。何か良い手段はないかね……」
「理事長より前の時代とかどうだったんですかね~」
三宅先生がいつものようにのんびりと言う。
「先代か……、確かめてみるか。今日の所は解散してくれ、追って連絡する」
――
「先代の時の生徒会選挙関連の資料を見てみたが、一つ興味深い記録を発見した。これをみてくれ」
理事長が見せた資料は何十年も前の新聞の一部だった。
「先代もムチャをされる。小さいとはいえ、新聞沙汰にまでなっているぐらいだ」
そこに書かれていたのは、
『そこまでするかっ!? 生徒会長選挙でトライアスロン』
「トライアスロンってあのトライアスロン?」
泳ぐ、漕ぐ、走るの三拍子揃ったあれのことか?
「それ以外に何がある? 泳ぐ、漕ぐ、走るの三つをこなすハードなスポーツだ。」
「いや、そうですけど」
「先代はトライアスロンをもって会長を選出したようだ。なかなか面白いとは思わないか? 見ると前回も候補者が三人出たようだ。丁度同じ数字なんだ。これを持って決めるのもありじゃないか?」
ありじゃないか? ってアナタ先日生徒の自主性に期待するって言ってたじゃんか。
「もちろんそうだ。飽くまで解決策の一つなんだ。彼女らが拒絶すればまた別の方法を考えるよ」
――
「「「トライアスロン?」」」
三人に提案した時、案の定三人ともキョトンとした顔を見せる。
「そ、トライアスロン。泳いで、自転車に乗って、最後は走るという大変さに定評がある鉄人競技だよ」
「「「……」」」
三人は押し黙る。
「まあ嫌なら他の手段を考えるまでだよ。理事長からは君らに許可をとって欲しいとは言われているけど……」
「「「イヤです!!」」」
三人とも力強い拒絶をしました。まあしんどいもんな、泳いで、自転車に……、
泳いで?
「伊織は知ってるんだけど、もしかして二人もカナヅチ?」
「「「!?」」」
はい、ビンゴでした!! 運動神経抜群の伊織には一つだけ出来ない運動があった。それが、水泳なんだ。
『私は悪魔の実を食べたんで、海の神様に嫌われちゃったんです!! 泳ぐなんて高次元なことが出来ないんです!』
と取り乱すぐらい、彼女と水泳は相性が悪いのだ。
「「「……」」」
お前も泳げないのかって顔で互いを見る三人。
あ~、思い出したぞ。姉さんも確か小学校のプール開放日には何かと理由をつけて行かなかったっけ?
『き、今日は夏休みの宿題をしたいかなぁ……、こう君は私のことを気にせず泳いでおいで』
そういうことでしたか。10年来の謎が解けたよ。
意外なことに、理名ちゃんも泳げないらしい。
「は、ハンガリーは陸地民族なの!! ドナウ川で泳ぐなんてマネ出来るわけがないじゃない!!」
プールぐらいあるだろうが。
――
「と全員泳げないという事実が明らかになったので、トライアスロンはおじゃんになりました」
「そうか……、カナヅチだったか……」
理事長は考えるように腕を組みながら言う。
「よし、それなら……」
――
「会長選は水泳で行うことにした。異論はあるか?」
「「「……」」」
理事長。あなた鬼畜です。




