晴れた日は散歩がいいね!~Late-morning walk~
「おーす、南雲っち!」
とある日曜の昼前、ブラブラと行く当てもなく町内をうろついていると後ろから声をかけられる。知り合いの中で僕をその呼び方で呼ぶ人間は一人だけだ。
「なんだ、小町ちゃんか」
「なんだとはなんだー!!」
二宮小町。僕が担任するクラスの生徒であり、実は彼女が小さいころからの知り合いでもある。中学に入ってからというもの、彼女とは関わりを持たなくなっていたが、なんと狭い世界だろう、まさか担任と生徒という関係で再会することになるとは思いもしなかった。
「南雲っちなにしてたの?」
「行く当てもなくひたすら散歩」
今日は姉さんもどこかに行くといって家を出たので、珍しく一人の時間ができた。ここんとこ何かと誰かと一緒にいたから、隣に誰もいないっていうのがなかなか新鮮だった。
「暇人なの?」
「ほっとけ。たまには何にも巻き込まれない平穏な休日を満喫したいんだよ。小町ちゃんこそどうしたんだい? 見たところ買い物帰りみたいだけど」
小町ちゃんを見ると、両手にいっぱいに膨らんだ買い物袋を持っている。いくらおやっさんの遺伝子を持っているとはいえ、女の子が持つには多すぎないか?
「そうかな? いつもこれ以上持ってるから今日は軽いほうだよ。ほら、軽い軽い」
そう言って買い物袋をブンブンさせる。んなことしたらぶっ飛ぶぞ?
「そうだ! ねえ南雲っち! 今暇?」
「暇っちゃ暇だけど……、荷物運べってか?」
「そんなんじゃないよ! 今からさ、うちのジムのみんなと町内の子供たちでバーベキューするんだけど南雲っちも来ない? 親父も南雲っちに会いたがってたし」
「バーベキューまだやってたんだ」
二宮ボクシングジムの二宮徹郎が近所の子供や学童の生徒たちを引き連れて、川原でバーベキューをするという企画がある。まだやっていたと言うように、僕や姉さんが小さい頃もバーベキューをしており、学童の生徒だった僕らもそこに混じって遊んでいたものだ。10年以上前の話だというのに、まだやっていると見ると相変わらずおやっさんはみんなに愛されているようだ。
「最近は少子化の影響かで来る子も減ったけど、それでも開いたら町中の子供の半分は来るんじゃないかな? どう? 久しぶりに行っとく? 南雲っち20過ぎたしお酒飲めるじゃんか.」
お酒ねえ……。あんまり得意じゃないんだけどな。
「ま、特にやることもないし、たまには顔見せるか」
「おっ! んじゃ行きますか!」
ブラブラしていたらバーベキューに誘われました。