かくれんぼしましょ!~Hide-and-seek~
「今年の一年生歓迎イベントはかくれんぼに決定した」
朝の職員会議にて、理事長は真顔でそんな冗談みたいなことを言う。
「か、かくれんぼぉ?」
「そうだ、かくれんぼ。英語にするとハイドアンドシーク」
「いや、言い直すとかってレベルじゃないと思います」
周りの先生方もざわめき出す。そりゃそうだろう。本来は一年生を歓迎するイベントだが、いつもは遠足をしているのだが、急にそんなことを言うなんてご乱心もいいところだ。
「どうしてまたかくれんぼなんですか?」
しかもかくれんぼなんてアイデアどこから持ってきたんだか。
「昨日見たアニ……じゃなくてWOWOWの教育番組でかくれんぼによる人格形成の特集をしていてな、これは使えるっ! と思えたんだ」
今アニメって言いかけなかったか!? ってことはアニメの影響でかくれんぼと言う予想外な展開に持って行ったわけね。
「そうだ。悪くないだろ? 反対する先生はいるか? 意見のあるものは手を挙げてくれ」
誰ひとり手を挙げない。クビが飛びそうだもんな。私学の教師だから、公務員ではないから理事長の気分次第で無職になるかもしれないブラックな職場だったり。
「反対意見はなし、と。それでは今年の一年生歓迎イベントは、かくれんぼに確定した」
――
「と、この様ないきさつでかくれんぼになったんだ」
「……」
クラス中がシーンとする。
「つまり、一日中かくれんぼで授業がなくなる、と」
「その通り。文句があるなら僕じゃなくて理事長に言ってよね。反論でもしようものならクビが飛ぶかもしれないんだ、僕に彼女を止める力はないんだよ」
「くだらないですね」
高梨がくだらないの5文字で切り捨てる。
「ちなみにズル休みしたら、理事長采配で評定が1.0下がるからな。まあみんなが笑顔で楽しむことを祈っているよ」
『ハァ!?』
全員が驚愕する。おおっ、息ピッタリじゃないか。これなら体育祭の長縄も良いとこ行くんじゃないか?
「すぅ……すぅ……」
まあ眠り姫もいたりするわけですが。
「でもよーせんせぇ、ルールなんてどうすんのさ? 一年全員逃げんのか?」
古村が質問してくる。
「水島、良い質問ですねぇ」
「いい加減ビルマから頭を離しやがれ! 俺は古村だこ・む・ら!!」
「おや、一休さんの英霊が見えるぞ。まあどうでもいいや。ルールは一年生の半分が鬼で半分が逃げる側だな。ちなみに見つかっても、逃げ切れば大丈夫らしいから、かくれんぼというより鬼ごっこって言ったほうが良いな……、ってどうした、ビルマ?」
「俺はノンケだ俺はノンケだ俺はノンケだ俺はノンケだ俺はノンケだ俺はノンケだ」
あ~あ、トラウマ刺激しちゃったかなぁ。かくいう僕も今だに尻を狙われてるんじゃっていう妄執に取り付かれてるけど……。
「わ、分かったわよ! そうに決まってるわ!?」
もっとタチの悪い妄執をもってはる人がいたー!! 闇モード突入か!?
「か、か、かくれんぼをして私を一人鬼にするつもりでしょう!! そうに決まってるわ! じゃんけんの時から仕組んで私を鬼にするのよっ!! そして鬼は1000数えろっていうに決まってるわ! その間に隠れるどころかいなくなるに決まってるわ!! それに気付かない愚かな私は三日三晩探し続けるのよ! 神隠しにあったと思わせて実は家で64をしているのよ! もう騙されないわよ!」
そこまで分かってるならかくれんぼしなきゃ良いじゃん。
「アーハッハッハ! 永劫に続く夜の中から混沌の権化たる私を捕まえるなんて真似が出来るかしらぁ?」
すぐ捕まりそうな顔してるよな(笑)
「みんなやる気は十分有るみたいだし、当日が楽しみだなぁ!!」
てかどこでやるんだ? 学校?
――
『……』
「やあ、今日は絶好のかくれんぼ日和だねえ。こんな大きな舞台でかくれんぼが出来るなんて誇らしいよ。」
『……』
「ホント、シザーマンと隠れてそうだねぇ、出会ったら挨拶をしっかりしなさいよ?」
『……』
「某じっちゃんが有名な高校生探偵の蝋人形城とか、ロシアン人形の城のモデルになってそうだよね!」
『……』
「ようこそ! 麻生城へ!!」
『なんでやねええええええん!!』
全一年生の魂のツッコミが入る。そりゃそうだろう、生徒の所有物とはいえ、こんな馬鹿でかい城が舞台になるとは思ってなかっただろう。
「さあ、盛大にハイドアンドシークしようぜ!!」




