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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
彼がマウンドに再び立つまで
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星々に思いを~Rookie~

「それで古村君は野球部に入ったわけですか。良かったですね、癒しのオアシスが汚されることなくすみましたし」

 先日の入部テスト(特に体力テストの方)のお陰で、天文部に伊織目的で来る輩は来なくなった。しかし、そうなると今度は、

「今日日天文部なんか流行んないんかね……」

 というように閑古鳥が鳴く有様である。モノの見事に、星よりも部長目当ての方が多かったという情けない事実を証明してしまうだけだった。

「やっぱり先生と僕の二人にだけ与えられた憩いの場なんですよ」

 そう言って伊織は僕に絡み付き……、

「先生、前の続きしますか? 今日は誰も邪魔しませんよ?」

 声に色気が篭っている。僕の目の前にいる少女は女の顔をしており、僕を背徳の世界へ誘う。

「伊織……」

 唇が重なりあ……、

「すいませーん、天文部ってここ……」

 う前にいたく元気な声が部室に響き渡る。

「ふ、ふ、ふ、」

 ふ、ふ、ふ、梟?

「不純異性交遊なんて不潔です!! 先生に言い付けてやる!」

 物凄い勢いで去っていきました。

「今……、先生に言い付けてやるって言わなかった?」

「奇遇ですね。私も同じ空耳が聞こえたみたいです」


「「……、捕まえて始末しよう(しましょう)!!」」

 僕達も部室を後にし、覗き魔を取っ捕まえることにする。

「伊織はあっちを頼む! 僕はこっちを攻める!」

「了解です!」

「「グッドラック!!」」

 二手に別れて逃亡者を追い詰める! どこに行った!ってあれっ? あの子どっかで見たことあるような……、

「うちのクラスの生徒じゃねえかコンチクショー!」

 尚更捕まえないとヤバイじゃん!! ってなんだ、伊織から?

『確保なう』

 ツイッターなんてやってたのかアイツ……。



――



「さあ、さっき見たことは忘れるんだ。さもないと背中に取れないネジがくっつくぞ」

「わ、忘れるなんて無理です! あんな刺激的な光景……、わ、私が来なかったら今頃目眩くアダルティな世界に……。ふ、不潔です! 貴方が担任なんて一生の恥です!」

 顔を真っ赤にして言われてもねえ……。

「違うのよ、えっと……」

「山本だよ。山本五十鈴(やまもといすず)。うちのクラスの生徒。前後に強烈なのに囲まれているある意味うちのクラスで一番不幸な子」

「初めてですよ……、そんな投げやりな紹介は」

 しかし的外れな紹介では無いはずだ。何たって彼女の前列では、

「え、えっとその…」

『渚っ! 自信を持てっ! お前は間違っちゃいない!』

「で、でも……」

『大丈夫よ渚ちゃん、先生もそんなことで怒ったりしないわ』

「うう……」

『胸を張れ、渚っ!』

『恐れちゃダメよ、渚ちゃん!』

『『俺(私)達がついているぞ(わ)!!』』

「マルクス……、エリー……」

『さあ、ドンと言ってやれ!』

「せ、先生! その計算の答えち、違います!!」

『『渚あああ!!』』

 といった、いっ○く堂もビックリな劇団渚を最前列で見せられ、後方と言うと、

「ま、また私の分のプリントがないわ……、これは私に対する嫌がらせね、そ、そうよ、そうに決まっているわ! プリントが足りないって一言かけるだけなのに、『プ、プ、プ、』って吃ってしまう私を嘲笑うためにわざと配らないのよ! さあ笑いなさいよ! 脈絡もなくプで吃っている私を『プププランドかよ(笑)プププでデデデな物語(笑)』って馬鹿にしなさいよ! いくら全クリしても翌日にはオール0%になっている私を笑いなさいよ!そうよ、任○堂も私のことが嫌いなのよ! 次回作のポケ○ンでは私が出てくるに決まってるわ! 『ヨシモト:悲観ポケ○ン:いつも自分が悲劇のヒロインでなければ気が済まないスイーツ女(笑):タイプ毒、悪』って出るのよ! そして世界中で経験値稼ぎのために狩られる運命なのよ! 愚かと思いなさいよ!! 通信交換してくれる相手がいなかったからゴー○トがレベル100になっても進化せずに任○堂に問い合わせした私を馬鹿なボッチと笑いなさいよ!」

 と、ひたすらに誰も聞いてもいない誰得ネガティブな呪詛が日夜を問わず垂れ流れて来る。そんなコマンドー部隊もトイレに行ったっきり戻って来なくなるような危険地帯にいるんだ。不幸以外の何と言おうか。

「同情するなら席替えをしてください……」

 ゴメン。それもちっと先。


「で、さっき違うって言ってましたけど、何がどう違うんですか? 私が見たのはマジでキスする五秒前でしたけど。まさかマジでキルする五秒前とか言わないですよね」

 山田君、座布団一枚持ってってー。

「アハハー、当然だじょ~」

 その山田君じゃないよ!!



「何してたって……、それは……、伊織、パスッ」

「へっ?」

「僕から言っても信用ならないだろうから、ここは一つうちの部長様から真相を説明してもらおう!」

 すまん、伊織っ、適材適所だ!

「確かに先生より部長さんの方がしっかりしてそうですしね……」

 何でだろうか……、素直に喜べない。

「わ、私ぃ?」

 携帯一つで恐怖の鬼を召喚出来る伊織も、いきなりのことに驚いているようだ。

「……」

 ハッハッハ、睨んでも何も出ないぞ!

「ジー」

 擬音を口に出すぐらい山本は伊織を見つめる。


「あ、あれは……、そう! 目薬を入れていたんです! 南雲先生はいい歳になっても目薬を自分で射せないんです」

 それはちと苦しくね? 目薬一人で射せないのは事実だけど。

「ジー」

 尚も伊織を見つめる。嘘発見機を使っているみたいだ。

「な、何でしょうか……」

「ジー、嘘はついてなさそうですね。失礼しました」

 騙されています。思いっ切り騙されています。

「先生も勝手な思い違いで嫌疑を投げかけてすみませんでした」

 意外と素直に謝った。悪い子ではなさそうだ。

「って本来の目的を忘れるとこでした。私天文部に入部したいんですけど……」

 そういやそうだった。元々彼女はクラブに見学に来たはずだった。いつの間にか鬼ごっこになっていたけど。

「私部長さんが言っていた星座の数が気になって調べたんです。88個立ったと思いますが間違えていませんか?」

「正解です、山本さん」

「五十鈴で良いですよ」

 じゃあ僕も次から五十鈴と呼ぼう。

「クラスに山本私しかいないんだから山本で良いでしょ……」

 好感度がまだ足りないみたいだ。

「88個あるって分かったんですが、すると今度は星座の成り立ちというか神話に興味が出て来ましまて、そんでもって今に至るというわけです。ここなら自分の好きなように星々と向き合える気がしたんです」

 入部希望理由を話してくれる。先日の野郎共と違って純粋に星に興味があるみたいだ。

「そうですね……、それじゃあ星を見てみますか? 実際に活動に触れてみてそこから考えても遅くないと思うんです。ね、先生?」

「そうだな、いざ入ってみて自分の思ってたのと違うんじゃ勿体ないからな」

 教師からすると、三年間を有意義に過ごしてほしいのだ。

「それじゃあ決まりですね。今日もし都合がつけば体験入部をやってみようと思いますがどうですか?」

 山本は少し考えてから、

「分かりました。体験入部してみます」

 伊織の申し出を受け入れた。

「それじゃあ今日の夜に学校に来て下さい。詳しいことはメールしますんで、赤外線でアドレスを交換しましょう」

 伊織は黄金じゃない方の携帯を取り出し、山本とアドレスの交換をする。

「それではまた後で会いましょう。南雲先生と私は少しやることがありますので、山本さんは一度お帰り下さい」

「了解です。それではよろしくお願いしまーす」

 山本は部室から退室する。僕と伊織は手を振りながら見送る。

「でやることって何をしようか」

「……」

「望遠鏡だろ、後神話の本でも出しとくか」

「……」

「あの、伊織さん?」

 どうして黄金携帯を持っているんですか?


「先生、戒めてください」

ガラッ

 勢いよく部室の扉が開かれ、そこには、

「「「「「やらないか」」」」」

 アベさんズがいました。って一人増えてない?

「ナベさんです。それでは皆さん。先生をあまり可愛がりすぎないで下さいね」

 伊織はそう言ってラジカセを鳴らす。

「~♪バラライカ♪」


「先生、もし生きて帰ってきたら、王様エクレアを下さいね」

 と言い残し伊織は退出する。

 ジリジリと寄って来るアベさん×5

「「「「「やらないか」」」」」


「やらないよ!」

 僕は生きて帰れアッー!

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