可愛いは正義ってエロい人は言うけど実際のとこって罪だよね~You are guilty~
「おやっさん、言っただろ? 西邑歩はれっきとした男子だよ。トイレも男子トイレを使うし、銭湯でも男湯に入る」
入ってこられたらビックリする自信はある。
「しっかし一部を除いてどっからどう見ても嬢ちゃんじゃねえか。いってぇどんな生活をしたらこんな体になるってんだぁ? お前、肉食ってっか?」
「ひゃっ!」
「声も女みてぇな声だしよぅ、俺っちがこれぐらいの時はバリトン歌手ぐらいは低かったぞ」
おやっさんは西邑の体をペタペタ触る。絵的にこれはダメだろ……。おやっさんと西邑だとなんつうか色々アウトだよ、美しくないよ。
「ったく、うちのガキもこれぐれぇ可愛げがあってもよかったつうのに。親の前で平気で脱ぐし、寝るときゃパンイチだし……、どこで育て方間違えたんだか」
「主に親父のせいだけどな!」
スッパーン! 男子より可愛げがないと言われた上に、物凄い秘密を暴露された小町ちゃんは、思いっきりおやっさんの頭をハリセンで叩く。野球ボール相手なら間違いなく場外にアーチを描いただろうな。
「くぅー! おいこら小町、親を叩くこたぁねえだろ!?」
「うるさいよ! ボクが叩くのは親父のハゲ頭だけだよ!!」
「ハ、ハゲっつったなぁ!? これはハゲじゃねえよ、オシャレスキンヘッドだよ! ブルー○・ウィリスとジャ○・レノみたいでカッコイイじゃねえか!」
「親父のハゲは丹○段平的ハゲなんだよ! 眼帯したら本物じゃん!」
丹下○平的なハゲって……、言いたいことは分からなくもないけど……、やべぇ、眼帯したら御本人登場だわ。脳内再生余裕でした。
「せ、先生ぃ……」
僕のせいで仁義なき親子喧嘩が始まったよ~、助けてナグえもん~、って言わんばかりのウルウル目で僕に助けを求める。
「ま、大丈夫だろ」
ヒートアップしている親子喧嘩もとい大柄な子供同士の喧嘩を横目にみて、教師としては無責任な一言を言う。いつものおやっさんならこの辺で、
「徹郎さん、小町、いい加減にしましょうね?」
ほらね。おばさんはいつものように笑顔で二人を制止する。……星とかヒヨコとかが出て来そうな愛の篭ったゲンコツ付きで。
「あだっ!」
「痛っ!」
見える、見えるぞ! 二人の頭の上にヒヨコがピヨピヨと!
「周りが困っていますわよ。止めないと殴りますよ?」
その前に武力介入したのは何処のどなたですか?
「もう殴ってんじゃん……」
「小町? なにか言ったかしら?」
「な、なんでもないですっ!!」
ナンパ野郎相手に全く恐れることはなかったのに、母親のゲンコツ一発でこの始末。やっぱり母は強しだね!
「さてと、徹郎さん……」
「な、なんでしょうか、かあちゃん……」 ニコッて笑って、
「今日の片付け一人でお願いしますね」
死刑宣告をしました。
「なぬっ!? 俺っちもう酒飲んでるから車出せねえぞ!?」
「徹郎さん、」
おばさんは一息いれて、
「車がなければ歩いて行けばいいじゃないですか」
どこぞのフランス王妃みたいなことを言う。10年たっても相変わらず、二宮さんちのヒエラルキーのトップに傍若無人の女帝として君臨しているようだ。
「どうしてこうなった……」
自業自得です。
「ぼ、僕がそもそもの原因なんだから手伝います!」
意気消沈しているおやっさんに西邑は声をかける。その心意気は良いんだけど、
「いやー、言っちゃ悪いけど、西邑は手伝わないほうが良いよ」
「どうして?」
あれだけの量の荷物を運べると到底思えないんだよな。別にお前じゃなくてもきついって。力自慢のおやっさんが嫌がるぐらいだし。
「僕が弱いからですか……」
「うっ、そんなウルウルした目で見ないでよ、どんな顔したらいいか分かんないだろ」
「ご、ゴメンナサイ……」
とりあえず生中感覚で、とりあえずゴメンナサイ。本日も男の娘絶賛平常運転中過ぎワロタ。
「あー! イライラするっ!! 西邑っち、どうして貴方は西邑っちなの!?」
「ふぇ!?」
いきなり小町ちゃんは、ぶちギレてシェークスピアみたいなことを言う。
「ウジウジウルウルウジウジウルウルイライラすんだよ!! なまじそれが可愛いから余計腹が立つ! ボクより可愛いじゃんか! 謝罪しろう!」
すげー、女の嫉妬ってこえー。
「ゴメンナサイ……」
「なんで謝んだよ!! これまたイライラするっ! 馬鹿っ!」
「えぇー!?」
流石にそれは理不尽過ぎないか!? 謝れって言われたから素直に謝った結果がこれだよ! 女帝の血を確実にひいていたよこの人!
「なんでもかんでも謝りゃあすむって思ってんじゃないの!? 男なら謝る前に一発ガツンといけよ!! ついてんだろ!?」 暴れ牛もビックリな暴走を繰り広げている。感情のあまり自分が何を言っているか分かってなさそうだ。
「そーだ、西邑っちぃ、良いこと思い付いた~」
「な、なんでしょうか……」
ニヤリッといやらしく笑う。相当良いことを思い付いたのだろうか、背後から凶々しいオーラが出ている。
「西邑っちをボクが鍛えてあげるよ!!」
「ふぇー!?」
西邑歩、二宮ボクシングジム入会!?