南雲家作戦会議~S.N.S de S.O.S~
「姉さん、ただいま」
「こう君、おかえり。どうしたの? なんか満ち足りた顔しているよ」
「いや。ひとつ問題に解決の兆しが見えたからさ」
「良かったねー。あ、ご飯出来てるよ」
「サンキュ」
玄関でのやり取りを終えて夕食の場へと移行する。最近は姉さんの作る料理が楽しみになってきた。
――
「こう君、そういや今日古村君だっけ? チャラチャラした子休んでたよね。入学早々休むなんてどうしたんだろ」
「姉さん昨日休んだじゃないか」
姉さんと香取さんは二日酔いのため学校を欠席しました。良い子は決して真似しないでください!! 南雲先生との約束だぞ!
「そ、そうだけど……。なんか古村君とこう君あまり仲良さそうじゃなかったし、お姉ちゃんちょっと心配」
姉さんに心配されていたようだ。いかんいかん、教師が生徒に心配されるようじゃまだまだだぞ、南雲航!
「ねえこう君、もしかして心配事って古村君のこと」
「そうだとしたら?」
「私の発明で古村君を……」
「名に怖いこと言っちゃってんの!?」
やめてくださいよ、ロボトミー手術とか。
「まあまあ、弟の悩みを聞くのは姉の勤めよ。ささ、お姉ちゃんに何でも話してごらん」
あまり生徒の秘密をポロポロ話すのは良くないと思うんだけどな……。
「大丈夫、誰にも話さないし私はこう君のためだけに聞くんだから。ネットで聞くよりましでしょ? それにこう君だけで悩んで出るとも限らないし、三人寄ればなんとやらってね!」
「三人って二人しかいないじゃん」
可笑しくなってつい笑う。この人に話を聞いてもらったら案が出るのかな。姉さんが僕の考え付かないアイデアを出してくれることを祈って話す。もちろん全てを話すわけにもいかないので、掻い摘んで要所要所を話したが。
「なるほどね……、彼はデッドボールが怖くてマウンドに立つことが出来ないってことね」
そこまで単純な話でもないのだが、まあ概ねそうだろう。
「ねえこう君、私あまり野球に詳しくないんだけど、そんなにデッドボールって珍しいことなのかな? だって野球やってたら少なくとも一回はボールを当てるしボールに当たると思うんだけど。珍プレー集とかで乱闘シーンばっか見てるからそう思うだけかもしれないけど」
「僕も野球は詳しくないからなんとも言えないんだけど、頭部に死球を食らったら最悪死に至る可能性も高いんだ」
「なんかの漫画で見たわね……」
「これは現実だからな。だからバッターが今も野球を続けているってことが不幸中の幸いだったってことだよ。それでも古村は自分自身を許せずにいるようだ。たった一球のデッドボールによって多くの人間の運命が変わっちゃったからね。それを気にしているんだよ」
因果関係なんか言い出したらキリがない。例えば道を聞いてきた老人に道を教えたところ車に轢かれて亡くなったとする。すると誰が悪いか。もちろん運転手か老人に責任があるだろうが、道案内をした僕はどうだろうか。あの時もう少し時間をかけていれば、間違えた道を教えていれば助かっていたのにと思うかもしれない。しかしだからといって法に適用されるわけじゃない。だから今回の件も彼一人が全ての元凶と言ってしまうのは余りにも酷な話だし、誰一人そう思っていないだろう。野球という真剣勝負の中で起きた不幸な事故と考えるしかないのだ。
「すごくチープなことを言うと、古村君が本当に救われるにはマウンドに立ち続けることだと思うんだ。罪滅ぼしになるかは分からないけど、少なくとも私がそのバッターならそう思うな」
姉さんも黒崎先生のようなことを言う。
「バッターなら? そうだよ姉さん!! 閃いた!」
「ど、どうしたのこう君?」
「姉さんのおかげで閃いたんだよ! 古村の抱える苦悩をサヨナラできる起死回生の一発が!」
しかし、言っては見たけど実現可能なのだろうか。
「こう君、どんな方法なの?」
「ああ、それはね――」
「確かにこれを乗り越えたときには彼は再びマウンドに立つことが出来るわね! 流石私の弟! 抱きしめてあげる!! いやむしろ抱いて!」
姉さんが抱きつこうとしたので軽くいなす。勢いよく姉さんは地面にダイブする。
「セーフ?」
「アウトだよ! しかしどうやってアポを取ろうかね……。僕連絡先しんねえぞ」
そう、どうにかして連絡を取らないと話が進まないのだ。
「お姉ちゃんの発明でハッキングして個人情報を……」
やめて下さい。なんとなく近い未来に何か起きそうなんで、それだけはやっちゃ駄目だと思う。
「冗談よ冗談。ネットで調べたら出てきたりして」
そういって姉さんは僕のパソコンを使って名前を入れる。そんなので出てくるわけ……。
「これじゃない?」
ありましたああああああああ!!!!!!!!! どんだけ無用心なんだよ!! 名前検索したら個人情報出てくるって!!
「ってブログ?」
「ブログって言うんだ。なんか日記みたいだね。ってこう君どうしたの?」
「姉さん、ちょっと貸して!」
僕は姉さんからマウスを奪うと、ブログの中にある項目を探す。流石にコメントは全員に見られるな。どうしたらいいか。
ジャカジャカジャカジャカ……。どこからかドラムロールが流れる。
「あ、江井ヶ島さんだ」
姉さんの着信音だったようだ。いつの間にかクラスメイトと仲良くなって……。先生はうれしいぞ!
「ってドラムロール?」
『んだよmixiかよ、空気読めよなぁ』
mixi? その手があったか!! 僕は携帯を片手にmixiへアクセスする。キリに紹介されて一応入会したけど最近は完璧に存在を忘れていた。しかしまさかここで役に立つ日が来るとは!!
「姉さん、チェックメイトだよ」
僕は希望へとつながるページを見つけた。見ていろよ古村、もう一度お前をマウンドに立たせてやる!




